高市内閣「おこめ券」配布の迷走―批判殺到の背景

おこめ券・商品券配布政策の遅延に対する批判

政府が高市内閣の下で推進する総額21兆円規模の総合経済対策の一環として、おこめ券や商品券の配布が掲げられていますが、この政策は閣議決定から実際の実施まで数か月もかかる点で強く批判されています。自治体からは準備の煩雑さと事務負担の増大が指摘されており、一部の首長は「発想自体が1テンポも2テンポも遅れている」と痛烈に非難しています。このような遅れは、国民の物価高の苦しみをすぐに和らげられない無策ぶりを露呈しており、政策に緊急性が全く考慮されていない証拠です。

予算編成と自治体運用がもたらす時間的ロス

補正予算の国会審議を経て交付金が自治体に届くまでのプロセス自体が数週間から数か月かかるため、住民への配布は2026年春以降にずれ込む見通しです。この遅延は単なる行政手続きの問題ではなく、政府の優先順位の誤りを示しています。さらに自治体側では対象者の選定や券の発行作業が新たな負担となり、一部の自治体は配布を拒否するほどです。たとえば福岡市長は「おこめ券」の手間とコストについて「何とも思わないんですかね」と公然と批判しており、こうした声は政策の非現実性を浮き彫りにしています。

農水省の軌道修正も追いつかない批判の嵐

農水省はおこめ券をめぐる誤解や批判に対して軌道修正を試みていますが、米価高止まりを維持するための利益誘導だという指摘がやみません。鈴木農水大臣への非難は特に強く、前任の小泉進次郎氏が備蓄米を放出して米価を下げたことを再評価する声が高まっています。このような状況は、政策が国民の生活支援ではなく特定業界の保護を優先しているという疑念を強め、信頼を大きく損なう結果を招いています。

3,000円相当の支援額が物価対策として無意味な理由

1人あたり約3,000円のおこめ券や商品券は、物価高騰の規模に対してまったく焼け石に水であり、根本的な対策とは呼べません。食料品価格が前年比10%以上上昇している中で、この金額では1か月分の食費増さえ十分にカバーできず、低所得世帯の負担軽減にはほとんど寄与せず、むしろ政策の貧弱さを象徴しています。さらにクーポン形式であるがゆえの柔軟性の欠如が利用者の選択を制限し、無駄な経費を生むだけです。

米価高騰を助長する逆効果の懸念

おこめ券はコメ消費を促す一方で米価の上昇を招く可能性が高く、物価対策としては本末転倒です。識者からは「一見消費者の味方に見えて、実際には米価高止まりを後押しする」との批判が相次ぎ、税金4,000億円を投じてJAを救済するだけだという見方が広がっています。富士市長のように「米価を下げる対策こそが有効」と主張する声もあり、現金給付や減免措置の方がはるかに合理的です。

自治体の拒否と代替策の台頭

多くの自治体がおこめ券を不評とし、現金給付やプレミアム付き商品券、水道料金減免などに切り替えていますが、これこそが政策の失敗を物語っています。抽選方式の商品券ですら「税金を平等に配っていない」と非難されており、再分配の観点からも欠陥だらけです。特に大阪府の吉村洋文知事は国の「おこめ券」を拒否し、独自に子育て世帯の子どもや19〜22歳の若者限定で1万円相当の「お米電子クーポン」を配布すると発表しました。この「22歳以下限定」という方針は明らかに高齢者や中間層の生活苦を無視した差別的な選択であり、税金の不平等な使い分けを助長するものです。吉村知事は「おこめ券の手数料が12%かかるため活用しない」と説明していますが、こうした独自路線は全国的な政策の統一性を崩し、結果として物価高対策の効果をさらに薄めてしまう悪例にほかなりません。