・日中経済安保の最前線:レアアースとフォトレジストの相互依存が再燃
・オーストラリアのレアアース代替供給源
・米国のレアアース代替供給源
・その他の地域のレアアース代替供給源
日中経済安保の最前線:レアアースとフォトレジストの相互依存が再燃
2026年1月現在、中国政府は軍民両用(デュアルユース)品目の対日輸出規制を強化し、レアアース(希土類)および関連磁石の日本企業向け輸出制限を開始したと報じられています。これにより、日本企業の新規契約停止や既存取引への影響が表面化し、自動車・半導体・再生可能エネルギー産業への打撃が懸念されています。一方、日本は世界の高級フォトレジスト市場の70-95%を支配する立場を維持しており、中国側の高性能半導体製造における依存も依然として高い。このような非対称的な相互依存関係は、2010年の輸出停止以来の再来として、地政学的緊張を象徴しています。本記事では、中国のレアアース支配の実態、日本のフォトレジスト優位性、そして両者の貿易構造を詳述した上で、中国依存脱却に向けた世界的な代替供給源の動きを紹介します。
中国のレアアース
生産と供給の状況
中国は世界のレアアース元素(REE)の主要な生産国であり、2024年の世界総生産量のうち69.2%を占め、生産クォータは270,000トンに設定されています。また、中国はレアアースの分離・加工で約90%、永久磁石製造で93%以上のシェアを有しており、グローバル供給チェーンの大部分を支配しています。これらの元素は、電気自動車、再生可能エネルギー機器、電子機器などの分野で不可欠です。中国の埋蔵量は世界全体の約半分を占め、2024年の米国生産量(45,000トン、11.5%)を大きく上回っています。
市場集中と戦略的役割
中国はレアアースの鉱山生産で約70%、精製で90%をコントロールし、2025年時点でクリーンエネルギーや電気自動車向け磁石の94%を製造しています。2021年に設立された中国希土類集団は、国内生産の約70%を管理し、運用効率と国際競争力を強化しています。2023年から2040年にかけて、中国の精製シェアは92%から78%に低下する見込みですが、依然として近独占状態を維持します。
日本のフォトレジスト
市場シェアと生産企業
日本は半導体製造に不可欠なフォトレジストの主要供給国で、世界の高級フォトレジストの75%を生産し、特にEUV(極端紫外線)用では95%以上のシェアを有します。主要企業には信越化学工業、東京応化工業、JSR、富士フイルム電子材料、住友化学が含まれ、これらは先進チップ製造に必要な高性能フォトレジストを供給しています。2025年時点で、日本企業はグローバル市場の70%以上を支配し、EUVフォトレジストではほぼ独占状態です。
半導体産業への貢献
フォトレジストは半導体微細化プロセスで重要な役割を果たし、日本企業はArF液浸フォトレジストやi線厚膜フォトレジストの開発を進めています。2025年から2026年にかけて、住友化学は大阪工場で評価施設を拡張し、先進半導体メーカー向けの供給を強化する予定です。JSRは韓国に新工場を建設し、2026年から運用を開始します。これにより、日本は半導体エコシステムの競争力を維持しています。
両者の貿易相互依存
歴史的背景
中国と日本の貿易関係では、中国のレアアースと日本のフォトレジストが相互依存の象徴です。日本は中国からレアアースの約60%を輸入し、一部の重希土類ではほぼ完全に依存しています。一方、中国は高級フォトレジストの80-90%を日本から輸入し、7nm以下のチップ製造でEUVフォトレジストの100%を依存します。2010年に中国が日本へのレアアース輸出を停止した事例は、この依存関係を露呈しました。
最近の緊張と影響
2023年から2025年にかけ、中国はレアアース抽出技術の輸出禁止や7元素の制限を導入し、2026年には日本向け輸出をさらに制限する可能性があります。これに対し、日本はフォトレジスト輸出の規制を検討中です。日本企業は中国の制限影響を評価中ですが、市民貿易への即時影響は2026年以降に明らかになると見込まれます。日本はオーストラリアやベトナムからの多角化を進めていますが、完全自給は困難です。
