歳入と歳出の内訳から今の日本の課題を把握する

[国の財政] 財政のしくみと役割 | 税の学習コーナー|国税庁

令和7年度(2025年度)日本の歳入内訳
令和7年度(2025年度)日本の歳出内訳
プライマリーバランスとその問題点
社会保障費の内訳
年金・健康保険・生活保護費と収支の分析
公務員報酬の歳出内訳からの課題

令和7年度(2025年度)日本の歳入内訳

一般会計総額

令和7年度(2025年度)の一般会計歳入総額は115兆1978億円で、前年度(令和6年度)の112兆5717億円を上回り、過去最大規模となっています。歳入は主に税収、公債金(国債)、その他の収入で構成されており、依然として約4分の1を国債に依存する厳しい財政状況が続いています。

税収

税収は77兆8190億円で、歳入全体の約68%を占めます。これは国の歳入の主要な柱であり、以下の主要な税目で構成されています。

  • 所得税: 約18兆円。個人や事業者の所得に対して課税される税金。定額減税の影響で前年度比で若干の減収が見込まれますが、景気回復に伴う所得増加が税収を支えます。
  • 法人税: 約17兆5000億円。企業業績の回復傾向を反映し、前年度比で約2兆円増加。企業の利益増加が税収増に寄与しています。
  • 消費税: 約24兆円。物価上昇や消費の堅調さを背景に、前年度比で約8000億円増加。税収全体の約3分の1を占め、安定した財源となっています。
  • その他の税収: 酒税、たばこ税、揮発油税、印紙収入などを含む。これらは全体の税収の約10%程度を占め、安定した収入源です。

公債金(国債)

公債金は28兆6471億円で、歳入全体の約25%を占めます。国債の新規発行額は前年度比で6兆8019億円減少し、17年ぶりに30兆円を下回ります。しかし、依然として歳入の大きな部分を占め、国債依存度の高さが財政の課題となっています。国債は、歳出が税収を上回る分を補うために発行され、将来の利払いや償還が財政負担となります。

その他の収入

その他の収入は約9兆円で、歳入全体の約7%を占めます。主に以下の項目が含まれます。

  • 政府資産の運用収入: 国有財産の売却や運用益など。
  • 雑収入: 行政手数料や罰金、没収金など。
  • 特別会計からの繰入金: 年金特別会計や復興特別会計などからの資金移動。

これらの収入は比較的小規模ですが、財政の補完的な役割を果たします。

財政の課題

令和7年度の歳入構造は、税収が堅調であるものの、国債依存度が依然として高い状況を示しています。歳入全体の約4分の1を占める公債金は、国の債務残高を増加させ、将来の利払い負担を増大させる要因です。特に、想定金利の上昇(1.9%から2.0%)により、国債費の増加が歳出を圧迫しています。持続可能な財政運営に向け、税収基盤の強化や歳出の効率化が求められています。

令和7年度(2025年度)日本の歳出内訳

一般会計総額

令和7年度(2025年度)の一般会計総額は115兆1978億円で、当初予算としては過去最大規模となります。これは前年度(令和6年度)の112兆5717億円を上回り、3年連続で110兆円を超える予算となっています。財源の約4分の1を国債に依存する厳しい財政状況が続いています。

社会保障関係費

社会保障関係費は38兆2778億円で、歳出全体の約3分の1を占めます。高齢化の進行に伴い、医療、年金、介護などの費用が増加しています。この分野は歳出の最大の項目であり、財政の硬直化の一因となっています。特に、医療費や年金給付の増大が顕著で、今後もさらなる増加が見込まれます。

国債費

国債費は28兆2179億円で、前年度比1兆2089億円増となり、過去最大規模です。これは歳出全体の約4分の1を占めます。国債発行残高の増加と、長期金利の上昇(想定金利を1.9%から2.0%に引き上げ)を反映した結果、利払い費が増加しています。国の借金返済にかかる負担が財政を圧迫しています。

地方交付税交付金

地方交付税交付金は19兆784億円で、地方自治体の財政を支える重要な財源です。前年度比で増加しており、地方の行政サービスやインフラ整備を支える役割を果たしています。この項目は、地域間の財政格差を調整し、地方の安定した運営を支援するために計上されています。

防衛関係費

防衛関係費は8兆6691億円で、前年度を上回る規模となっています。防衛力の抜本的強化を背景に、装備の近代化や人員増強、サイバー防衛などへの投資が増加しています。安全保障環境の変化に対応するための予算拡大が続いています。

