・ニデック、不適切な会計処理の疑いで第三者委員会を設置
・ニデック(NIDEC)の直近株価情報
ニデック、不適切な会計処理の疑いで第三者委員会を設置
モーター大手のニデック(旧日本電産、京都市)は、2025年9月3日、グループ内で不適切な会計処理が行われた疑いがあるとして、外部の専門家による第三者委員会を設置し、調査を開始したと発表しました。この問題は、子会社での不適切な会計処理の報告をきっかけに発覚し、ニデック本体およびグループ会社の経営陣の関与や認識が疑われる資料が複数見つかったことから、企業統治(ガバナンス)への懸念が高まっています。以下、詳細を解説します。
不適切会計処理の疑いの発端
2025年7月22日、ニデックの監査等委員会に対し、子会社であるニデックテクノモータの中国子会社「ニデックテクノモータ(浙江)有限公司」から、2024年9月下旬にサプライヤーからの値引きに相当する購買一時金(約2億円)に関する不適切な会計処理の疑いが報告されました。この事案(テクノ事案)を調査する過程で、ニデック本体および他のグループ会社においても、経営陣が関与または認識した上で不適切な会計処理が行われた可能性を示唆する資料が複数発見されました。具体的には、資産性にリスクのある資産の評価減の時期を恣意的に調整していたと解釈しうる内容が含まれています。
第三者委員会の設置と構成
ニデックは、社内調査の限界を考慮し、独立性と中立性を確保するため、2025年9月3日に第三者委員会を設置しました。この委員会は、日本弁護士連合会の「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠し、以下のメンバーで構成されています:
- 委員長:平尾覚弁護士(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業)
- 委員:井上寅喜公認会計士(アカウンティング・アドバイザリー)
- 委員:白井真弁護士(光和総合法律事務所)
調査の補助者として、西村あさひ法律事務所、EY新日本有限責任監査法人、光和総合法律事務所、アカウンティング・アドバイザリーが参加し、デジタルフォレンジックを含む徹底した調査が行われる予定です。
第三者委員会の調査内容
第三者委員会には、以下の4つの主要な調査事項が委嘱されています:
- 事実関係の調査:テクノ事案を含む、ニデックおよびグループ会社全体における不適切な会計処理の疑義に関する事実を解明する。
- 影響額の算定:不適切な会計処理が確認された場合、過去の決算に対する財務的影響額を算定する。
- 原因の究明:不適切な会計処理が発生した根本原因を特定する。
- 再発防止策の提言:実効性のある再発防止策を提案する。
なお、ニデックはイタリア子会社「NIDEC FIR INTERNATIONAL S.R.L.」に関する貿易取引上および関税上の問題を別途調査中ですが、この件は第三者委員会の調査対象外とされています。
市場への影響と株価の反応
不適切会計処理の疑いの発表を受け、ニデックの株価は大きな影響を受けました。2025年9月3日の発表後、9月4日の株式市場では一時ストップ安(前日比700円、22.43%安の2,420円)を記録し、4カ月半ぶりの安値を付けました。投資家の間では、事業面や業績面での影響の不透明感や、ガバナンス不備への懸念が広がっており、シティグループ証券のアナリストは「第三者委員会の調査結果が公表されるまで株価の上値は重い」と指摘しています。
背景と今後の課題
ニデックは、2025年6月にイタリア子会社での貿易取引上の問題を公表し、25年3月期の有価証券報告書の提出期限を9月26日まで延長していました。この延長申請の背景には、グループ全体での同様の問題の有無を調査する必要があったことが挙げられます。今回の新たな会計問題の発覚は、開示の信頼性や企業価値への影響を懸念する声につながっており、株主や投資家の信頼回復が急務となっています。ニデックは「株主や投資家、関係者に多大な心配と迷惑をかけていることを深くおわびする」とコメントし、第三者委員会の調査に全面的に協力する姿勢を示しています。
まとめ
