物価高対策におこめ券を配布、問題先送りで手数料の無駄遣い

高市政権の「おこめ券」物価高対策とは何か

2025年11月7日付の朝日新聞報道によると、高市早苗政権は総合経済対策の一環として、コメ価格高騰対策に「おこめ券」の活用を盛り込む方針を固めました。鈴木憲和農林水産相が以前から提唱するこの施策は、既存の「重点支援地方交付金」を拡充し、自治体が使い道を決める中で「おこめ券」を国の推奨事例として明記する形です。JA全農などが発行する既存のおこめ券を基に、コメ購入に使えるクーポンを配布し、子育て世帯や低所得層の負担を軽減する狙いです。すでに東京都台東区や尼崎市などで全世帯向け配布事例があり、政府はこれを全国的に後押しします。

なぜ根本的な物価対策にならないのか

おこめ券はコメ価格の高止まりを直接下げる仕組みではなく、購入時の補助に過ぎません。鈴木農水相は「価格はマーケットで決まる」と前政権の備蓄米放出を批判し、増産にも否定的ですが、減反政策の影響で供給が絞られ、投機的な買い占めが価格を押し上げているのが現状です。経済ジャーナリストの町田徹氏は「おこめ券で需要が増えれば価格は下がらず、むしろ値上がりを助長しかねない」と指摘。JA全中会長も対象を限定すべきと述べるように、広く配布すれば供給不足を悪化させる恐れがあり、物価全体の抑制にはつながりません。

おこめ券作成・運用手数料の無駄遣い

おこめ券は印刷・配送・取扱店舗のシステム対応に費用がかかります。台東区の事例では全14万世帯に4400〜8800円分を配布し、補正予算9億5000万円を計上。全国規模で交付金を拡充すれば、行政やJAの事務費が膨張します。スーパーによっては未対応店舗もあり、利用者が「どこで使えるか」と困惑するケースが報告されています。鈴木農水相は「スピーディー」と主張しますが、既存券を活用するだけでも中間マージンが発生し、税金の効率的な使用とは言えません。

現金給付の方が優れている理由

現金なら用途を問わず即時利用可能で、手数料も最小限。鈴木農水相自身が「おこめ券や食料品バウチャーが必ず届けられる」と認める速さを、現金振込でも実現できます。高市首相は参院選公約の一律2万円給付を否定しましたが、対象を絞れば財政負担は同等かそれ以下。現金はコメ離れが進む中、パンやパスタなど代替食にも使え、消費者の選択肢を広げます。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏は、おこめ券を「二重負担の増大」と批判しており、現金の方が柔軟で公平です。

マイナンバーカードと口座紐付けの無駄

政府は2024年までにマイナンバーカードを健康保険証一体化し、銀行口座紐付けを推進。給付金支給の効率化を目的に「デジタル庁」が主導しましたが、おこめ券は紙ベースや自治体別運用が主流で、マイナポータル経由の電子クーポン移行は一部検討止まりです。口座紐付けで過去の給付金は迅速だったのに、券方式を選ぶのは矛盾。国民の個人情報収集とカード普及に巨額を投じた意味が薄れ、「何のためのデジタル化か」との疑問が残ります。結局、農水族の利権優先でマイナンバーの利活用が後回しにされた形です。

真の対策は減反見直しと現金支援

おこめ券は一時しのぎの目くらまし。減反廃止で供給を増やし、消費税減税や現金給付で家計を直接支える方が効果的です。高市政権は「責任ある積極財政」を掲げますが、JA忖度の券バラマキでは国民の信頼を失うだけでおこめ券を配るくらいならマイナンバーを活かしたデジタル現金給付こそ、投資した税金の真価を発揮する道です。