・メガソーラーの新規事業支援を2027年度以降廃止
・日本政府によるメガソーラーの過去の支援内容
政府、大規模太陽光発電(メガソーラー)の新規事業支援を2027年度以降廃止する方針
政府および自民党は、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)を中心とした地上設置型の事業用太陽光発電について、2027年度以降の新規事業に対する支援を廃止する方向で調整を進めています。この方針は、環境破壊や地域住民とのトラブルが相次いでいることを受けたもので、再生可能エネルギー政策の転換を示すものです。
支援廃止の対象
廃止の対象となるのは、主に以下の設備です。
- 出力1,000kW(1MW)以上の大規模太陽光発電所(メガソーラー)
- 出力10kW以上の地上設置型の事業用太陽光発電設備
これらの新規事業について、市場価格に一定額を上乗せするFIP制度(フィード・イン・プレミアム)による補助が適用されなくなります。既存の認定事業や既に稼働中の設備は影響を受けません。
廃止の主な理由
2012年に導入された固定価格買取制度(FIT)以降、太陽光発電は急速に拡大し、発電量全体に占める割合が約1割に達しました。しかし、以下の問題が顕在化しています。
- 山林伐採による土砂崩れや生態系への影響
- 景観破壊や希少動植物への被害
- 地域住民とのトラブル増加
また、太陽光パネルの設置コストが大幅に低下したため、補助金なしでも事業が成立する状況となっており、支援の役割が終了したと判断されています。
支援が継続される分野
一方で、環境負荷が比較的少ない以下の分野への支援は継続・強化されます。
- 建物の屋根に設置する事業用太陽光発電設備
- 家庭用太陽光発電設備
- 次世代型太陽電池(例: ペロブスカイト太陽電池)の開発・導入
政府はこれらを「地域共生型」の再生可能エネルギーとして位置づけ、普及を後押しする方針です。
併せて進められる規制強化
支援廃止と並行して、不適切な開発を防ぐための規制強化も予定されています。
- 環境影響評価(環境アセスメント)の対象拡大
- 電気事業法や森林法に基づく保安規制・林地開発許可の厳格化
- 地方自治体との連携強化や監視体制の構築
これにより、無秩序なメガソーラー開発に歯止めをかける狙いです。
政府は年内に関係閣僚会議で正式に方針を決定し、2026年初め頃に経済産業省の審議会で詳細を固める見通しです。この政策転換は、東日本大震災後の再生可能エネルギー普及策の見直しとして位置づけられています。
日本政府によるメガソーラーの過去の支援内容
メガソーラーとは、主に出力1MW以上の大規模太陽光発電施設を指し、日本政府は再生可能エネルギーの普及促進を目的として、2012年以降、主に固定価格買取制度(FIT)とフィード・イン・プレミアム制度(FIP)を通じて支援を行ってきました。これらの制度は、事業者の収益安定化を図ることで投資を促進し、太陽光発電の導入拡大に寄与しています。
FIT制度の概要と導入
2012年7月に開始されたFIT制度は、再生可能エネルギー源で発電した電力を、電力会社が一定期間固定価格で買い取ることを義務づける仕組みです。この制度の導入により、太陽光発電の累積導入量は急拡大し、制度開始前の約5GWから2017年頃には約48GWに達しました。
メガソーラーを含む事業用太陽光発電(10kW以上)に対する買取期間は20年間とされ、制度開始時の2012年度の買取価格は40円/kWh(税抜)でした。以降、年度ごとに価格は低下し、事業者の効率化を促す形となっています。
FIT制度下の買取価格推移
FIT制度の買取価格は、太陽光発電システムのコスト低下を反映して年々引き下げられました。主な推移は以下の通りです(事業用10kW以上、税抜)。
- 2012年度:40円/kWh
- 2013年度:36円/kWh
- 2014年度:32円/kWh
- 2015年度:29円/kWh(4月〜6月認定分)、27円/kWh(7月以降認定分)
- 2016年度:24円/kWh
- 2017年度:21円/kWh
- 2018年度:18円/kWh
なお、2019年度以降は大規模案件(500kW以上、当初は2MW以上)が入札制度に移行したため、一律の固定価格は適用されなくなりました。これらの価格設定は、事業が効率的に行われた場合の必要コストを基礎に、適正な利潤を考慮して決定されました。
FIP制度への移行
2022年度から、FIT制度は一部見直され、大規模設備を中心にFIP制度へ移行しました。FIP制度は、卸電力市場価格に一定のプレミアムを上乗せして収益を確保する仕組みで、市場統合を促進する目的があります。この制度は、一定規模以上の再生可能エネルギー設備を対象とし、メガソーラーなどの事業用太陽光発電が主な適用対象となっています。
FIP制度の導入により、事業者は市場価格の変動を考慮した運用が求められるようになり、FIT時代のような固定価格保証から柔軟な制度へ移行しました。小規模設備(住宅用など)は引き続きFITが適用されています。
支援の全体像と効果
これらの支援制度は、1974年のサンシャイン計画に遡る再生可能エネルギーの取り組みを基盤とし、2011年の東日本大震災後のエネルギー政策転換で本格化しました。FIT・FIPを通じて、メガソーラーの普及が加速し、2022年度時点で再生可能エネルギーの発電量比率は約21.7%に拡大しています。
政府はこれらの制度を通じて、環境負荷の低いエネルギー源の拡大を図ってきましたが、近年は支援の見直しが進んでおり、2027年度以降の新規メガソーラーに対するFIP支援廃止が検討されています。
