SNSで「女性の気持ちを理解してほしい」という投稿が多いのはなぜ?
異性に対して、好感を抱いたり、不満を持ったりすることは日常的にありますがSNSを見ていると、女性ユーザーによる「気持ちを分かってほしい」「パートナーへのモヤモヤ」といった投稿が目立つ一方で、男性による類似の投稿は比較的少ないと感じることはありませんか?
これは単なる偶然ではなく、ジェンダーによる「SNSの利用目的」や「社会的な感情表現の規範」の違いが影響していると考えられています。脳科学的な俗説ではなく、社会心理学やコミュニケーション研究の視点から、その背景を解説します。
1. ジェンダーによるSNS利用目的の違い
女性の傾向:関係構築と「共感」の場
多くの調査において、女性はSNSを「既存の人間関係の維持・強化」や「自己開示」のために利用する傾向が高いことが示されています。
女性にとってコミュニケーションは、感情を共有し合うことで相手との距離を縮める手段であることが多く、個人的な体験や感情(喜びや悩み)を投稿することは、周囲からの「いいね」やコメントによるソーシャルサポート(社会的支援)を得るための重要なプロセスとなります。
男性の傾向:情報収集と「事実」の場
一方、男性はSNSを「情報収集」や「趣味・実用的な議論」(ニュース、ガジェット、スポーツなど)に活用する割合が高い傾向にあります。
男性間のコミュニケーションでは、事実確認や問題解決が重視されることが多く、個人の感情的な不満を不特定多数に発信することは、「目的が不明確」あるいは「非生産的」と捉えられがちです。そのため、感情的な投稿自体が少なくなる傾向にあります。
2. 感情表現における社会的背景
「女性は脳の構造的に感情的である」という説は現在では科学的根拠が乏しいとされています。むしろ、幼少期からの「社会的な刷り込み(社会化)」の影響が大きいと考えられます。
女性:「語る」ことでストレスに対処する
心理学的に、女性はストレスを感じた際、他者にその状況を話し、共感を得ることで心理的負担を軽減する「情動焦点型コーピング」をとる傾向があります。
社会的に女性は感情を表現すること(弱みを見せることや、不安を口にすること)が許容されやすいため、SNS上で「分かってほしい」と発信することは、心の健康を保つための自然な防衛反応の一つと言えます。
男性:「弱み」を見せない規範
対照的に、男性には古くから「感情を抑制すべき」「弱音を吐くべきではない」という男らしさの規範(マン・ボックス)が社会的に求められてきました。
そのため、関係性への不満や不安があっても、それをSNSで公にすることは「弱さの露呈」と無意識に感じてしまい、内面的に処理するか、あるいは仕事や趣味などの活動で気を逸らすことで解決しようとする傾向があります。
3. 「ラポート・トーク」と「レポート・トーク」
言語学者のデボラ・タネンが提唱した概念に、男女の会話スタイルの違いがあります。これがSNSの投稿内容にも影響しています。
女性:ラポート・トーク(関係性の会話)
女性は「共感」や「つながり」を確認するための会話(Rapport-talk)を好みます。「理解してほしい」という投稿は、解決策を求めているのではなく、「私もそう思うよ」という共感を通じて、孤立感を解消したいというニーズの表れです。
男性:レポート・トーク(報告の会話)
男性は「情報」や「地位」を確認するための会話(Report-talk)を好みます。そのため、感情の共有よりも「で、どうすればいいか?」という解決策や事実の提示を優先します。これが、男性が感情的な投稿をしない、あるいは女性の投稿に対して(求められていない)アドバイスをしてしまう一因となります。
結論:違いを知り、相互理解へ
女性の投稿が多いのは「かまってちゃん」だからではなく、感情を共有することで関係性を大切にしたいというコミュニケーションスタイルによるものです。逆に男性の投稿が少ないのは、冷淡だからではなく、感情を公にしないことが社会的に推奨されてきた結果と言えます。
「男脳・女脳」といった単純な区別ではなく、こうした「社会的な背景やコミュニケーションの目的の違い」を理解することが、SNS上でのジェンダー間の摩擦を減らす第一歩となるでしょう。
