・おうし座流星群の極大とは
・おうし座流星群の南群と北群の違い
おうし座流星群の極大とは
おうし座流星群(Taurids)は、地球が彗星2P/エンケの塵の軌道と交差することで発生する流星群です。この流星群は、南群(Southern Taurids)と北群(Northern Taurids)の2つの主要な分流からなり、それぞれの極大(活動のピーク)が若干異なります。極大とは、流星群の活動が最も活発になる時期を指し、理論上の流星出現頻度(ZHR: Zenithal Hourly Rate)が最大となるタイミングです。ZHRは理想的な条件下(放射点が天頂にあり、月明かりなし)で1時間あたりに期待される流星数を表します。
おうし座流星群の特徴として、流星数は比較的少なく(ZHR約5)、出現が遅く長期間続く点が挙げられますが、火球(明るい流星)の出現率が高いことで知られています。2025年は、木星の公転周期による影響で火球の増加が予測されており、特に南群の極大期に注目されています。これらの情報は、国際流星機構(IMO)やアメリカ流星協会(AMS)などの天文機関の観測データに基づいています。
南群(Southern Taurids)の極大
南群の活動期間は9月20日から11月20日までで、極大は2025年11月5日頃(UTC 13時頃、日本時間で22時頃)に予測されています。この時期、ZHRは約5と低めですが、火球の頻度が高く、2025年は「スウォーム年」(火球増加年)にあたります。AMSによると、11月5日を中心とした2週間で火球の報告が増加する可能性があります。
観測条件として、2025年の極大期は満月(スーパームーン)と重なり、月明かりが強いため暗い流星の視認が難しくなります。放射点はおうし座の南東部(赤経約3時28分、赤緯+14.5度)に位置し、速度は遅い(約27km/s)ため、流星の軌跡が長く見えます。国立天文台のデータでは、極大はなだらかな高原状で、1日だけの急激なピークではなく、数日間にわたって活動が続きます。
北群(Northern Taurids)の極大
北群の活動期間は10月20日から12月10日までで、極大は2025年11月12日頃(UTC 14時頃、日本時間で23時頃)に予測されています。ZHRは南群と同様に約5ですが、両群の活動が重なる時期(11月上旬から中旬)には合計で10前後の流星が見られる可能性があります。起源は小惑星2004 TG10と関連付けられています。
2025年の観測条件は、下弦の月(月齢21.1)と重なり、深夜以降に月明かりの影響が出ますが、南群の満月よりは良好です。放射点はおうし座の北東部(赤経約3時52分、赤緯+22.2度)にあり、速度は約29km/sと遅めです。流星電波観測国際プロジェクトの予測では、11月上旬に明るい流星のチェックを推奨しています。
2025年の全体的な観測ポイント
おうし座流星群の極大は明確なピークではなく、11月上旬から中旬にかけてなだらかに活動が続くため、特定の日付にこだわらず複数日観測することをおすすめします。火球の出現が魅力で、過去のスウォーム年(例: 2005年、2015年)では通常の数倍の明るい流星が報告されています。2025年も同様の傾向が期待されますが、月明かりの影響を考慮し、午前中や月没後の時間帯を選んでください。
観測の際は、都市部の光害を避け、広い視野で空全体を監視してください。流星の数は少ないため、根気強い観測が鍵です。これらの日時は天文学的計算に基づく予測であり、実際の出現は天候や地球の位置により変動する可能性があります。
おうし座流星群の南群と北群の違い
おうし座流星群は、彗星2P/エンケの塵が地球の大気圏に突入することで発生する流星群ですが、その塵の分布により「南群(Southern Taurids)」と「北群(Northern Taurids)」の2つの分流に分かれます。これらは起源が同じでも、放射点の位置、活動期間、極大日、塵の軌道特性が異なります。以下に詳しく説明します。
1. 放射点の位置が違う
- 南群(Southern Taurids):
放射点はおうし座の南東部(プレアデス星団の近く)にあり、赤経約3時28分、赤緯+14.5度。空では「ヒアデス星団」の近くに見えます。 - 北群(Northern Taurids):
放射点はおうし座の北東部(プレアデス星団の少し北)にあり、赤経約3時52分、赤緯+22.2度。おうし座の「角」の近くに見えます。
どちらもおうし座内ですが、空で見た位置が約8度(満月の直径の約16倍)離れているため、観測時に流星の出どころが異なります。
2. 活動期間と極大日が異なる
- 南群:9月20日~11月20日(約2か月)
極大:2025年11月5日頃(UTC 13時頃) - 北群:10月20日~12月10日(約1.5か月)
極大:2025年11月12日頃(UTC 14時頃)
南群の方が早く始まり早く終わり、北群は遅れて始まり長く続く傾向があります。11月上旬~中旬に両方の活動が重なるため、この時期に流星数がやや増えます。
3. 塵の軌道と起源の微妙な違い
両群とも彗星2P/エンケ由来ですが、塵の放出時期や地球との交差角度が異なります:
- 南群:地球がエンケ彗星の軌道面より南側を通過する際に交差する塵。
- 北群:地球が軌道面より北側を通過する際に交差する塵。
また、北群の一部は小惑星2004 TG10(エンケの破片とされる)とも関連付けられていますが、主流の説では両群ともエンケ起源です。
4. 流星の速度と明るさの傾向
- 南群:速度約27km/s(遅い)→ 長く光る軌跡
火球の出現率が特に高い(2025年はスウォーム年でさらに増加予測) - 北群:速度約29km/s(やや速い)
火球も出るが、南群ほどではない
まとめ:どう見分ける?
観測中に「流星がどこから出てきたか」を見れば判別可能です:
- プレアデス星団の南側(ヒアデス付近)から → 南群
- プレアデス星団の北側(角付近)から → 北群
両群の極大が1週間ずれるため、11月5日頃は南群中心、11月12日頃は北群中心に観測できます。2025年は南群の火球に注目が集まりますが、北群も含めて11月上旬~中旬が観測のチャンスです。