ニデックは、子会社での不適切な会計処理の疑いをきっかけに、グループ全体での問題が発覚し、第三者委員会を設置して徹底調査に乗り出しました。経営陣の関与が疑われる資料の発見は、ガバナンス体制への懸念を高めており、調査結果の透明性と再発防止策の実効性が、信頼回復の鍵となります。今後、第三者委員会の調査進捗や結果が注目され、ニデックの企業価値や市場評価に大きな影響を与える可能性があります。
ニデック(NIDEC)の直近株価情報:2025年9月4日時点
ニデック(NIDEC、ティッカー:6594.T / NJDCY)は、モーター製造の世界的大手企業であり、その株価は市場動向や企業ニュースに敏感に反応します。2025年9月3日、不適切な会計処理の疑いに関する第三者委員会設置の発表を受け、株価は大幅な下落を見せました。以下では、2025年9月4日時点の株価動向を詳細に解説します。
東京証券取引所(6594.T)の株価動向
東京証券取引所(TYO)に上場するニデック(6594.T)の株価は、2025年9月4日の取引で以下の推移を示しました(日本円ベース):
- 終値:2,420円(前日比 -700円、-22.43%)
- 当日高値:2,870円
- 当日安値:2,420円(一時ストップ安)
- 前日終値:3,120円
- 52週高値:3,311円(2025年8月時点)
- 52週安値:1,862.50円(2024年10月時点)
この大幅な下落は、ニデックが子会社での不適切な会計処理の疑いを受けて第三者委員会を設置したとの発表が引き起こした投資家の懸念によるものです。特に、経営陣の関与が疑われる資料が発見されたことで、ガバナンス問題への警戒感が広がり、株価は4カ月半ぶりの安値を記録しました。
米国OTC市場(NJDCY)の株価動向
米国OTC市場で取引されるニデック(NJDCY)の株価は、以下の通りです(2025年9月3日終値、USDベース):
- 終値:4.92 USD(前日比 -0.34 USD、-6.46%)
- 当日オープン:5.19 USD
- 当日高値:5.24 USD
- 当日安値:4.89 USD
- 前日終値:5.26 USD
- 52週高値:5.62 USD
- 52週安値:3.18 USD
米国市場でも、第三者委員会設置のニュースが株価に影響を与え、終値は前日から6.46%下落しました。市場全体のセンチメントも、ニデックのガバナンス不信を反映しています。
最近の株価トレンドと背景
ニデックの株価は、2025年8月には比較的堅調で、8月18日時点で2,954.50円(USD換算で約5.45 USD)まで上昇していました。しかし、9月3日の不適切会計処理の発表後、株価は急落。特に東京市場では、9月4日に一時ストップ安となり、投資家の懸念が顕著に表れました。Xの投稿では、投資家が「永守会長の関与が疑われる中、株価の割安感がなく、東芝のような深刻な事態への懸念」を表明している声も見られました。過去1年間の株価は、2024年10月の1,862.50円を底に、8月まで回復傾向にありましたが、今回のニュースで再び下落圧力が高まっています。
市場への影響と今後の見通し
ニデックの時価総額は、2025年9月時点で約3.37兆円(USDで約195.9億ドル)と推定されますが、今回の下落で一時的に大きく縮小しました。アナリストからは、第三者委員会の調査結果が公表されるまで「株価の上値が重い」との指摘があり、ガバナンス問題の解消が信頼回復の鍵となります。次の決算発表は2025年10月27日を予定しており、調査の進捗や財務への影響が注目されます。投資家は、調査結果や再発防止策の具体性が株価の安定にどう影響するかを注視しています。
まとめ
ニデックの株価は、2025年9月4日時点で東京市場(6594.T)では2,420円(-22.43%)、米国OTC市場(NJDCY)では4.92 USD(-6.46%)と、第三者委員会設置の発表を受けて大幅に下落しました。不適切会計処理の疑いとガバナンスへの懸念が主因であり、調査の進捗や結果が今後の株価動向に大きな影響を与えると予想されます。投資家は、最新の市場データや企業発表を注視し、リスクを慎重に評価する必要があります。