公共事業費

公共事業費は約6兆円規模で、前年度とほぼ同水準を維持しています。インフラ整備や災害復旧、都市開発など、国の基盤強化に関わる支出が含まれます。地域経済の活性化や防災・減災対策にも寄与する重要な項目です。

文教及び科学振興費

文教及び科学振興費は約5兆5000億円で、教育や研究開発の推進に充てられます。学校教育の充実、科学技術の振興、大学や研究機関の支援などが含まれ、前年度とほぼ同水準です。次世代の人材育成やイノベーション促進に寄与します。

予備費

予備費は7395億円で、予定外の支出に備えるための予算です。なお、令和6年度に別枠で計上されていた物価高騰対応の予備費(1兆円)は、「歳出構造を平時に戻す」方針のもと廃止され、通常の予備費のみとなりました。災害や経済変動への対応に柔軟性を確保する役割を担います。

その他の歳出

その他の歳出には、経済対策や子育て支援、賃上げ促進など、国民生活や経済成長に関わる予算が含まれます。具体的には、最低賃金の引き上げ環境整備(15億円)、共働き世帯への給付金(792億円)、人材確保のための就職支援(416億円)などが盛り込まれています。これらは、経済の活性化や暮らしの支援を目的とした施策です。

プライマリーバランスとその問題点

プライマリーバランスの概要

プライマリーバランス(基礎的財政収支)は、国の歳入(税収やその他の収入)から国債費(利払い費や償還費)を除いた歳出を差し引いた収支を示します。令和7年度の一般会計総額は歳出が115兆1978億円、歳入が同額で、税収77兆8190億円と公債金28兆6471億円が主要な財源です。しかし、プライマリーバランスは依然として赤字が続いており、2025年度の赤字額は約8.5兆円と推定されます。これは政府の目標である2025年度の黒字化達成が困難であることを示しています。

高い国債依存度

令和7年度の歳入の約25%(28兆6471億円)が公債金(国債)で賄われており、税収だけでは歳出を賄えない構造が続いています。この高い国債依存度は、プライマリーバランスの赤字を拡大させる主因です。国債発行額は前年度比で減少したものの、依然として歳入の4分の1を占め、累積債務は約1300兆円に達しています。金利上昇(想定金利2.0%)により国債費が28兆2179億円に膨らみ、歳出を圧迫していることも、プライマリーバランス改善の障壁となっています。

社会保障費の増大

歳出の約3分の1を占める社会保障関係費(38兆2778億円)は、高齢化に伴う医療・年金・介護費の増大により年々増加しています。この硬直的な支出構造は、プライマリーバランスの赤字を縮小するための歳出削減を困難にしています。社会保障費の増加は税収の伸びを上回るペースで進行しており、財政の持続可能性を脅かす要因となっています。改革が進まない場合、将来世代への負担がさらに増大するリスクがあります。

税収の限界と経済依存

税収は77兆8190億円と堅調で、消費税や法人税の増加が寄与していますが、歳出の拡大ペースをカバーするには不十分です。特に、定額減税の影響で所得税が若干減少するなど、税収基盤の強化には限界があります。また、税収の増減は景気動向に左右されやすく、経済成長が鈍化した場合、プライマリーバランスの赤字がさらに拡大する可能性があります。持続的な税収増を図るための構造改革や経済成長戦略が急務です。

金利上昇リスク

令和7年度予算では、国債の想定金利が1.9%から2.0%に引き上げられ、国債費が増加しています。今後、国内外の経済状況や日銀の金融政策により金利がさらに上昇した場合、国債の利払い負担が急増し、プライマリーバランスの赤字拡大に直結します。日本の債務残高がGDP比で250%を超える水準にある中、金利上昇は財政の脆弱性を増幅させる重大なリスクです。

2025年度黒字化目標の未達

政府は2015年にプライマリーバランスの2025年度黒字化を目標に掲げましたが、令和7年度の赤字見込み(約8.5兆円)から達成は困難とされています。コロナ禍や物価高騰への対応で歳出が拡大し、目標達成のための具体的な道筋が見えていません。この遅れは、財政健全化への信頼低下や、将来の増税・歳出削減の必要性を高める要因となり、国民負担の増加が懸念されます。

今後の課題と展望

日本のプライマリーバランス改善には、歳出構造の見直し(特に社会保障費の効率化)、税収基盤の強化(経済成長や税制改革)、国債依存度の低減が不可欠です。しかし、高齢化や安全保障環境の変化による防衛費増など、歳出圧力は強まる一方です。持続可能な財政運営には、短期的な経済対策と長期的な財政健全化のバランスが求められ、政治的な合意形成や国民の理解が不可欠です。また、金利上昇リスクに備えた債務管理戦略も急務です。

