レアアース安定供給へ前進、経産省支援策と南鳥島の巨大資源

レアアース確保に向けた日本企業の権益獲得支援
南鳥島周辺のレアアース資源:日本近海の巨大埋蔵量

レアアース確保に向けた日本企業の権益獲得支援

2025年11月12日、NHKニュースで報じられた「レアアース確保 日本企業の権益獲得を資金面で支援へ 経産省」によると、経済産業省は電気自動車(EV)のモーターや風力発電機などのグリーン技術に不可欠なレアアース(希土類元素)の安定供給を強化するため、日本企業が海外での権益を獲得する取り組みを資金面で支援する方針を固めました。このニュースは、日本が中国依存からの脱却を急ぐ中、経済安全保障の観点から注目を集めています。

ニュースの背景と経産省の方針

レアアースは、ネオジムやジスプロシウムなどの17種類の希土類元素を指し、ハイテク産業や再生可能エネルギー分野で欠かせない素材です。日本はこれらの約60%を中国からの輸入に依存しており、過去の輸出規制(2010年の尖閣諸島問題時など)で供給不安定化の経験があります。経産省は、この度の方針で、日本企業がオーストラリアやカナダなどの友好国での鉱山開発権益取得を対象に、低利融資や補助金を提供する枠組みを整備します。支援規模は数百億円規模とみられ、2026年度予算に反映される予定です。

この動きは、日米首脳会談(2025年10月)で合意されたレアアース供給網の強靭化を背景にしています。高市早苗首相とトランプ米大統領は、共同文書で重要鉱物の多角的調達を約束しており、日本は国内資源開発と並行して国際連携を強化する方針です。NHKの報道では、経産相が「輸出規制対象の明確化」を進め、企業負担を軽減する姿勢も強調されました。

日本企業への影響と今後の展望

支援対象となる企業には、三井金属鉱業や住友金属鉱山などの資源大手が想定され、海外プロジェクトへの参画を促進します。成功すれば、日本国内のレアアース加工能力向上につながり、EV生産コストの安定化が期待されます。ただし、環境規制の厳格化や地政学的リスクが課題として残ります。経産省は、2025年末までに具体的な支援要綱を公表する見込みです。

南鳥島周辺のレアアース資源:日本近海の巨大埋蔵量

南鳥島(東京都小笠原村所属)は、東京から約1,950km南東に位置する無人島で、周囲の排他的経済水域(EEZ)内に世界トップクラスのレアアース泥が確認されています。この資源は、水深約6,000mの海底に堆積した高濃度泥状の鉱床で、魚の骨がレアアースを凝集させた自然現象によるものです。2018年の東京大学研究チームの発表以来、日本政府は国産化の切り札として開発を推進しています。

資源の規模と科学的発見

南鳥島EEZ内のレアアース泥は、16種類の希土類元素のうち14種類が高濃度で含まれており、総埋蔵量は約1,600万トンと推定されます。これは日本の年間消費量(約3万トン)の約780年分に相当します。2020年の研究で、南側約250kmの海域で高品位泥が分布することが明らかになり、地球寒冷化期の海洋環境が寄与した可能性が指摘されています。日本海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、2025年6月に3週間にわたる現地調査を実施し、開発ポテンシャルの高いサイトを特定しました。

開発の現状と技術的進展

開発は内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期で推進されており、9府省と4つの国立研究機関が連携しています。2022年には、水深2,470mでの揚泥に世界初成功し、2025年1月から深海掘削船「ちきゅう」を用いた試験採取が予定されています。技術面では、自律型無人潜水機(AUV)「しんりゅう6000」による調査や、「サブシープロダクションシステム」による解泥・揚泥が実証中です。また、「ハイドロサイクロン方式」の選別技術で、泥全体ではなく高含有部分のみを効率的に回収する手法も開発されました。

環境影響評価では、海底観測装置「江戸っ子1号」を用いて2年間の生態データを収集しています。2026年1月には本格試掘掘削が開始予定で、東京大学主導のコンソーシアム(30社以上参加)が採泥・揚泥部会を運営しています。

国際協力と課題

2025年11月7日の日米合意により、南鳥島開発で米国との協力が具体化しています。高市首相は国会で「多様な調達手段の確保が重要」と述べ、試験掘削の共同実施を検討中です。これにより、中国のEEZ主張(2022年の空母航行事件)に対する抑止力も期待されます。一方、課題は深海作業の技術的難易度と環境保護です。SIPでは、2028年以降の産業規模生産を目指しますが、国際鉱区申請やコスト低減が鍵となります。

南鳥島のレアアースは、日本が資源自給率を向上させる戦略の柱であり、経産省の海外支援と連動して、持続可能な供給網構築に寄与するでしょう。