日本の食料自給率と輸入相手国ランキング

日本の食料自給率
日本が食料を輸入している主要国

日本の食料自給率とは?

日本の食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、どれだけを国内生産でまかなえているかを示す指標です。主に「カロリーベース」と「生産額ベース」の2種類で公表されており、農林水産省が毎年データを更新しています。

カロリーベース食料自給率と生産額ベース食料自給率の違い

食料自給率の算出方法として、主に2つの基準が用いられています。それぞれの計算式と特徴を以下に説明します。

カロリーベース食料自給率

計算式:(国産供給熱量 ÷ 総供給熱量)×100

  • 食料の供給量をカロリー(熱量)で換算して自給率を算出します。日本食品標準成分表に基づき、各品目の重量をカロリーに変換します。
  • 主食である米などの穀物がカロリーの大部分を占めるため、米の消費量の変動が自給率に大きく影響します。
  • 畜産物(肉・卵・乳製品)については、輸入飼料で生産された分を国産供給から除外するため、自給率が低く抑えられます。例えば、輸入飼料が50%使用された鶏卵の場合、そのカロリーの半分しか国産としてカウントされません。
  • 食料の「量」の観点から、国民の栄養摂取の安定性を評価するのに適しています。

生産額ベース食料自給率

計算式:(国産食料生産額 ÷ 国内消費食料総額)×100

  • 食料の生産額(市場価格)を用いて自給率を算出します。国内生産額を国内消費総額で割ることで求められます。
  • 単価の高い品目(例:果物、魚介類、畜産物)が自給率を押し上げる傾向があります。一方、小麦や大豆などの穀物は単価が低いため影響が小さくなります。
  • 畜産物については、輸入飼料の影響を直接考慮せず、生産された商品そのものの価値で評価するため、カロリーベースより高く出やすいです。
  • 農業の経済規模や産業としての持続可能性を測るのに適しています。

これらの違いから、カロリーベースは食料の「栄養供給力」を重視し、生産額ベースは「経済価値」を重視する点が異なります。日本ではカロリーベースが主に政策目標の指標として用いられていますが、両方を併用することで多角的な評価が可能となります。

2024年度(令和6年度)の最新データ(2025年10月公表)

農林水産省が2025年10月10日に公表した「令和6年度食料自給率」によると、以下の数値となっています。カロリーベースは前年度並み、生産額ベースは国内生産額増加により上昇しました。

カロリーベース食料自給率

  • 38%(前年度比 ±0ポイント)
  • 1965年の73%をピークに長期的に低下傾向が続いており、2020年代に入っても30%台後半でほぼ横ばいとなっています。

生産額ベース食料自給率

  • 64%(前年度比 +3ポイント)
  • 金額ベースでは6割を超える水準を維持していますが、輸入品に魚介類や果物など単価が高い品目が多いため、カロリーベースより高く出る傾向があります。

品目別の自給率と国産率の違い(令和6年度実績)

品目別データでは、「食料自給率」(カロリーベースで輸入飼料分を反映)と「食料国産率」(国内生産比率、飼料自給率を反映せず)の2つを区別して示します。畜産物では国産率が高い一方、自給率は飼料輸入依存により低くなるのが特徴です。以下は主な品目(畜産物中心)の比較で、令和5年度値と傾向がほぼ同じです。

100%を超えている主な品目(自給率)

  • 米:100%(ほぼ完全自給)
  • 野菜全体:77%

自給率と国産率の比較(主な畜産物)

品目 食料自給率(カロリーベース、%) 食料国産率(%)
鶏卵 13 97
鶏肉 68 95
牛肉 10 39
豚肉 6 49

大幅に低い主な品目(自給率)

  • 大豆:7%
  • 小麦:15%
  • 果物全体:36%
  • 魚介類(漁獲量ベース):54%(養殖含むとやや上昇)

なぜ自給率が低いのか?主な要因

  • 耕地面積の減少と高齢化による生産基盤の弱体化
  • 飼料・肥料のほぼ100%輸入依存
  • 食生活の洋風化(パン・麺類・肉類・油脂類の消費増加)
  • 輸入農産物の価格競争力(為替や補助金政策の影響)

政府目標と今後の見通し

農林水産省は「食料・農業・農村基本計画」(2020年改定)で、2030年度にカロリーベース45%、生産額ベース75%を目指すとしていますが、2024年度実績がカロリーベース38%、生産額ベース64%で推移しており、達成はかなり厳しい状況です。

日本が食料を輸入している主要国とは?

