日韓のワーキングホリデービザ拡充:首脳会談での合意と現状

日韓の首脳会談でワーキングホリデービザの拡充
日韓ワーキングホリデービザについて
日本における韓国人向けワーホリビザの詳細
韓国における日本人向けワーホリビザの詳細

日韓の首脳会談

2025年8月23日、日本の石破茂総理大臣は、訪日した韓国の李在明大統領と東京の首相官邸で首脳会談を行いました。この会談は、韓国の大統領が就任後初めて日本を訪問先として選んだ歴史的な出来事であり、日韓の「シャトル外交」の第1弾として位置づけられています。両首脳は、日韓関係を未来志向で安定的に発展させることで一致し、17年ぶりに共同文書を発表しました。

会談の主要な成果

会談では、両国間の協力強化に向けた複数の合意がなされました。特に注目すべきは、以下のポイントです

  • 北朝鮮問題での協力継続:北朝鮮の完全な非核化を目指し、日韓および日韓米の3か国で緊密な連携を続けることを確認しました。
  • 政策課題の協議体設立:少子高齢化、首都一極集中、農業、災害対策など、両国が共通して抱える課題に対応するため、政府間の協議枠組みを立ち上げることで合意しました。
  • 未来産業での協力:水素や人工知能(AI)など、未来志向の産業分野での協力を推進することで、両国の経済的シナジーを高める方向性を議論しました。
  • 人的交流の活性化:若年層の交流を促進するため、ワーキングホリデー制度の拡充が決定されました。

ワーキングホリデービザの拡充:日韓の若者交流を加速

今回の首脳会談の目玉の一つは、ワーキングホリデービザ(ワーホリビザ)の拡充です。この制度は、若者が相手国で働きながら最長1年間滞在できるもので、文化的交流や相互理解を深める重要な機会を提供します。従来、韓国とのワーホリビザは生涯で1回のみ取得可能でしたが、今回の合意により、2回まで取得可能に拡充されることが発表されました。

ワーホリビザ拡充の意義

ワーホリビザの拡充は、以下のような意義を持っています

  • 若者の交流促進:日韓の若者が互いの国で生活し、働く機会が増えることで、相互理解や友好関係が一層深まることが期待されます。
  • 人的ネットワークの強化:若い世代が直接的な文化体験を通じて絆を築くことで、長期的な日韓関係の基盤が強化されます。
  • 経済・社会への影響:ワーホリ参加者が現地で働くことで、観光やサービス業など地域経済への貢献も見込まれます。また、帰国後に得た経験を活かし、両国間のビジネスや文化交流の架け橋となる可能性があります。

ワーホリビザ拡充の背景

この拡充は、日韓両国が直面する共通の課題、例えば人口減少や少子高齢化への対応として、若年層の流動性を高め、国際的な視野を持った人材育成を目指す意図があります。また、2025年が日韓国交正常化60周年にあたる節目の年であることも、今回の決定の背景にあると考えられます。両首脳は、こうした取り組みを通じて、未来志向の日韓関係をさらに強固なものにすることを目指しています。

共同文書の発表と今後の展望

17年ぶりに発表された共同文書には、ワーホリビザの拡充に加え、両国が共同で取り組むべき課題についての協議体設立や、地域の平和と安定に向けた協力の強化が盛り込まれました。石破総理は「日韓の安定的な関係の発展は両国の利益となり、地域全体の利益にもつながる」と強調し、李大統領も「日本との関係を重要視している」と応じました。

今後の日韓協力の方向性

会談では、2025年10月に韓国・慶州で開催されるAPEC首脳会議や、日本で開催予定の韓日中首脳会議の成功に向けた協力も確認されました。これにより、日韓両国は国際舞台での連携を一層強化する方針です。また、歴史問題については具体的な議論が避けられたものの、未来志向の協力に焦点を当てた今回の会談は、両国関係の新たな一歩と評価されています。

この首脳会談とワーホリビザの拡充は、日韓の若者や社会に新たな可能性をもたらすと同時に、両国関係の未来を明るく照らす一歩となるでしょう。

日韓ワーキングホリデービザ:若者交流を促進する制度

ワーキングホリデー(ワーホリ)ビザは、日本と韓国の若者が相手国で最長1年間、観光を主目的に滞在しながら就労や語学学習を通じて文化交流を深めるための制度です。日韓間では1999年からこのプログラムが開始され、2025年10月から従来の「生涯1回のみ」の制限が緩和され、2回までの取得が可能となります。この変更は、日韓国交正常化60周年を記念し、両国間の友好関係と人的交流をさらに強化する目的で導入されました。

