スルガ銀行のアパマン問題、不正融資で121億円解決金支払いへ 被害者救済に前進

スルガ銀行、不正融資で解決金121億円支払いへ

スルガ銀行は、2018年に発覚したシェアハウス以外の投資用不動産(主に中古1棟アパート・マンション)向け不正融資問題(通称アパマン問題)に関連し、東京地裁の民事調停で示された調停勧告を受け入れ、行員らの不正関与の恐れがある194件の被害者に対して総額121億円の解決金を支払うことを2025年12月15日に発表しました。この決定は、同日に行われたスルガ銀行と被害者弁護団による共同記者会見で明らかにされました。

アパマン問題の詳細と背景

アパマン問題は、スルガ銀行が投資用不動産向け融資において、行員が顧客の預金通帳や家賃収入明細書(レントロール)を改ざんするなどの不正行為に関与し、個人投資家に割高な物件を購入させ、過剰融資を実行した事案です。この問題は、シェアハウス「かぼちゃの馬車」事件と並行して2018年に表面化し、金融庁の調査で組織的な不正が確認されました。被害者は主にサラリーマンなどの個人投資家で、物件の収益性が過大に見せかけられた結果、返済が困難となり、多大な経済的負担を強いられています。

被害者らは2022年にスルガ銀行不正融資被害弁護団を結成し、東京地裁に民事調停を申し立て、対象物件は605件に及びました。調停では、不正関与の有無を巡る審理が長期化し、金融庁は2025年5月に銀行法に基づく報告徴求命令を発出して早期解決を求めました。

調停勧告の内容と物件の区分

2025年10月に示された裁判所の調停勧告では、対象605件の物件を区分。行員の不正関与の恐れがある「グレー案件」194件については、1件あたり平均約6,232万円(総額121億円)の解決金を支払うこととなりました。この解決金は、物件の適正価格と実際の購入価格の差額を補填するものです。

別途1件についてはすでに不正関与が認定され、解決金支払いが決定しています。一方、残る410件(白案件)については、不正関与の成立余地がないと判断され、解決金支払いは行われませんが、金利引き下げ、延滞金の一部免除、返済条件の変更などの個別支援策を適用し、弁護団との協力のもとで最終解決を図ることとされています。

今後の対応と影響

スルガ銀行の加藤広亮社長は記者会見で、被害者に長期間にわたり心労をかけたことに対し謝罪の意を表明しました。銀行側は特別対応チームを設置し、多重債務などの個別事情にも柔軟に対応する方針です。この合意により、アパマン問題の長期化が解消に向かい、被害者の債務負担軽減と銀行の経営安定化が期待されます。

本件は、金融機関の融資審査の厳格さと顧客保護の重要性を改めて示す事例として、今後の類似問題防止に寄与するものとなるでしょう。