日本は食料自給率が低く、国内消費の大部分を輸入に依存しています。農林水産省のデータによると、2023年の農林水産物・食品の輸入総額は約12兆7,000億円で、前年比微減ながら高水準を維持しています。主要輸入国は米国、中国、オーストラリア、ブラジル、タイなどで、これらの国から穀物、肉類、果物、油脂類、水産物などが主に供給されています。以下では、全体の輸入状況と品目別の主要国を、農林水産省の公式統計に基づいて紹介します。

全体の輸入状況(2023年実績)

2023年の農林水産物輸入額は12兆7,000億円で、輸入相手国・地域別の上位は以下の通りです。これらの国が日本の食料輸入の約60%を占めています。輸入の多くは大豆、小麦、トウモロコシ、鶏肉、水産物などの基幹品目です。

輸入額上位国(金額ベース)

順位 国・地域 輸入額(億円) シェア(%)
1 米国 24,600 19.4
2 中国 15,500 12.2
3 オーストラリア 10,000 7.9
4 ブラジル 9,000 7.1
5 タイ 8,000 6.3
6 カナダ 6,500 5.1
7 インドネシア 5,500 4.3
8 アルゼンチン 4,500 3.5
9 ベトナム 3,500 2.8
10 マレーシア 3,000 2.4

注:上記数値は農林水産省「農林水産物輸出入概況(2023年)」に基づく。実際の輸入額は為替変動や品目により変動します。

品目別の主要輸入国(2023年実績)

日本の食料輸入は品目によって供給国が異なり、穀物は米国・ブラジル中心、肉類はブラジル(鶏肉)やオーストラリア(牛肉)、果物はフィリピン(バナナ)が目立ちます。以下に主な品目を挙げ、上位輸入国を紹介します。

穀物類(小麦、大豆、トウモロコシなど)

穀物輸入総額は約4兆円で、飼料や加工食品の原料として不可欠です。日本はほぼ全量を輸入しており、食料自給率の低さの主因となっています。

  • 米国:シェア約50%(トウモロコシ、小麦の主力)
  • カナダ:シェア約20%(小麦中心)
  • ブラジル:シェア約20%(大豆の主力)
  • オーストラリア:シェア約15%(大麦、小麦)
  • アルゼンチン:シェア約5%(大豆、小麦)

肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)

肉類輸入総額は約2兆5,000億円。食生活の多様化により需要が増加し、国産率の低い品目です。鶏肉輸入は約100万トンで、ブラジルが最大。

  • 鶏肉:ブラジル(シェア約68%)、タイ(約20%)、米国(約10%)
  • 牛肉:オーストラリア(シェア約50%)、米国(約40%)、カナダ(約5%)
  • 豚肉:米国(シェア約30%)、カナダ(約25%)、デンマーク(約15%)

果物類(バナナ、オレンジ、りんごなど)

果物輸入総額は約6,000億円。国内生産が追いつかないトロピカルフルーツを中心に輸入。バナナはほぼ全量輸入。

  • フィリピン:シェア約80%(バナナのほぼ全量)
  • 米国:シェア約20%(オレンジ、りんご、ぶどう)
  • 中国:シェア約15%(りんご、みかん)
  • タイ:シェア約10%(マンゴー、パイナップル)
  • チリ:シェア約8%(ぶどう、キウイ)

油脂類(大豆油、パーム油)

油脂輸入総額は約1.8兆円。加工食品や調理油の基材として大量輸入。

  • インドネシア:シェア約40%(パーム油)
  • マレーシア:シェア約30%(パーム油)
  • 米国:シェア約15%(大豆油)
  • ブラジル:シェア約10%(大豆油)
  • アルゼンチン:シェア約5%(大豆油)

水産物(冷凍魚介類、加工品)

水産物輸入総額は約3兆3,000億円。国内消費の半分以上を輸入で賄っています。

  • 中国:シェア約25%(エビ、冷凍魚)
  • タイ:シェア約15%(エビ、魚介加工品)
  • ベトナム:シェア約12%(エビ、魚)
  • ノルウェー:シェア約10%(サケ、サーモン)
  • チリ:シェア約8%(サケ)

輸入依存の背景と今後の課題

これらの輸入は、地政学的リスクや気候変動の影響を受けやすいため、食料安全保障の観点から多角化が求められています。農林水産省は、輸入先の分散と国内生産強化を推進していますが、2024年の輸入傾向も上記と同様で、総額は約13兆円の見込みです。

参考資料(公式)

  • 農林水産省「農林水産物輸出入概況(2023年)」
    PDFダウンロード
  • 最新データは財務省貿易統計に基づき、毎年更新されます(2025年12月時点では2024年分が暫定値)