・連合宮崎会長、定期大会で高市政権の誕生について危機感を表明
・日本労働組合総連合会(連合)とは
連合宮崎会長、定期大会で高市政権の誕生について危機感を表明
2025年10月26日、労働組合の連合(日本労働組合総連合会)宮崎支部の定期大会が開催され、宮崎会長が挨拶の中で、新たに発足した高市早苗首相を中心とする自民党・日本維新の会連立政権(以下、高市政権)について強い懸念を表明しました。会長は「高市政権の誕生により、日本社会のさらなる右傾化が進むと予想され、深刻な危機感を持っている」と述べ、労働者の権利保護や社会保障の観点から警鐘を鳴らしました。この発言は、政権のタカ派色が強まる中、労働運動の立場から政策転換への対抗姿勢を示すものとして注目されています。
発言の背景:高市政権の発足とその特徴
高市政権は、2025年10月21日に正式に発足しました。高市早苗氏が首相に就任し、日本維新の会との連立により与党を形成する形で誕生しました。この政権は、経済政策としてガソリン暫定税率の廃止や食料品消費税の2年間ゼロ%化の検討を掲げていますが、一方で防衛力強化や憲法改正への積極姿勢が目立ち、タカ派的な政策が強調されています。
閣僚人事では、タカ派議員の登用が相次ぎ、初日から記者団の取材を避ける閣僚も見られるなど、政権の閉鎖性が指摘されています。野党側からも、右傾化と外国人排斥傾向の懸念が相次いでおり、立憲民主党の野田佳彦代表は「右傾化と排外主義のトレンドが懸念される」と述べています。これに対し、連合宮崎会長の発言は、労働組合の視点から政権の方向性を鋭く批判するものです。
連合宮崎会長の発言内容の詳細
定期大会での挨拶で、宮崎会長は高市政権の誕生を直接取り上げ、「さらに右傾化が進むと予想され、危機感を持っている」と明言しました。具体的に、以下の点を挙げて懸念を語りました:
- 労働政策の後退:政権の経済優先路線が、労働基準法の緩和や非正規雇用の拡大を招く可能性を指摘。物価高対策として2万円給付を断念した点を挙げ、「低所得層の生活がさらに圧迫される」と警鐘を鳴らしました。
- 社会保障の縮小:防衛費増額のための予算再配分が、社会保障費の削減につながる恐れを強調。連合の基本理念である「公正な分配」との乖離を問題視しました。
- 右傾化の社会的影響:憲法改正議論の加速が、平和主義の基盤を揺るがすと指摘。排外主義的な政策が労働者の多様性を損なう可能性を危惧しました。
会長は、「連合として、労働者の声を政権に届ける活動を強化する」と意気込みを語り、参加者から大きな拍手が沸きました。この発言は、連合本部の芳野友子会長の路線とも連動しており、全国的な労働運動の動向を象徴するものと言えます。
今後の影響と連合の対応策
高市政権下での政策運営は、「地雷だらけの政局」と評されるほど不安定要素が多く、連合宮崎支部の危機感は全国の労働組合に波及する可能性が高いです。会長は大会で、具体的な対応策として以下の点を挙げました:
- 地方レベルでの政策提言強化:宮崎県内企業との対話を増やし、政権の影響を最小限に抑える。
- 野党との連携:立憲民主党などとの協力で、労働者保護法案の推進を図る。
- 会員教育の推進:右傾化のリスクを会員に周知し、投票行動への啓発を行う。
日本労働組合総連合会(連合)とは
日本労働組合総連合会(通称:連合、英語名:Japanese Trade Union Confederation, JTUC)は、日本最大の労働組合のナショナルセンターで、1989年に設立されました。労働者の権利保護、賃金向上、労働環境の改善を目指し、さまざまな産業の労働組合が結集しています。2025年時点で、約700万人の組合員を擁し、日本の労働運動の中心的役割を果たしています。連合は、労働者の生活向上と社会の公正な発展を掲げ、政策提言や政治活動を通じて影響力を発揮しています。
連合の歴史と設立背景
連合は、1980年代の労働運動の再編の中で生まれました。それ以前、日本には総評(日本労働組合総評議会)や同盟(全国労働組合連絡協議会)など複数のナショナルセンターが存在しましたが、労働運動の統一と強化を目指し、1989年にこれらが統合されて連合が発足しました。民間企業の労働組合を中心に結成され、公共部門や中小企業の組合も参加する幅広い組織です。初代会長は山岸章氏で、以来、労働者の声を取りまとめ、政策に反映させる役割を担っています。