社会保障費の内訳

社会保障関係費の総額

令和7年度の社会保障関係費は38兆2778億円で、一般会計歳出(115兆1978億円)の約33%を占め、歳出の最大項目です。高齢化の進行に伴い、医療、年金、介護などの需要が増加しており、財政の硬直化を招く要因となっています。以下に、主要な内訳を詳しく説明します。

年金関係費

年金関係費は約13兆5000億円で、社会保障費の約35%を占めます。主に国民年金、厚生年金、共済年金などの公的年金給付に充てられます。高齢者人口の増加に伴い、受給者数が増加しており、年金支給額は年々拡大傾向にあります。特に、高齢者の生活を支える基盤としての重要性が高く、財政負担の大きな部分を占めています。

医療関係費

医療関係費は約13兆円で、社会保障費の約34%を占めます。主に健康保険や国民健康保険を通じた医療費の公的負担、病院や診療所の運営支援、医薬品費などが含まれます。高齢化による受診頻度の増加や医療技術の高度化、薬価の上昇などが費用の増大要因です。特に、慢性疾患や高額な新薬の需要増加が財政を圧迫しています。

介護関係費

介護関係費は約4兆円で、社会保障費の約10%を占めます。介護保険制度に基づく介護サービスの提供、施設整備、介護従事者の処遇改善などに充てられます。高齢者人口の急増に伴い、介護需要が急速に拡大しており、在宅介護や施設介護の充実が求められています。介護人材の不足や処遇改善のための追加支出も増加傾向にあります。

子育て・生活支援

子育て・生活支援関連費は約4兆5000億円で、社会保障費の約12%を構成します。児童手当や保育所の運営支援、子育て世代への給付金(令和7年度予算では共働き世帯への給付金として792億円が計上)、生活保護費などが含まれます。少子化対策や貧困対策の一環として、子育て環境の整備や低所得者支援が強化されています。

その他の社会保障費

その他の社会保障費は約3兆2778億円で、社会保障費の約9%を占めます。これには、障害者支援、雇用保険関連の給付、医療・介護従事者の人材育成や処遇改善、福祉サービスの拡充などが含まれます。特に、障害者の自立支援や地域福祉の強化、コロナ禍後の保健・医療体制の整備に向けた支出が計上されています。

社会保障費の課題

社会保障費は高齢化の進行に伴い、今後も増加が見込まれます。令和7年度の38兆2778億円は前年度比で増加しており、税収(77兆8190億円)の約半分を占める規模です。この増大はプライマリーバランスの赤字拡大や国債依存度の増加を招き、財政の持続可能性を脅かしています。効率的な制度運営や給付の重点化、財源確保のための改革(例:保険料負担の見直しや税制改革)が求められる一方、高齢者や低所得者への支援の質を維持する必要があり、バランスの取れた政策が課題となっています。

年金・健康保険・生活保護費と収支の分析

年金と健康保険の歳出と財源の概要

年金と健康保険は、社会保障関係費(38兆2778億円)の中で大きな割合を占め、国民や企業が支払う保険料や税金を財源としつつ、不足分を一般会計から補填しています。これらの費用は歳出に含まれており、保険料収入と歳出の差額は国の負担となります。以下で、年金と健康保険の歳出項目、金額、収支差額を詳しく説明します。

年金関係費の歳出と収支

年金関係費は社会保障費の約35%を占め、令和7年度の歳出は約13兆5000億円です。この中には、国民年金、厚生年金、共済年金などの公的年金給付が含まれます。財源は主に保険料(被保険者や事業主が負担)と国庫負担(一般会計からの繰入)で賄われます。令和7年度の年金保険料収入は約10兆円程度と推定され、残りの約3兆5000億円が国庫負担(税金)で補填されています。この差額(約3兆5000億円)が、一般会計歳出から年金制度を維持するための国の財政負担となります。

健康保険(医療関係費)の歳出と収支

医療関係費は社会保障費の約34%を占め、令和7年度の歳出は約13兆円です。これには健康保険や国民健康保険を通じた医療費の公的負担、病院運営支援、医薬品費などが含まれます。財源は保険料(被保険者や事業主が負担)と国庫負担で構成されます。健康保険の保険料収入は約9兆円程度と推定され、残りの約4兆円が国庫負担(一般会計からの繰入)で賄われます。この差額(約4兆円)が、医療費を支えるための国の財政負担となります。

年金と健康保険の収支差額

年金と健康保険の歳出(合計約26兆5000億円)に対し、保険料収入(合計約19兆円)の差額は、約7兆5000億円となります。この差額は、一般会計からの国庫負担や税収で補填されており、プライマリーバランスの赤字拡大や国債依存の一因となっています。高齢化による給付費の増加や、保険料負担の限界がこの差額を拡大させる要因です。

