・ミニストップの消費期限偽装問題
・コンビニエンスストアの消費期限偽装問題の事例
ミニストップの消費期限偽装問題
2025年8月18日、コンビニエンスストアチェーンのミニストップは、一部店舗において「手づくりおにぎり」や総菜、弁当の消費期限を偽装していたと発表しました。この不正行為は、東京、埼玉、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7都府県にある23店舗で確認され、店内調理商品の販売が全国約1,800店舗で一時中止される事態となりました。以下に、問題の詳細とその影響、対応策について解説します。
不正行為の内容
ミニストップの発表によると、不正行為は主に以下の2つの方法で行われていました
- ラベル貼付の遅延:店内厨房で製造した商品は、通常、製造後すぐに消費期限が記載されたラベルを貼付して販売されるべきです。しかし、一部の店舗では製造後1~2時間ラベルを貼らずに放置し、結果として消費期限を不当に延長していました。
- ラベルの貼り替え:一度陳列された商品に対し、消費期限を延長した新しいラベルを貼り直し、再度販売する行為が確認されました。これにより、本来廃棄されるべき商品が消費者に提供されていました。
これらの行為は、東京、埼玉、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7都府県の23店舗で確認され、特に関西地域(大阪、兵庫、京都)では16店舗が関与していました。
不正発覚の経緯
不正は、2025年6月にミニストップが委託する民間機関による店舗内の定期調査で発見されました。この調査で「二重ラベル」などの不適切な扱いが発覚し、調査範囲を拡大した結果、全国23店舗での同様の不正が明らかになりました。ミニストップはこれを「組織的な不正ではない」と説明していますが、問題の店舗数がさらに増える可能性も指摘されています。
ミニストップの対応と影響
ミニストップは、問題の重大性を受け、以下の対応を即座に実施しました
- 店内調理商品の販売中止:全国約1,800店舗で、店内調理の「手づくりおにぎり」「手づくり弁当」「店内加工惣菜」の販売を一時中止。なお、人気のソフトクリームは対象外です。
- 保健所への報告:不正が確認された23店舗について、速やかに保健所に報告し、改善対応を進めています。
- 調査と再発防止策:原因究明と再発防止策の策定を進め、調査が完了し全店での改善策が整うまで販売を再開しない方針です。
この販売中止は、ミニストップの店舗の約9割が提供する看板商品に影響を及ぼしており、企業にとって大きな打撃となっています。現時点で健康被害の報告は確認されていませんが、消費者の信頼を損なう重大な問題として注目されています。
背景と今後の課題
一部報道では、店内調理商品の高コストが背景にある可能性が指摘されています。廃棄コストを避けるため、消費期限を延長する不正が行われた可能性があり、店舗運営のプレッシャーや管理体制の不備が問題の要因として考えられます。ミニストップは「お客様にご不安とご心配をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪し、加盟店と本部が協働して安全・安心な商品提供を目指すとしています。
今後、ミニストップは全店舗での調査を進め、消費期限管理の徹底や従業員教育の強化など、再発防止策の具体化が求められます。消費者としては、信頼回復に向けた透明性のある対応が期待されます。
コンビニエンスストアの消費期限偽装問題の事例
日本のコンビニエンスストア業界では、消費期限や賞味期限の偽装および不適切な商品管理が報告されており、食の安全や消費者信頼に影響を与えています。以下では、ミニストップ、ローソン、ファミリーマート、セブン-イレブンの主な事例、問題の背景、業界全体の課題、消費者への影響、今後の展望を紹介します。
ミニストップ(2025年8月)
2025年8月、東京、埼玉、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7都府県の23店舗で、「手づくりおにぎり」や弁当、総菜の消費期限を偽装。製造後1~2時間ラベルを貼らずに放置、または消費期限を延長したラベルを貼り替えた。全国約1,800店舗で店内調理商品の販売を一時中止。健康被害は報告なし。
セブン-イレブン(2024年1月)
2024年1月、埼玉県の杉戸高野台店で、2023年11月下旬から消費期限切れの中華まんやおでんを販売。従業員の保健所通報で発覚し、販売自粛。抜き打ち検査で適正管理を確認。健康被害は報告なし。
ローソン(2019年2月)
2019年2月、埼玉県の三郷天神一丁目店および三郷彦糸店で、「まちかど厨房」商品(弁当・調理パン)の消費期限を7時間延長して販売。サーマルシールの貼り替えにより、三郷天神一丁目店では2016年7月から2年半、三郷彦糸店では2014年7月以降から2017年6月まで継続。両店舗は閉店、フランチャイズ契約解除。健康被害は報告なし。
ファミリーマート(2018年4月)
2018年4月、岡山県および広島県の159店舗で販売された「おむすび スーパー大麦枝豆こんぶ」(1,589個)に賞味期限切れのだし調味料を使用。販売期間は4月3日~4日。健康被害は報告なし、商品回収と返金対応を実施。
問題の背景
これらの偽装問題の背景には、以下の要因が挙げられます
- 廃棄コストの圧力:コンビニでは売れ残り商品の廃棄が日常的に発生し、フランチャイズ店舗にとって大きな負担。廃棄を避けるため、消費期限を延長する不正が行われる場合がある。
- 人手不足と管理不足:店舗運営の人手不足やスタッフ教育の不足が、不適切な商品管理を引き起こす。特にフランチャイズ店舗では、本部の管理が及ばないケースが存在。
- 競争の激化:コンビニ業界の競争が激しく、店舗ごとの利益確保が課題。不正行為の遠因となる場合がある。
業界全体の課題
コンビニ業界は以下の課題に直面しています
- 商品管理の徹底:消費期限の正確な管理やラベル貼付プロセスの標準化が不十分。店舗ごとの運用差が問題を悪化させる。
- フランチャイズ体制:本部と店舗間の管理体制の不一致や、フランチャイズオーナーの経済的プレッシャーが不正を誘発。
- 食品ロス問題:大量の廃棄を減らすための構造的な対策が不足。偽装は食品ロス回避の誤った手段として現れる。
消費者への影響と今後の展望
消費期限偽装は、消費者の食の安全に対する信頼を損ない、企業のブランドイメージを低下させます。健康被害は報告されていないものの、潜在的なリスクが懸念されます。消費者としては、購入時に消費期限を自身で確認し、不審な場合は店舗や保健所に報告することが推奨されます。今後、コンビニ業界はAIやIoTを活用した商品管理システムの導入、フランチャイズ契約の見直し、従業員教育の強化を進める必要があり、透明性のある対応で信頼回復が期待されます。