ヤマト運輸、ベトナム人500人採用の理由と「労働環境は後回し?」批判を徹底解剖

ヤマト運輸のベトナム人運転手500人採用計画
日本人ではなくベトナム人を採用する理由
外国人依存は労働環境改善の逃げか?:両刃の剣としての議論

ヤマト運輸のベトナム人運転手500人採用計画:物流業界の新潮流

2025年11月13日、ヤマト運輸はベトナムのIT大手FPTコーポレーションの日本法人と協業し、2027年からの5年間で最大500人のベトナム人大型トラック運転手を採用する計画を発表しました。この取り組みは、特定技能制度を活用したもので、主に同社の拠点間を結ぶ長距離輸送(幹線輸送)を担うドライバーを対象としています。採用規模は年間約100人規模で、在留資格は最長5年の「特定技能1号」です。このニュースは、物流業界の人手不足問題に対する大胆な一手として注目を集めていますが、同時に日本人ドライバーの雇用機会や労働環境改善への影響をめぐる議論も巻き起こしています。

ニュースの詳細:採用の背景とプロセス

ヤマト運輸の発表によると、この計画は長距離輸送部門の高齢化と深刻な人手不足を解消するためのものです。長距離ドライバーの平均年齢が高く、後継者不足が慢性化している中、ベトナム人をターゲットに選んだのは、同国が日本への労働力供給国として急成長しているためです。FPTとの提携により、2025年12月からベトナム現地で希望者を募集し、2026年から半年間の特別教育プログラムを開始します。このプログラムでは、日本語(N4レベル)、日本文化、安全運転技術、ヤマト独自のルールを徹底的に教育します。

来日後には、さらにN3レベルの日本語教育と外免許の切り替え試験を受け、大型自動車第一種免許を取得。ヤマト運輸の社員として雇用され、安心して働ける生活環境の整備も約束されています。宅配の最終配送(ラストワンマイル)ではなく、長距離輸送に限定することで、安全性や言語の壁を最小限に抑える狙いがあります。この取り組みは、持続可能な物流の実現に向けたもので、ヤマトホールディングス全体の戦略の一環です。

日本人ではなくベトナム人を採用する理由:人手不足の構造的課題

なぜ日本人ではなくベトナム人を優先するのか。その核心は、日本国内のドライバー不足の深刻さにあります。物流業界全体で「2024年問題」と呼ばれる働き方改革による残業規制が実施され、ドライバーの労働時間が厳しく制限される中、ヤマト運輸も例外ではありません。高齢化が進む長距離ドライバーは、肉体的な負担が大きく、若手日本人男性の志望者が減少しています。また、EC(電子商取引)の拡大で荷物量が増加する一方、賃金水準の低さや過酷な労働条件が、国内採用を難しくしています。

ベトナム人を採用するメリットは多岐にわたります。第一に、ベトナムは人口が多く、教育熱心な若者が多いため、質の高い人材を確保しやすい点です。第二に、特定技能制度により、5年間の安定した労働力が得られ、企業側の教育投資を回収しやすい。第三に、FPTのような現地パートナーとの連携で、事前教育が可能になり、入社後の適応がスムーズになります。ヤマト運輸は、単なる人海戦術ではなく、日本語・安全教育を徹底することで、ベトナム人ドライバーを「日本人並み」のスキルに引き上げる方針です。これにより、国内の人手不足を補いつつ、グローバルな人材活用を推進する狙いがあります。

しかし、この選択には「日本人優先」の原則からの逸脱という批判も根強く、X(旧Twitter)上では「ベトナム人の犯罪率が高い」「事故リスクが増す」といった懸念の声が相次いでいます。実際、ベトナム人による窃盗事件の増加が報じられる中、荷物のセキュリティや交通安全への不安が広がっています。

外国人依存は労働環境改善の逃げか?:両刃の剣としての議論

人手不足を理由に外国人に依存するのは、労働環境改善に対する「逃げ」ではないか、という指摘は的を射ています。ヤマト運輸は過去に、長時間労働や残業代未払いで労働基準監督署から書類送検されるなど、ブラック企業イメージが定着しました。変形労働時間制の廃止を求めるドライバーの闘争が6年に及び、ようやく法定労働時間(1日8時間、週40時間)が守られるようになったものの、現場では分業制の導入やセンター集約化による負担増大が続いています。これにより、退職者が相次ぎ、人手不足が悪循環を生んでいます。

外国人採用を推進する一方で、日本人ドライバーの賃金引き上げや休憩時間の確保、機械化投資が不十分だとすれば、確かに「安価な労働力依存」の側面が否めません。Xの投稿では、「500人雇うコストを日本人給与に回せ」といった声が目立ち、企業側の本気度を疑問視する意見が主流です。一方で、ヤマト運輸は「全員経営」のDNAを掲げ、育児・介護支援の拡充や年次有給休暇の90%取得目標を推進しており、改善努力をアピールしています。外国人労働者の受け入れ体制として、多言語マニュアルの整備や安全講話の実施も行っていますが、これらが「表面的」か「本質的」かは今後の成果次第です。

最終的に、この計画は物流の持続可能性を高める可能性を秘めていますが、日本人労働者のモチベーション低下や社会的な摩擦を生むリスクも伴います。ヤマト運輸が真の「共生社会」を実現するためには、外国人依存を超えた、賃金・環境の抜本改革が不可欠でしょう。