生活保護費の歳出

生活保護費は社会保障費の「子育て・生活支援」項目に含まれ、令和7年度の歳出は約3兆円です。これは、低所得者や生活困窮者への現金給付や医療扶助、住宅扶助などをカバーします。生活保護費は全額が税金(国庫負担と地方負担)で賄われ、保険料収入のような直接的な財源はありません。国庫負担分は約2兆3000億円、地方負担分は約7000億円と推定されます。高齢者や単身世帯の増加により、生活保護受給者数は微増傾向にあり、財政負担が課題となっています。

財政への影響と課題

年金と健康保険の収支差額(約7兆5000億円)と生活保護費(約3兆円)は、社会保障費の増大と国庫負担の拡大を象徴しています。これらの費用は歳出の硬直化を招き、プライマリーバランスの赤字(約8.5兆円)に直結します。特に、年金と健康保険は保険料収入だけでは賄えず、税収や国債に依存する構造が続いており、持続可能な財政運営には制度改革(給付の効率化や保険料負担の見直し)、経済成長による税収増、少子高齢化対策が求められます。生活保護費も、貧困対策の重要性と財政負担のバランスが課題です。

公務員報酬の歳出内訳

公務員報酬の概要

公務員に支払う報酬は、国家公務員や地方公務員の給与、賞与、退職手当、各種手当などを含み、国の行政サービスを支える重要な支出です。これらの費用は、令和7年度の一般会計歳出(115兆1978億円)の中で、主に「一般行政経費」などの項目に含まれるほか、一部は他の特定分野(文教、防衛など)に分散して計上されます。以下に、詳細な内訳と金額を説明します。

国家公務員の報酬(一般行政経費など)

国家公務員の報酬は、主に一般会計の「一般行政経費」および各省庁の運営に関わる予算に含まれます。令和7年度の国家公務員の給与・手当等は約5兆2000億円と推定されます。この金額には、約30万人の国家公務員(行政職、専門職、特別職など)の基本給、賞与、時間外手当、地域手当、退職手当などが含まれます。特に、人事院勧告に基づく給与改定や、デジタル化・行政効率化に伴う人件費の調整が反映されています。

地方公務員の報酬(地方交付税交付金を通じて間接的に計上)

地方公務員の報酬は、地方交付税交付金(19兆784億円)を通じて地方自治体に配分され、そこで給与として支払われます。地方公務員(約270万人)の報酬総額は約15兆円と推定され、その一部(約3分の2、約10兆円)が地方交付税交付金や国庫補助金で賄われます。残りは地方税などの独自財源で対応されます。地方交付税交付金は、地方自治体の一般行政経費(人件費を含む)を支える主要な財源であり、間接的に公務員報酬に充てられる重要な項目です。

特定分野の公務員報酬

公務員報酬の一部は、特定の歳出項目に分散して計上されます。たとえば:

  • 文教及び科学振興費(約5兆5000億円):公立学校の教員(約90万人)の給与が含まれ、約4兆円が教員報酬に充てられます。
  • 防衛関係費(8兆6691億円):自衛官(約25万人)の給与や手当が含まれる。防衛省職員の報酬は約1兆2000億円と推定されます。
  • その他の分野:警察官、消防士、医療従事者(公的病院など)などの報酬が、関連する予算(例:厚生労働関係費)に含まれる。これらは約1兆円規模と推定されます。

公務員報酬の総額

国家公務員(約5兆2000億円)、地方公務員(国負担分約10兆円)、特定分野の公務員(教員や自衛官など約5兆2000億円)を合計すると、令和7年度の公務員報酬に関わる歳出は約20兆4000億円に達します。ただし、地方公務員の報酬は地方交付税交付金を通じて間接的に賄われるため、一般会計歳出に直接計上されるのは国家公務員と特定分野の報酬(約10兆4000億円)です。この金額は、歳出全体の約9%を占めます。

財政への影響と課題

公務員報酬は、国の行政サービスや教育、防衛などの基盤を支える不可欠な支出ですが、歳出全体の約9%(直接計上分)を占める大きな項目です。高齢化や社会保障費の増大(38兆2778億円)の中で、報酬の効率化や定員管理が求められています。特に、デジタル化や行政改革による人員削減、給与体系の見直し(人事院勧告の活用)が課題です。また、地方交付税交付金の配分を通じて地方公務員の報酬を支える構造は、地方財政の健全性にも影響を与えており、国と地方の財政バランスの調整が重要です。