オーストラリアのレアアース代替供給源
主要生産企業とプロジェクト
オーストラリアは中国外で世界第4位のレアアース生産国であり、2025年から2027年にかけて鉱山産出量を3倍に増加させる見込みです。Lynas Rare Earthsは中国外で最大の分離レアアース生産者で、西オーストラリアのMt Weld鉱山を運営し、マレーシアの施設で重希土類を含む分離を行っています。2025年にマレーシアで重希土類の商業生産を開始し、2026年以降に拡張を計画しています。Arafura Rare EarthsのNolansプロジェクトは、オーストラリア初の垂直統合型操作で、ネオジムとプラセオジムの4%を世界供給する予定で、2023年に連邦政府から8億4千万ドルの資金を獲得し、2032年に生産開始を目指します。Iluka ResourcesのEneabba refineryは、2026年に稼働開始予定で、政府の12億5千万ドルの融資を受け、ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムの分離酸化物を生産します。
戦略的役割と多様化
オーストラリアのプロジェクトは、米国や欧州との提携を通じて供給チェーンの多様化を推進しており、LynasはマレーシアのKelantan州政府と新たな鉱床開発の覚書を締結しています。これらの取り組みは、中国依存のリスクを軽減し、EVや風力タービン向けの永久磁石供給を強化します。
米国のレアアース代替供給源
国内生産と精製能力
米国は2024年に精製レアアース生産を前年比400%以上増加させ、輸入依存を95%から80%に低下させました。MP MaterialsはカリフォルニアのMountain Pass鉱山で採掘と精製を拡大し、2025年に国防総省から3億3千万ドルの契約を受け、2028年までに中国依存を削減する目標です。Lynas USAはテキサスに精製施設を建設中で、2026年に稼働開始予定で、国防総省から2億5千8百万ドルの補助を受けています。Energy Fuelsはユタ州でモナザイト事業を運営し、国内精製を強化しています。
国際提携と戦略的投資
米国はサウジアラビアのMaadenと提携し、MP Materialsが希土類バリューチェーン全体で協力し、2028年に重希土類生産を開始予定です。国防総省は2027年までに供給チェーン独立を目指し、オーストラリア、カナダ、ブラジル、パキスタンから供給を確保しています。埋蔵量は約180万トンで、地質調査局が200以上の鉱区を特定しています。
その他の地域のレアアース代替供給源
ブラジルとアフリカ
ブラジルは重希土類の主要代替源で、米国に地理的に近く、数千万トンの埋蔵量を有します。アフリカは2030年以降に世界供給の7%を占める可能性があり、タンザニアやインドで鉱山プロジェクトが進んでいます。低資本集約性と有利な採掘コストが成長を駆動します。
カナダ、ノルウェー、欧州
カナダはオンタリオ州キングストンでサマリウムとガドリニウムの精製施設を承認し、Vital MetalsのNechalacho鉱山とサスカトゥーン施設で抽出と初期精製を組み合わせています。ノルウェーのREEtecは中流分離プラントを運営しています。欧州はバッテリー供給チェーンの多様化で成長し、フランスのCaremagに日本企業が投資し、ジスプロシウムとテルビウムの供給を日本需要の20%相当確保しています。
グローバルな多様化努力
国際エネルギー機関によると、中国外の鉱山産出量は2030年までに5.8倍に成長する見込みで、地政学的要因が供給多様化を推進します。Quad、米豪重要鉱物パートナーシップ、G7鉱物セキュリティパートナーシップが備蓄共有と融資調整を強化しています。合成代替品として、Niron Magneticsが鉄と窒化物の磁石を開発し、GM、Stellantis、サムスンから3億ドルの資金を得ています。
