運送事業者間の下請法違反集中調査結果、勧告2社・指導530件の詳細と今後の対応

運送事業者間の取引において下請法違反集中調査結果

経済産業省の中小企業庁と公正取引委員会は、2025年12月23日に「運送事業者間の取引における下請法違反被疑事件の集中調査の結果」を公表しました。2025年4月以降、運送事業者間の取引において下請法違反の疑いがある行為について集中調査を実施し、この調査の結果、運送事業者に対して2件の勧告と530件の指導が行われました。勧告は2025年12月4日と同年12月12日にそれぞれ措置済みです。また、中小企業庁では下請Gメンによるヒアリングも行われ、運送事業者からの意見を収集しています。

調査の背景

下請法に違反する疑いのある行為に対して、中小企業庁と公正取引委員会が連携して調査を行い、違反が確認された場合に勧告や指導などの措置を迅速に実施しています。特定の業種における下請法違反被疑行為を集中調査する新たな取り組みとして、この運送事業者間の取引が対象となりました。

実施期間と対象

調査は2025年4月以降に実施され、運送事業者間の取引を対象としています。この期間中に下請法違反の疑いがある行為を集中的に調査しました。

調査結果

調査の結果、勧告2件と指導530件が実施されました。違反行為の主な種類は、書面の不交付・記載不備、買いたたき、不当な経済上の利益の提供要請です。これらの行為は重複を含めて908件確認されましたが、措置は上記の件数に基づいています。

違反行為の内訳と具体例

書面の不交付・記載不備では、発注書面を交付していなかった事例や、荷待ち・積込み・取卸しなどの運送業務以外の役務を記載していなかった事例が複数ありました。買いたたきでは、コスト上昇にもかかわらず代金を据え置いていた事例や、運送業務以外の役務について十分な協議なく代金を決定していた事例が確認されました。不当な経済上の利益の提供要請では、無償で運送業務以外の役務を行わせていた事例や、有料道路利用料金を負担させていた事例がありました。これらの行為は、運送業界の商慣習が要因の一つとされています。

勧告の詳細

勧告された事例として、南日本運輸倉庫株式会社では元請管理手数料や振込手数料を代金から差し引いていた減額行為(総額約1896万円)が、センコー株式会社では無償で荷積み・荷卸しや長時間待機を強要していた不当な経済上の利益の提供要請が、それぞれ確認されました。

指導の詳細

指導では、書面の不交付・記載不備に対して運送業務以外の役務を具体的に明記するよう、買いたたきに対してコスト上昇を考慮した協議を行うよう、不当な経済上の利益の提供要請に対して適正な対価を支払うよう、それぞれ指導が行われました。

下請Gメンのヒアリング結果

中小企業庁の下請Gメンによるヒアリングでは、運送事業者から減額、買いたたき、不当な経済上の利益の提供要請に関する意見が聴取されました。例えば、代金から手数料を差し引かれる事例や、協議が不十分なまま代金が決定される事例、無償で附帯業務を行わされる事例が挙げられています。

今後の対応

今後、中小企業庁と公正取引委員会は事業所管省庁との連携を強化し、運送事業者間の取引適正化を推進します。また、国土交通省との連絡会議を定期的に開催し、貨物自動車運送事業法(トラック法)との連携を図ります。2026年1月1日から施行される製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)も活用し、違反行為への対応を継続します。

総括

今回の集中調査により、運送事業者間の取引において、下請法違反またはそのおそれのある行為が多数確認され、勧告2件および指導530件という厳しい結果となりました。特に「書面の不交付・記載不備」「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」の3類型が主な違反内容であり、これらは長年にわたる運送業界の商慣習に起因するものが少なくありません。

中小企業庁と公正取引委員会は、こうした違反行為を是正するため迅速な措置を講じるとともに、下請Gメンによるヒアリングを通じて現場の実態を把握しました。今後、2026年1月1日から施行される「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」の活用も視野に入れ、国土交通省との連携を強化しながら、トラック法を含む関係法令の遵守を徹底することが求められています。

物流業界全体として、事業者間の対等な価格交渉を確保し、適正な取引環境を構築していく機運を高めることが不可欠です。本調査を契機に、運送事業者間の取引適正化に向けた取り組みが一層加速することが期待されます。