映画「トラペジウム」概要
映画「トラペジウム」は、元乃木坂46の1期生である高山一実が現役アイドル時代に執筆した同名小説を原作としたアニメーション映画です。2024年5月10日に日本で公開され、アイドルを目指す女子高生の青春と葛藤を描いた作品として注目を集めました。アニメーション制作は「ぼっち・ざ・ろっく！」「SPY×FAMILY」で知られるCloverWorksが担当し、監督は篠原正寛が務めています。この映画は、アイドルという職業の輝きとその裏にある努力や犠牲をリアルに描き、観客に深い感動を与える青春ドラマです。
ストーリー
主人公・東ゆうは、城州東高校に通う高校1年生で、「絶対にアイドルになる」という夢を抱いています。彼女は自らに課した4つのルール――「SNSはやらない」「彼氏は作らない」「学校では目立たない」「東西南北の美少女を仲間にする」――を守りながら、アイドルグループ結成を目指します。ゆうは城州地域の東西南北に位置する高校からそれぞれ美少女――大河くるみ、華鳥蘭子、亀井美嘉――を見つけ出し、仲間として引き入れます。文化祭やボランティア活動を通じて絆を深め、テレビ出演やアイドルデビューのチャンスを掴んでいく4人。しかし、夢への道のりは順風満帆ではなく、ゆうの打算的な行動やメンバー間の温度差により、グループは大きな試練に直面します。物語は、友情、夢、自己犠牲といったテーマを通じて、青春の苦さと美しさを描き出します。
キャストとスタッフ
主要キャラクターの声優には新進気鋭の声優陣が起用されています。東ゆう役を結川あさき、大河くるみ役を羊宮妃那、華鳥蘭子役を上田麗奈、亀井美嘉役を相川遥花が演じ、フレッシュな演技でキャラクターに命を吹き込みました。また、ゆうの協力者・工藤真司役にはJO1の木全翔也、ボランティア団体の伊丹秀一役には内村光良が参加し、作品に深みを加えています。主題歌「なんもない」はVTuberの星街すいせいが歌い、疾走感のあるメロディが物語の情感を高めています。スタッフ陣では、脚本に柿原優子、キャラクターデザインにりお、音楽に横山克が名を連ね、CloverWorksの高いアニメーション技術が光る作品に仕上がっています。
見どころと評価
「トラペジウム」の最大の見どころは、主人公・東ゆうの複雑なキャラクター像です。彼女の強い野心と打算的な行動は時に観客を驚かせ、賛否両論を呼びましたが、その人間臭さが共感や議論を呼び起こしました。物語は従来のキラキラしたアイドルアニメとは異なり、夢を追う過程での失敗や人間関係の軋轢をリアルに描写。オリオン大星雲の「トラペジウム」にちなむタイトルは、4人の少女が輝く星のように集まり、やがて散っていく姿を象徴しています。公開後、SNS上では「脳を灼かれる」「遅効性の毒」といった声が上がり、熱狂的なファンや同人誌の盛り上がりを見せました。興行成績では初週10位スタートだったものの、口コミで話題となり7週目まで上映が続くなど、根強い人気を博しました。Amazon Prime Videoでは2025年5月30日から見放題配信が開始され、幅広い層にアクセス可能です。
文化的意義とテーマ
この映画は、アイドル文化の光と影を掘り下げ、現代の若者が抱える自己実現への焦燥感や人間関係の複雑さを描いています。高山一実自身のアイドル経験が反映されたストーリーは、リアルでありながら普遍的な青春の物語として響きます。特に、夢を追う中で生じる犠牲や、友情が打算から始まり本物へと変わっていく過程は、観る者に深い余韻を残します。第26回富川国際アニメーション映画祭で特別賞を受賞するなど、国際的にも評価されており、アイドル映画の新たな地平を開いた作品と言えるでしょう。
