伊東市・田久保真紀市長の失職決定:背景と経緯

伊東市・田久保真紀市長の失職決定:背景と経緯

2025年10月31日、静岡県伊東市議会は臨時会において、田久保真紀市長に対する2度目の不信任決議案を賛成多数で可決しました。これにより、地方自治法の規定に基づき、田久保市長は同日付で失職となります。この決定は、学歴詐称疑惑に端を発した市政の混乱の末路として、注目を集めています。以下では、事件の詳細な経緯と影響について詳しく解説します。

田久保市長のプロフィールと当選の経緯

田久保真紀氏(55歳)は、元伊東市議会議員です。2023年の市議選では最下位当選という厳しい結果を収めていましたが、2025年5月の市長選挙では現職との一騎打ちを制し、当選を果たしました。この「下剋上」の勝利は、市民の期待を高め、市政に新しい風を吹き込むものとされていました。しかし、在職わずか数ヶ月で学歴に関する疑惑が浮上し、急速に市政は危機に陥りました。

学歴詐称疑惑の発端

疑惑のきっかけは、2025年6月下旬に報じられた田久保市長の学歴に関する情報です。市長は履歴書などで大学卒業を主張していましたが、実際には大学から「除籍」処分を受けていたことが判明しました。除籍とは、学籍を抹消される状態を指し、履歴書上では「中退」と記載されるべきものでした。この詐称は、百条委員会(地方自治法に基づく調査特別委員会)で認定され、市長の説明責任が問われることとなりました。

市長側は当初、疑惑を否定し、7月には一度辞職を宣言したものの、「与えられた使命を全身全霊で果たしたい」と撤回。市民や議会からの信頼を失う中、事態はエスカレートしました。

1度目の不信任決議と議会解散

9月1日の定例市議会初日、伊東市議会は田久保市長に対する不信任決議案を全会一致で可決しました。これは、学歴詐称という個人的な不祥事に対する説明不足が主な理由です。不信任が可決された場合、市長は辞職、失職、または議会解散のいずれかを選択しなければなりません。

田久保市長は辞職・失職を避け、「議会に新しい風を吹き込みたい」との理由で9月10日に市議会を解散。解散に伴う市議選は10月19日に投開票され、定数20に対し、前職の不信任賛成派18人が全員再選。新たに選出された議員のうち19人が、2度目の不信任に賛成の意向を示していました。これにより、失職の回避は極めて困難な状況となりました。

2度目の不信任決議と失職の瞬間

10月31日の臨時市議会では、20人の議員全員が出席し、2度目の不信任決議案が採決されました。結果、19人の賛成、1人の反対により可決。地方自治法第178条に基づき、2度目の不信任可決は自動失職を意味します。田久保市長は議会後、「議会の決定として粛々と受け止めたい」と述べ、涙ながらに市民と職員への感謝を表明しました。

提案理由として、四宮和彦市議は「大義なき解散は暴君の所業」と批判。市長の行動が民意を無視したものであると強調しました。また、この混乱の中で、市議らに殺害をほのめかす脅迫状が届くという事態も発生し、伊東市政の緊張を象徴しています。

今後の市長選と市政への影響

失職により、50日以内に伊東市長選挙が実施されます。告示は12月7日、投開票は同14日の可能性が高いと見られています。すでに、杉本憲也前市議、黒坪則之氏、石島明美氏、岩渕寛二氏の4人が出馬を表明。前市長の小野達也氏も意欲を示しており、自民党伊東支部内では推す声が上がっていますが、過去の敗北をどう評価するかが焦点です。

田久保市長の再出馬については、「支援者と話し合い、自身と向き合って決める」と明言を避けています。一方、失職直前の冬のボーナス支給(約190万円)が市幹部の機転で1日差で阻止されたエピソードもあり、行政の混乱ぶりがうかがえます。

この事件は、地方自治における説明責任と民意の重要性を改めて示すものとなりました。伊東市民は、早期の市政安定を望んでいます。