資生堂、520億円の最終赤字見通し発表の概要と課題

資生堂、2025年12月期に520億円の最終赤字見通し

化粧品大手の資生堂は2025年11月10日、2025年12月期の連結業績予想を下方修正し、最終損益が520億円の赤字(前期は108億円の赤字)になると発表しました。従来予想では60億円の黒字を見込んでいましたが、一転して赤字転落となります。この赤字額は、会計基準や決算期の変更を考慮しない場合、2001年3月期の450億円の赤字を超える過去最大規模となります。

主な下方修正の理由:米国事業での巨額減損

赤字転落の最大の要因は、米国事業におけるのれんの減損損失468億円の計上です。資生堂は2019年に約900億円で買収した米スキンケアブランド「ドランク・エレファント」の収益性が低下したため、この減損処理を行いました。同ブランドは新興ブランドとの競争激化や、2024年の生産トラブルによる供給混乱で顧客離れが進んだことが背景にあります。

その他の業績指標も大幅引き下げ

売上収益は従来の9950億円から9650億円(前期比2.6%減)に、営業損益は135億円の黒字から420億円の赤字に、それぞれ下方修正されました。第3四半期累計(1-9月)では最終損益が439億円の赤字(前年同期は7.5億円の黒字)とすでに悪化しており、通期での赤字幅拡大を余儀なくされました。

構造改革の推進:人員削減の実施

資生堂は収益性改善に向け、新たに200人前後の希望退職を募集する方針を明らかにしました。これにより、2期連続の最終赤字を回避するためのコスト構造改革を加速させます。

資生堂の過去の事業譲渡事例

資生堂はこれまで、スキンビューティー領域への集中を目的とした事業ポートフォリオ再構築を進めており、複数回の事業譲渡を実施しています。主な事例として、2021年に「TSUBAKI」「SENKA」「UNO」などを含むパーソナルケア事業を欧州系投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズに約1600億円で譲渡し、合弁事業化しました(新会社は当初「ファイントゥデイ資生堂」、後に「ファイントゥデイ」に変更)。また、2022年には同事業関連の久喜工場とベトナム工場の生産事業をCVC傘下に譲渡。さらに2024年にはヘアサロン向けプロフェッショナル事業をドイツのヘンケル社に123億円で譲渡するなど、非コア事業の整理を継続しています。これらの譲渡は、プレステージブランドへの資源集中を目的とした構造改革の一環です。

海外事業の課題が顕在化

資生堂の2025年12月期業績は、米国事業の不振が引き起こした減損損失により、過去最大の最終赤字に陥る見込みです。従来の黒字予想から一転したこの修正は、グローバル市場での競争環境の厳しさを浮き彫りにしています。同社は過去の事業譲渡事例と同様に構造改革を進め、収益基盤の強化を図るとしています。