ワーホリビザの概要と目的

日韓ワーホリビザは、18~30歳(韓国では一部国籍で25歳まで、日本では30歳まで)の若者を対象に、相手国での生活体験を促進します。主な目的は観光ですが、滞在費を補うためのパートタイム就労や語学学習が許可されています。この制度により、両国の若者は文化や生活習慣を学び、相互理解を深める機会を得ています。2024年には約7,400人の韓国人が日本のワーホリビザを取得し、日本も韓国への渡航者数が増加傾向にあります。

2025年10月からの変更点:2回取得可能に

2025年8月23日の日韓首脳会談で、石破茂総理大臣と李在明大統領は、ワーホリビザの取得回数を1回から2回(連続または非連続で最大2年)に拡充することで合意しました。この変更は2025年10月から施行され、以下のメリットが期待されます

  • 交流機会の増加:若者が複数回にわたり相手国を訪れ、より深い文化理解や人的ネットワークの構築が可能となります。
  • 柔軟な渡航計画:一度の滞在で満足できなかった場合や、異なる時期に新たな目的で再挑戦できる柔軟性が加わります。
  • 地域経済への貢献:ワーホリ参加者が観光やサービス業で働くことで、両国の地域経済の活性化が期待されます。

日本における韓国人向けワーホリビザの詳細

韓国の若者が日本でワーホリビザを取得する場合、以下の条件と手続きが必要です。申請は居住国の日本大使館または総領事館で行います。

申請条件

  • 韓国国籍を持ち、申請時に韓国に居住していること。
  • 18~30歳であること(申請時)。
  • 扶養家族や子供を同行させないこと。
  • 有効なパスポートと往復航空券(または購入可能な資金)を持つこと。
  • 滞在初期の生活費を賄える資金を保有していること。
  • 健康であること、かつ過去に日本のワーホリビザを2回以上取得していないこと。

許可される活動と制限

日本のワーホリビザでは、パートタイム就労が許可されますが、バー、キャバレー、ナイトクラブ、ギャンブル施設など、公序良俗に反する場所での就労は禁止されています。違反した場合、移民管理法に基づく強制送還のリスクがあります。語学学習や文化体験も推奨され、滞在中の居住地登録(市区町村役場での住民登録)は到着後14日以内に行う必要があります。

韓国における日本人向けワーホリビザの詳細

日本の若者が韓国でワーホリビザ(H-1ビザ)を取得する場合、以下の条件が適用されます。申請は日本の韓国大使館または領事館で行います。

申請条件

  • 日本国籍を持ち、申請時に日本に居住していること。
  • 18~30歳(一部国では25歳まで)であること。
  • 扶養家族を同行させないこと。
  • 有効なパスポート(残存期間6カ月以上)と往復航空券(または購入資金)を持つこと。
  • 最低300万KRW(約30万円)以上の資金証明と、滞在期間中の健康保険加入証明を提出すること。
  • 犯罪歴がないこと、過去に韓国のワーホリビザを取得していない(2025年10月以降は2回まで可能)こと。

許可される活動と制限

韓国のH-1ビザでは、観光を主目的としつつ、ホスピタリティ、小売、観光業などでのパートタイム就労が可能です。ただし、医師、弁護士、パイロットなどの専門職や、外国語指導(E-2ビザが必要)、エンターテインメント業(ダンサー、歌手など)は禁止されています。語学コース(特に韓国語)の受講も許可されており、90日以上の滞在では外国人登録証(ARC)の取得が必要です。

日韓ワーホリビザの意義と展望

日韓ワーホリビザの拡充は、両国間の人的交流を強化し、若者に国際的な視野を提供する重要な一歩です。特に2025年は日韓国交正常化60周年にあたり、歴史的な課題を乗り越え、未来志向の関係構築が期待されています。以下の展望が注目されます

文化的・経済的影響

  • 相互理解の深化:若者が相手国の文化や生活を直接体験することで、偏見の解消や友好関係の強化につながります。
  • 人材育成:国際経験を積んだ若者が、帰国後にビジネスや文化交流の架け橋として活躍する可能性があります。
  • 地域活性化:ワーホリ参加者が地方で働くことで、観光業や地域経済の活性化に貢献します。

今後の展開

2025年10月の制度変更後、ワーホリビザの利用者数増加が見込まれます。日本は韓国を含む30カ国・地域とワーホリ協定を結んでおり、韓国は28カ国と協定を有しています。日韓両国は、APECや韓日中首脳会議での協力も通じて、さらなる交流拡大を目指しています。この制度は、若者に新たな可能性を提供し、日韓関係の未来を明るくする一歩となるでしょう。