高市早苗首相による裁量労働制の見直し表明
高市早苗首相は、特別国会の施政方針演説において、裁量労働制の見直しを表明する方向で調整を進めています。この動きは、働き方改革の総点検に基づくもので、経済成長戦略の一環として位置づけられています。
調整の背景
高市首相は、昨年10月に厚生労働大臣に対して労働時間規制の緩和検討を指示していました。この指示は、心身の健康維持と労働者の選択を前提としたもので、残業規制の見直しに関する議論を深める意図があります。国会では、残業代減少による副業の強制的な増加などの懸念を指摘し、労働環境の整備に向けた実態把握を強調していました。また、経済界からは人手不足を背景に、裁量労働制の対象業務拡大を求める声が上がっています。
施政方針演説の予定と内容
特別国会は2026年2月18日に召集され、高市首相は同日に再任された後、2月20日頃に施政方針演説を行う予定です。演説の原案では、時間外労働の上限規制などを含む働き方改革について、労働者の声を踏まえた裁量労働制の見直しを明記しています。この見直しは、裁量労働制の拡充を念頭に置いたもので、労働時間規制の緩和検討から具体的な施策へ移行する形となります。
関連する政策の文脈
この表明は、成長分野への投資促進策と連動しており、複数年度予算や基金の活用、成長・危機管理投資の別枠管理仕組みの導入などが併せて示されます。全体として、責任ある積極財政の下で国内投資を推進する方針が打ち出されています。
懸念と議論の声
一方で、裁量労働制の見直しに対しては、長時間労働の増加や過労死のリスク、残業代の減少といった懸念が指摘されています。こうした声は、労働者の健康と賃金への影響を考慮した厳格な運用を求めるものです。
専門業務型裁量労働制の対象業務(全20業務)
厚生労働省令・告示で限定列挙されており、業務の性質上、使用者が具体的な指示をしにくい高度専門的な業務に限定されます。2024年4月改正で新たに追加された業務は太字で示しています。
- 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
- 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務
- 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
- 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
- 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
- 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
- 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
- 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
- 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
- 銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
これらの業務に該当する場合でも、実際の運用では労働者本人の同意取得(不同意者への不利益取扱い禁止)や健康確保措置の強化が義務付けられています。一般的な営業職は対象外です。
企画業務型裁量労働制の対象業務
企画業務型は個別の業務を列挙するのではなく、以下の4要件をすべて満たす業務に適用されます。主に本社・中枢部門の経営企画・人事・財務などのホワイトカラー業務が該当します。
- 事業の運営に関する事項についての業務であること
- 企画、立案、調査及び分析の業務であること
- 業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があると客観的に判断されること
- 業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
具体例として、経営企画部門での事業戦略策定、人事制度の立案・分析、広報戦略の企画などが挙げられます。庶務・事務処理、日常的な運用業務は対象外です。導入には労使委員会の決議(5分の4以上の賛成)が必要です。
まとめ
裁量労働制の対象業務は厳格に制限されており、濫用防止のため健康確保措置や同意手続が強化されています。導入・適用を検討する際は、厚生労働省の最新パンフレットや労使協定の確認が不可欠です。実際の適用可否は個別の業務内容に基づき判断してください。
