・パチンコ店で設定情報漏洩事件
・不正競争防止法とは：パチンコ店設定情報漏洩事件から解説
パチンコ店で設定情報漏洩事件：不正競争防止法違反で従業員と客を逮捕
2025年9月3日、宮崎県都城市のパチンコ店で、パチスロ機の設定情報を不正に漏洩したとして、店員と客が不正競争防止法違反（営業秘密の開示・取得）の疑いで逮捕されました。この事件は、パチンコ業界における企業秘密の保護と遊技の公平性に関する課題を浮き彫りにしています。以下に、事件の詳細を解説します。
事件の概要
宮崎県警察は、都城市のパチンコ店に勤務する従業員と同店の客を、2025年6月26日にパチスロ機の設定情報を不正に漏洩・取得した疑いで逮捕しました。この設定情報は、遊技機の当たり確率を左右する営業秘密とされており、不正に利用することで利益を得ようとしたとされています。事件は、店側からの情報提供をきっかけに発覚しました。
不正競争防止法とは
不正競争防止法は、企業の営業秘密を保護し、公正な競争環境を維持するための法律です。本事件では、パチスロ機の設定情報が営業秘密に該当し、これを不正に開示・取得する行為が違法とされました。設定情報の漏洩は、店舗の信頼性や顧客の公平な遊技体験に影響を与える重大な問題です。
逮捕に至った経緯
逮捕された従業員は、パチンコ店の内部システムにアクセス可能な立場にあったとみられ、設定情報を客に漏洩した疑いが持たれています。客は、この情報を受け取り、遊技に利用していたとされています。警察は、両者が共謀して情報を共有していたと見ており、過去の類似行為についても捜査を進めています。事件発覚の背景には、店側が不正を疑い警察に相談したことがあります。
業界への影響
この事件は、パチンコ業界における内部管理の重要性を改めて示しました。類似の事件は全国で発生しており、例えば2025年7月には北海道釧路市で同様の設定情報漏洩事件が報告されています。遊技産業不正対策情報機構（PSIO）は、不正行為の情報提供を呼びかけ、業界全体で管理体制の強化が求められています。
今後の展望
今回の逮捕を受け、パチンコ業界では情報管理の厳格化や従業員教育の強化が急務とされています。警察は、容疑者の認否を公表しておらず、余罪や他の関係者の関与についても調査を継続中です。この事件は、遊技の公平性を保つための業界全体の取り組みを加速させる契機となるでしょう。
不正競争防止法とは：パチンコ店設定情報漏洩事件から解説
2025年9月3日、宮崎県都城市のパチンコ店で、パチスロ機の設定情報を不正に漏洩したとして、従業員と客が不正競争防止法違反（営業秘密の開示・取得）の疑いで逮捕されました。この事件を背景に、不正競争防止法（以下、不競法）の概要、目的、禁止行為、罰則について詳しく解説します。不競法は、企業間の公正な競争を確保し、営業秘密やブランドを守るための重要な法律です。
不正競争防止法の概要と目的
不競法（平成5年法律第47号）は、事業者間の公正な競争を確保し、国民経済の健全な発展を促進することを目的としています。具体的には、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」と定められています（不競法第1条）。営業秘密の不正使用やブランドの模倣、誤認を招く表示などを禁止し、企業と消費者の利益を保護します。
営業秘密の保護とパチンコ店事件との関連
不競法では、営業秘密の不正取得・使用・開示を禁止しています（不競法第2条第1項4号～10号）。営業秘密とは、①秘密として管理されている（秘密管理性）、②事業活動に有用な情報（有用性）、③公然と知られていない（非公知性）の3要件を満たす情報です。パチンコ店のパチスロ機設定情報は、当たり確率を左右する機密情報であり、店舗の競争力や顧客の信頼に関わる営業秘密に該当します。本事件では、2025年6月26日に従業員がこの情報を客に漏洩し、客がそれを取得・利用した疑いがあり、不競法第2条第1項4号（不正な手段による営業秘密の取得）や7号（営業秘密の不正開示）に違反する可能性があります。
不競法が禁止する主な行為
不競法第2条では、以下の10類型の不正競争行為を禁止しています。本事件に関連する「営業秘密の侵害」を中心に、代表的な行為を紹介します。
- 周知表示混同惹起行為：他社の広く知られた商品名やロゴと類似の表示を使い、混同を引き起こす行為（例：「ウォークマン」の名称を無断使用）。
- 著名表示冒用行為：全国的に有名なブランド名やロゴを無断使用する行為（例：「マリオ」の無断使用）。
- 商品形態模倣行為：他社の商品の形状やデザインを模倣する行為（例：デジタル空間での衣服デザインの模倣）。
- 営業秘密の侵害：不正な手段で営業秘密を取得・使用・開示する行為（本事件に該当）。
- 誤認惹起行為：商品の品質や原産地を誤認させる表示をする行為（例：偽の「国産」表示）。
これらの行為は、企業の競争力やブランド価値を保護し、消費者が正しい選択ができる環境を維持するために禁止されています。
不競法違反の罰則と民事措置
不競法違反には、民事措置と刑事罰が規定されています。民事措置には、①差止請求（侵害行為の停止や予防）、②損害賠償請求、③信用回復措置（例：謝罪広告）が含まれます（不競法第3条、第4条、第14条）。損害賠償では、侵害品の譲渡数量に被害者の利益率を乗じた額を損害として推定する規定があり、被害者の立証負担を軽減します（不競法第5条）。刑事罰では、営業秘密の侵害に対し、個人には7年以下の懲役または700万円以下の罰金（海外での漏洩は10年以下または3000万円以下）、法人には5億円以下の罰金（海外漏洩は10億円以下）が科されます（不競法第21条、第22条）。本事件では、従業員と客が刑事罰の対象となる可能性があります。
パチンコ店事件の背景と業界への影響
都城市の事件では、従業員がパチスロ機の設定情報を客に漏洩し、客がそれを利用した疑いで逮捕されました。この情報は店舗の運営や公平な遊技体験に直結する機密であり、漏洩は顧客の信頼を損なう重大な問題です。パチンコ業界では、2025年7月の北海道釧路市での同様の事件など、近年、設定情報漏洩が問題となっており、遊技産業不正対策情報機構（PSIO）は不正防止策の強化を呼びかけています。業界全体で、内部管理の徹底や従業員教育の強化が求められるでしょう。
不競法の最近の改正と今後の展望
不競法は、デジタル化や国際化に対応するため改正が進められています。2023年（令和5年）の改正では、①デジタル空間での商品形態模倣の規制、②営業秘密・限定提供データの保護強化、③外国公務員贈賄の罰則強化、④国際的な営業秘密侵害事案の明確化が導入されました（施行：2024年4月1日）。特に、営業秘密の保護強化は、パチンコ店のような機密情報の漏洩防止に直結します。企業は、アクセス制限や「マル秘」表示などの秘密管理性を徹底する必要があります。本事件を契機に、パチンコ業界でも情報管理体制の見直しが進むことが期待されます。
不競法は、企業が公正に競争し、消費者が信頼できる環境を守るための基盤です。都城市の事件は、営業秘密の保護と業界の透明性向上の重要性を改めて示しており、今後の再発防止策が注目されます。
