多重債務者の急増:147万人という深刻な数字
日本国内で多重債務者の数が急増し、2025年3月末時点で147万人に達したことが明らかになりました。この数字は、3件以上の金融業者から借金をしている人を対象としたもので、消費者金融や銀行などの貸金業を合わせた推計値です。金融庁が公表したデータによると、この急増は社会的な懸念を呼んでおり、早急な対策が求められています。
多重債務者の定義と推計方法
多重債務者とは、複数の貸金業者から借入を行い、返済が困難な状況に陥っている人を指します。具体的には、3件以上の業者から借金をしているケースを対象とし、金融庁の調査では全国の貸金業者の貸付残高データや利用者動向を基に推計されています。この方法により、正確な実態把握が図られていますが、実際の数はさらに多い可能性も指摘されています。
過去の推移:2017年頃の100万人前後から急増
多重債務者の数は、2017年頃には100万人前後で推移していましたが、近年に入り顕著に増加しています。2025年3月末の147万人という数字は、過去最高を更新するものであり、経済状況の変化が背景にあると見られています。この推移は、金融庁の定期的な監視調査により追跡されており、データの一貫性が確保されています。
金融庁の対応:12月中旬からの要因分析調査
この急増を受け、金融庁は2025年12月中旬にも要因分析のための詳細調査を開始することを発表しました。調査では、多重債務の増加要因を多角的に検証し、政策立案に活用する予定です。これにより、問題の根本原因を明らかにし、予防策の強化を図る方針です。
物価高騰の影響の可能性
調査の焦点の一つとして、物価高騰による生活費の上昇が挙げられています。食料品やエネルギー価格の上昇が家計を圧迫し、借金の必要性を高めている可能性が指摘されています。ただし、金融庁は現時点で因果関係を確定しておらず、データに基づく分析を進めます。
総量規制のすり抜け事例
貸金業法で定められた総量規制(年収の3分の1を超える借入を制限)があるにもかかわらず、多重債務が増加している背景には、規制を回避する手法の利用が考えられます。例えば、借金の目的を「生活費」ではなく「事業資金」などと申告するケースが報告されており、金融庁はこれらの実態を調査対象とします。
今後の対策:使途確認の強化と消費者保護
金融庁は、調査結果を踏まえ、貸金業者の借入使途確認を厳格化する方向で検討を進めています。これにより、無理な借入を防ぎ、多重債務の発生を抑制する狙いです。また、消費者向けの金融教育の推進も並行して行われ、早期相談の仕組みを整備する計画です。
社会全体への影響と注意喚起
多重債務の急増は、個人の生活破綻だけでなく、経済全体の安定性にも影響を及ぼす可能性があります。金融庁は、国民に対し、借入の際の計画的な判断を呼びかけています。困窮者は、自治体の相談窓口や日本貸金業協会の支援を利用することを推奨します。
