TSMCの熊本工場での3nm先端半導体生産計画
台湾の半導体大手TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)は、日本・熊本県で先進的な3ナノメートル(nm)プロセスの半導体生産を開始する計画を発表しました。この動きは、AI関連の需要増大に対応するためのもので、日本国内での高性能チップ供給を強化する狙いがあります。
発表の概要
TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は、2026年2月4日に東京で日本の高市早苗首相と会談し、熊本の第2工場で3nmチップの量産を計画していることを明らかにしました。この計画は、元々予定されていた7nmプロセスの生産をアップグレードしたもので、AIサーバーや高性能コンピューティング向けの需要に対応するものです。投資額は地元メディアの報道によると約17億ドル(約2兆6000億円)とされています。
工場建設の進捗
TSMCは熊本県で第1工場をすでに稼働させており、12nm、16nm、28nmプロセスの半導体を生産しています。第2工場は2025年秋に建設を開始し、遅れて一時中断されていましたが、現在は3nmプロセス向けに再開されています。この工場は、ソニーグループとの合弁会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)を通じて運営されます。生産開始は2027年末を予定しています。
日本政府の関与と意義
日本政府はTSMCの熊本投資を支援しており、追加の補助金を検討中です。高市首相は、この3nmチップ生産が経済安全保障に大きな意義を持つと述べています。日本にとっては、国内で最先端の半導体を生産することで、AIビジネスの基盤を強化し、グローバルなチップ供給競争に対応する機会となります。
TSMCの3nm技術の詳細
TSMCの3nmプロセスは、FinFET技術を基盤とした最先端の製造プロセスです。最初に量産されたN3(N3B)は、5nm(N5)と比較してロジックトランジスタ密度が約1.6倍、性能が10〜15%向上(同電力時)、または消費電力が25〜30%低減(同性能時)を実現しています。SRAMセル面積は0.0199μm²です。
その後、生産性と歩留まりを向上させた改良版としてN3Eが開発されました。N3EはN5比でロジック密度が約1.6倍、性能が約18%向上、消費電力が約32%低減されます。最小メタルピッチは23nmで、FinFlex™技術により異なるフィン数のセルを同一チップ内で混在させることが可能となり、性能・電力・密度の最適化が柔軟に行えます。SRAMセル面積は0.021μm²です。
さらに進化したN3PはN3Eの光学縮小版で、N3E比で性能が5%向上(同電力時)または電力が5〜10%低減(同性能時)、チップ密度が約1.04倍向上します。N3Pは2024年後半に量産開始予定です。これらの技術により、AIや高性能コンピューティング向けの高効率チップを実現しています。熊本第2工場では、これらの最先端3nmファミリーを活用した生産が計画されています。
TSMCの日本投資全体の概要
TSMCの日本投資は、主に熊本県菊陽町に集中しており、第1工場と第2工場の2つの工場から構成されています。第1工場はすでに稼働を開始しており、成熟プロセス(12nm〜28nm)の半導体を生産しています。第2工場は当初6〜12nmプロセスの計画でしたが、AI需要の高まりを受けて3nmプロセスへのアップグレードが決定されました。これにより、総投資額は当初の約122億ドル(約1兆8000億円)から約170億ドル(約2兆6000億円)規模に拡大しています。
日本政府はこれを強力に支援しており、第1工場に対して最大5000億円、第2工場に対して最大7320億円の補助金を交付しています。これらを合わせると、公的支援は最大約1兆2320億円に上ります。この投資は、日本国内の半導体製造能力を大幅に強化し、経済安全保障の観点から重要な位置づけとなっています。現在、第3工場に関する具体的な計画は公表されていませんが、熊本を中心とした九州地域での半導体エコシステム拡大が期待されています。
