ニデックが特別注意銘柄に指定:背景と今後の影響(上場廃止の可能性)

ニデックが特別注意銘柄に指定された背景

2025年10月27日、東京証券取引所(東証)は、電機メーカーのニデック(旧日本電産、証券コード:6594)を翌28日付で「特別注意銘柄」に指定すると発表しました。この指定は、海外子会社での不適切な会計処理が発覚し、内部管理体制に深刻な問題があると判断されたためです。精密小型モーターや光学機器などで世界的なシェアを持つ大手企業ですが、投資家からの信頼を大きく損なう事態となっています。

不適切会計処理の詳細

問題の発端は2025年6月、イタリア子会社での関税支払い不備の発覚です。これにより2025年3月期の有価証券報告書(有報)提出が延期され、社内調査が開始。中国子会社を含むグループ全体で類似の不適切会計処理の疑いが複数浮上し、経営陣の関与・認識を示唆する資料が9月3日に発見されました。

9月下旬にようやく提出した有報に対し、監査法人のPwCジャパンは「意見不表明」とする異例の判断を下しました。これは十分な監査証拠が得られなかったことを意味し、過年度決算の訂正の恐れも含めて適正な決算内容を開示できていない状態が続いていると東証が指摘しています。

特別注意銘柄指定の意味と影響

特別注意銘柄とは、東証が上場会社の内部管理体制や情報開示の改善を強く求めるための措置です。有報の虚偽記載や適時開示規定違反があった場合に指定され、指定された企業は原則1年以内に内部管理体制の整備・運用を改善する必要があります。審査の結果、適切でないと判断されれば監理銘柄指定を経て上場廃止となる可能性があり、過去には東芝やオリンパスなどの事例で指定されたケースがあります。

ニデックの場合、指定により株価の下落や資金調達の困難化が予想されます。日本経済新聞社は2025年11月5日以降、日経平均株価の構成銘柄からニデックを除外し、代わりに半導体関連のイビデンを追加することをことを決定。機関投資家保有比率が約3割弱のニデックにとって、年金資金などの運用担当者による売却圧力が高まる可能性が高いです。アナリストからは「社会的信用力の損失が企業価値の毀損を招く」との指摘もあり、事業への影響は軽微でも株主価値への打撃が大きいと見られています。

上場廃止に至る可能性とプロセス

現時点で上場廃止は確定していませんが、特別注意銘柄指定は上場廃止のリスクを現実的なものにしています。東証のルールでは、指定後1年経過後に内部管理体制の審査が行われ、適切に整備・運用されていない場合、監理銘柄へ移行します。さらに改善が見込めなければ、整理銘柄指定を経て上場廃止となります。場合によっては1年を待たず廃止の可能性もあります。

ニデックの場合、以下の要因が上場廃止リスクを高めています:

  • 監査意見の「意見不表明」継続:2026年3月期決算でも同様の判断となれば、2期連続で上場廃止基準に該当する可能性が高い。
  • 過年度決算の大幅訂正:第三者委員会調査で巨額の不正会計が判明した場合、投資家への影響が甚大となり、東証の判断が厳しくなる。
  • 改善計画の実行力不足:再発防止策やガバナンス改革が実効性に欠けると、審査で不合格となるリスク。

過去の事例では、東芝機械(現芝浦機械)やカネボウが不正会計で監理銘柄から上場廃止に至りました。ニデックは時価総額約7兆円規模の大企業ですが、東証は規模に関係なくルールを適用する姿勢を明確にしており、例外は認められません。市場関係者からは「2026年3月期の監査意見が鍵で、2期連続不表明なら廃止はほぼ確実」との厳しい見方が広がっています。

ニデックの対応と今後の見通し

ニデックは発表に対し、「第三者委員会の調査に全社を挙げて協力し、速やかな改善に努める」とコメント。10月23日には2026年3月期の業績予想を「未定」に変更しており、調査の長期化による不透明感を反映しています。日本取引所自主規制法人は情報開示に関する審査を継続し、新たな問題発覚時には追加措置を講じる方針です。

ニデックはハードディスクドライブ向けスピンドルモーターなどで高いシェアを維持しており、事業基盤自体は強固ですが、信用回復が急務です。投資家は第三者委員会の調査結果と改善計画の進捗を注視する必要があり、市場全体としてもコーポレートガバナンスの強化が求められる事態と言えます。