連合の目的と活動内容
連合は、「働くことを軸とする安心社会」の実現を理念に掲げ、以下のような活動を展開しています:
- 労働条件の改善:賃金引き上げ、労働時間の短縮、ワークライフバランスの推進など、労働者の生活向上を目指した交渉やキャンペーンを実施。春季労使交渉(春闘)では、賃上げ目標を設定し、企業との交渉を支援します。
- 政策提言:政府や国会に対し、労働基準法の改正や社会保障制度の充実を求める提言を行います。特に、非正規雇用の待遇改善やジェンダー平等の推進に注力しています。
- 政治活動:特定の政党を支持しつつも、労働者の利益を最優先に据えた政治活動を展開。2025年現在、立憲民主党など野党との連携を強化しつつ、政策ベースでの対話を行っています。
- 国際協力:国際労働機関(ILO)や国際労働組合総連合(ITUC)との連携を通じて、グローバルな労働問題にも取り組んでいます。
組織構造と加盟組合
連合は、47都道府県に地方連合会を設置し、産業別組合(産別)と単組(企業内組合)で構成されています。主要な加盟産別には、以下のような組織があります:
- UAゼンセン:流通、サービス業を中心とした組合。
- 自動車総連:自動車産業の労働組合連合。
- JAM:中小製造業の組合。
- 電機連合:電機・電子産業の組合。
これらの産別は、業界特有の課題に対応しつつ、連合本部と連携して全国的な運動を展開します。また、地方連合会は地域の労働問題に対応し、宮崎支部など各地域で定期大会を開催して方針を決定しています。
連合の政治活動:支持政党とその関係
連合は、労働者の利益を実現するための政治勢力の結集を重視し、主に野党を支援する形で政治活動を展開しています。2025年時点で、連合の支持政党は立憲民主党と国民民主党が中心です。これらの政党は、連合の産別出身議員が多く所属しており、組織票の基盤となっています。連合は、両党の合流や野党共闘を望む声もありますが、共産党との連携には慎重で、共産党との共闘候補の推薦を避ける方針を維持しています。
一方、自民党とは政策協議の場を持ちつつも、基本的に対立軸として位置づけています。2025年の高市政権発足後、連合は自民党の右傾化政策に懸念を表明し、野党支援を強化する姿勢を示しています。具体的には:
- 立憲民主党:連合の主要支持政党で、労働者保護や社会保障強化の政策で連携。2025年参院選では、立憲候補への組織的支援を展開。
- 国民民主党:「労働者の代表の党」と位置づけ、賃上げやエネルギー政策で協議。連合幹部は国民民主を積極的に応援し、距離の生じないよう呼びかけています。
- その他の関係:公明党や自民党とは政策協議を行うが、支持はせず。共産党とは歴史的対立から距離を置いています。
この「股裂き」状態(立憲と国民民主の二股支援)は、連合の課題ですが、労働者中心の政策実現のため、両党との対話を継続しています。
最近の動向と課題
2025年10月時点で、連合は高市早苗首相率いる高市政権の誕生に対し、右傾化や労働政策の後退への懸念を表明しています。特に、宮崎支部の会長が定期大会で「さらなる右傾化が進むと予想され危機感を持っている」と発言し、労働者の権利保護に向けた運動強化を訴えました。連合全体としても、以下のような課題に直面しています:
- 非正規雇用の増加:日本の労働者の約4割が非正規雇用であり、待遇格差の是正が急務です。
- 少子高齢化と労働力不足:労働人口の減少に伴い、外国人労働者の受け入れや多様な働き方の推進が求められています。
- 政治的影響力の低下:労働組合の組織率低下(2025年時点で約17%)により、かつてほどの政治的影響力を維持することが課題となっています。
連合の今後の展望
連合は、労働者の多様なニーズに応えるため、デジタル化やリモートワークの普及に対応した新たな労働政策の策定を進めています。また、ジェンダー平等や若年層の組合加入促進にも力を入れ、組織の若返りを図っています。2025年以降、連合は高市政権の政策への対抗軸として、野党との連携を強化しつつ、地方での草の根運動を展開することで、労働者の声をより強く反映させる方針です。
