生活保護の全額補償見送り
厚生労働省は、2025年6月27日の最高裁判決で違法と認定された2013~2015年の生活保護基準引き下げについて、全額補償を見送る方針を固めました。共同通信などによると、減額された当時の受給者約50万人に総額670億円を返す案は見送り、補償は一部原告のみに限定する方向で調整が進んでいます。
厚労省が全額補償を見送る理由
- 最高裁は「手続きの違法性」を指摘しただけで、減額そのものを無効とはしていない。
- 減額前は「低所得世帯の消費水準を上回っていた」ため、過剰支給の是正だったとの認識。
- 2025年10月から設置した専門委員会で、補償対象を「判決確定原告のみ」または「遡及調整」に絞る案が主流。
原告団・支援者の反発
- 全国の原告団は「違法と認めた以上、全利用者への全額返還が筋」と抗議。
- 「いのちのとりで裁判」弁護団は「最高裁判決を骨抜きにする暴挙」と批判し、新たな集団訴訟を準備中。
生活保護基準引き下げ訴訟 最高裁判決の要点
2025年6月27日、最高裁第三小法廷は、大阪・愛知の2訴訟で2013~2015年の基準引き下げを違法と判断。減額処分の取消しを命じ、全国約1,000人の同種訴訟に決着をつける統一判断となりました。
違法とされた2つの調整手法
| 調整名 | 内容 | 最高裁の認定 |
|---|---|---|
| デフレ調整 | 物価下落率(-2.9%)をそのまま反映 | 違法 社会保障審議会での検討を省略 |
| ゆがみ調整 | 低所得世帯との消費乖離を是正 | 判断過程に過誤・欠落あり |
判決の根拠(生活保護法第8条第2項違反)
- 厚労相は「最低限度の生活」を保障する際、国民の消費実態+専門的知見を総合考慮しなければならない。
- 本件は「物価だけを見て機械的に減額」→裁量権の逸脱・乱用。
- 結果、平均6.5%・最大10%(総額670億円)の減額が違法に。
判決の影響範囲
- 勝訴確定:大阪・愛知訴訟の原告(減額処分取消)
- 全国波及:同種訴訟で勝訴判決が続出予定
- 国家賠償:本判決では認めず(別途請求が必要)
今後の見通し
- 厚労省:年内にも補償基準を決定(全額補償は見送り濃厚)
- 原告団:「全利用者への遡及補償」を求め、厚労省前での抗議行動を継続
- 日弁連:「生活保護基準改定の立法化」を提言
この判決は生存権(憲法25条)の司法チェックを強めた一方、実際の補償は政治判断に委ねられています。最新情報は厚生労働省公式サイトまたは「いのちのとりで裁判」公式サイトでご確認ください。
