「ポスト石破」論と自民党の選挙敗北をめぐる考察

「ポスト石破」論と自民党の選挙敗北をめぐる考察

最近の報道で、「ポスト石破」として8人の有力候補が取りざたされ、「保守票を取り戻せる総裁でなければだめだ」との声が自民党内で高まっているとされています。しかし、この議論の前提には、2024年9月の自民党総裁選で石破茂氏を総裁に選んだのは他ならぬ自民党自身であるという事実があります。この記事では、「石破総理だから負けたのではなく、自民党だから負けた」という視点から、次の選挙に向けた課題と改善点について詳しく考察します。

石破総裁選出の背景とその影響

2024年9月27日の自民党総裁選では、過去最多の9人が立候補し、石破茂氏が決選投票で高市早苗氏を破り、第28代総裁に選出されました。石破氏は国民の信頼回復や政治とカネの問題への対応を訴え、党内非主流派としての率直な姿勢が一部有権者に支持されました。しかし、総裁選直後の衆院選(2024年10月27日)および2025年7月の参院選で、自民党は与党として過半数を維持できず、衆参両院で少数与党となる厳しい結果に直面しました。この敗北を受け、党内では「石破おろし」の動きが活発化し、保守層の離反が敗因の一つと指摘されています。

一部の意見では、石破氏の政策や姿勢が保守層の支持を失ったとされています。例えば、X上の投稿では「石破を総裁に選んだことで保守層が離反し、選挙での敗北を招いた」との声が散見されます。しかし、こうした見方は問題の本質を単純化しすぎている可能性があります。石破氏の選出は、派閥の裏金問題や政治不信の高まりを背景に、国民に「変わる自民党」をアピールする戦略の一環でした。にもかかわらず、選挙での敗北は、石破氏個人の問題というよりも、自民党全体の構造的課題や国民の信頼喪失が大きく影響していると考えられます。

「自民党だから負けた」という視点

選挙敗北の要因として、以下のような自民党全体の問題が挙げられます。

  • 政治不信の蓄積: 長年にわたる派閥の裏金問題や政治資金スキャンダルが、国民の自民党に対する信頼を大きく損なってきました。石破氏は総裁選で「政策活動費」の見直しを公約に掲げましたが、具体的な改革が進まず、国民の期待に応えきれませんでした。
  • 経済政策の停滞: 円安やインフレ、賃金の停滞といった経済課題に対し、自民党は有効な対策を打ち出せませんでした。特に、2024年衆院選では、経済対策の具体性が欠如していたことが批判されました。
  • 保守層の離反: 石破氏の金融引き締めや社会保障重視の政策が、積極財政を求める保守層との間に溝を生んだとされます。しかし、これは石破氏個人の問題というより、党全体の政策の方向性が保守層の期待と一致しなかった結果とも言えます。
  • 党内結束の欠如: 総裁選後、党内では石破氏への批判や「ポスト石破」をめぐる動きが早くも表面化。党内の一体感が欠如したまま選挙に臨んだことが、組織力の低下を招きました。

これらの課題は、石破氏が総裁であること以上に、自民党の長期政権下で蓄積された構造的問題を反映しています。Xの投稿でも、「石破を総裁に選んだのは自民党自身」「自民党の腐った内部を先に憂うべき」との指摘があり、党全体の体質改善が必要との声が上がっています。

次の選挙に向けた課題と展望

次の選挙で自民党が再び敗北を回避するには、以下のような取り組みが不可欠です。

  1. 国民の信頼回復: 政治資金の透明性向上や、国民に開かれた政治姿勢を具体的な行動で示す必要があります。石破氏が掲げた「真心をもって真実を語る」姿勢を、党全体で実践することが求められます。
  2. 経済政策の強化: 物価高や円安への具体的な対策を打ち出し、国民生活に直結する政策を優先することが重要です。特に、若者や中間層の支持を取り戻すための経済支援策が欠かせません。
  3. 保守層との対話: 保守票の離反を防ぐには、憲法改正や安全保障政策など、保守層が重視するテーマでの明確なビジョンが必要です。ただし、保守層だけでなく幅広い有権者の支持を得るバランスも重要です。
  4. 党内結束の強化: 「ポスト石破」論に走る前に、党内の意見を集約し、一致団結して選挙に臨む体制を整える必要があります。党内での足の引っ張り合いが続けば、さらなる支持離れを招くリスクがあります。

「保守票を取り戻せる総裁」を求める声は理解できるものの、総裁交代だけで問題が解決するわけではありません。仮に高市早苗氏や他の候補が総裁に就いたとしても、党全体の体質改善が伴わなければ、国民の信頼を取り戻すのは難しいでしょう。石破氏をスケープゴートにするのではなく、自民党が長期政権の中で失った「国民政党」としての原点を再構築することが、選挙での勝利への道です。

結論

「石破総理だから負けた」という見方は、問題の一面を捉えているに過ぎません。自民党の選挙敗北は、党の構造的課題や国民の不信感の蓄積が大きな要因です。次の選挙で勝利するには、総裁選び以上に、党全体の改革と国民との対話が不可欠です。自民党が「保守票を取り戻す」ことだけに注力するのではなく、幅広い民意を反映した政策と信頼回復への具体的な行動を示せるかが、今後の命運を握るでしょう。次の選挙に向け、自民党は「国民政党」としての責任を再認識し、抜本的な改革に取り組むべきチャンスはありますが、そうでなければ結果が厳しことに変わりはありません