中国の軍事的脅威に備える日本の多層的同盟・協力網

日本が構築する安全保障の枠組み

日本は、憲法第9条の下で専守防衛を原則としつつ、中国をはじめとする近隣国からの潜在的な軍事的脅威に備え、多層的な同盟・協力関係を強化しています。これらの枠組みは、主にインド太平洋地域の平和と安定を目的とし、米国を中心としたパートナーシップが基盤となっています。以下では、主な同盟と協力関係を、公式の政策文書や国際合意に基づき紹介します。

日米安全保障条約(日米同盟)

日本と米国の間の基幹的な同盟として、1951年に締結され、1960年に改定された日米安全保障条約は、日本防衛の要です。この条約により、米国は日本領土への武力攻撃が発生した場合、極東における平和と安全に寄与する義務を負います。日本は、米軍の駐留を容認し、共同訓練や情報共有を通じて抑止力を高めています。特に、中国の東シナ海・南シナ海での活動拡大に対し、2025年の防衛白書でも、日米同盟のさらなる深化が明記されています。

多国間協力の枠組み

日本は、二国間を超えた多国間メカニズムを通じて、地域の安全保障を支えています。これらは、中国の軍事拡張に対するバランスを取る役割を果たしています。

クアッド(QUAD:日米豪印)

2007年に発足し、2017年に再活性化されたクアッドは、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による戦略対話です。インド太平洋の「自由で開かれた」秩序を維持することを目的とし、海上安全保障、災害対応、重要インフラ・供給網の強靭化に焦点を当てています。2025年のインド主催首脳会合では、中国を名指しはしないものの、強引な海洋進出への深刻な懸念を共有し、共同演習のさらなる拡大が確認されました。

AUKUSへの協力

AUKUSは2021年にオーストラリア、英国、米国が結成した枠組みで、先端技術(核動力潜水艦、AI、量子、サイバー)の共有を柱とします。日本は正式メンバーではありませんが、2024年3月の日米豪防衛相会合以降、柱2(先端能力協力)への参加が進められ、2025年には水中戦能力や監視技術の共同研究が本格化しています。

欧州・国際機関との連携

日本は、アジア太平洋を超えたグローバルな視野で協力関係を拡大し、中国のグローバルな影響力に対抗しています。

NATOとの個別協力パートナーシップ

2014年からNATOのグローバル・パートナーとして位置づけられた日本は、2024年7月のワシントン首脳宣言で「インド太平洋4カ国パートナー」(日本・オーストラリア・韓国・ニュージーランド)として正式に認定されました。2025年度はサイバー防衛、海上保安、ウクライナ支援を通じたハイブリッド脅威対応で協力が加速しています。

二国間防衛協力関係

日本は、主要国との二国間協定を通じて、柔軟な対応力を確保しています。

オーストラリアとの包括的戦略的パートナーシップ

2022年の日豪共同宣言で「特別な戦略的パートナーシップ」に格上げされ、2025年には円滑化協定(RAA)の完全運用開始により、相互部隊訪問や共同演習が飛躍的に増加しています。

インドとの特別戦略的・グローバルパートナーシップ

2006年以来の2+2対話を通じて防衛協力を深化させ、2025年にはインド海軍と海上自衛隊によるクロスデッキ・ヘリコプター運用を含む海上演習(JAIMEX-25)が実施され、実戦的な連携が進んでいます。

フィリピン・ベトナムとの防衛装備・技術協力

日本はフィリピンに対し巡視船やレーダー、ベトナムに対し中古巡視船や訓練支援を提供。2025年9月にはフィリピンとの相互アクセス協定(RAA)が発効し、南シナ海での共同訓練が常態化しています。ベトナムとの協力も、サイバーセキュリティや防衛装備移転を中心に進展しています。

韓国との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)

2016年発効のGSOMIAは、北朝鮮・中国の弾道ミサイルや軍事動向に関する情報共有の基盤であり、日米韓三カ国協力の要として2025年も完全に維持・運用されています。

これらの同盟・協力関係は、2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略・防衛力整備計画に基づき、統合抑止力と多層的な地域安全保障アーキテクチャの構築を目指して着実に進展しています。