マクドナルド、紙ストロー廃止を発表!プラスチック資源循環促進法とは

マクドナルドの紙ストロー廃止発表について
プラスチック資源循環促進法とプラスチックストローへの回帰が難しい事情

日本マクドナルドの紙ストロー廃止発表について

日本マクドナルドは、2025年10月27日に公式サイトを更新し、紙ストローの提供を終了することを発表しました。この発表は、環境負荷の低減と顧客満足度の向上を両立させるための新たな取り組みとして注目を集めています。以下では、発表の詳細、背景、導入される新システム、そして消費者からの反応について詳しく解説します。

発表の詳細とスケジュール

日本マクドナルドによると、2025年11月19日より、コールドドリンク(紙カップ用)のフタを、リサイクルPET製のストローなしで飲めるフタ(以下、ストローレスリッド)に順次変更します。これにより、従来の紙ストローの提供は全国的に終了となります。この変更は、すでに一部店舗で試験的に実施されていたもので、2024年7月頃から埼玉県内の店舗でテストが進められていました。新フタの開発には3年以上を要し、バージンプラスチック削減の観点からリサイクル素材を採用しています。

背景:紙ストロー導入から廃止への経緯

日本マクドナルドは、2022年4月のプラスチック資源循環促進法施行を受けて、環境対応を強化してきました。同年10月からプラスチックストローを紙ストローへ、プラスチックカトラリーを木製カトラリーへ切り替え、2023年12月にはサイドサラダの容器を紙製に変更。これらの取り組みにより、年間約1350トンのプラスチック削減を実現していました。しかし、紙ストローは一部の消費者から「味が紙臭くなる」「柔らかくなって使いにくい」などの不満が相次ぎ、SNS上で批判が広がっていました。

これに対し、マクドナルドはストロー自体を廃止する方向へシフト。ストローレスリッドの導入は、米国や中国の店舗で先行事例があり、日本でも店舗オペレーションの効率化(廃棄作業の簡素化)とコスト削減につながると期待されています。ただし、ハッピーセット、マックシェイク、マックフィズ、マックフルートなどの一部商品では、引き続きストローを提供する予定です。

消費者反応:歓喜と不満の二極化

発表直後、X(旧Twitter)などのSNSでは「紙ストロー嫌いだった人々から歓喜の声」が上がりました。一方で、「ストロー自体がいらないわけじゃない」「プラ製ストローに戻してほしい」という不満も噴出。開発されたリサイクルPET製フタの素材をストローに応用できないのか、という疑問の声も見られます。この反応は、環境意識の高まりと利便性への欲求が交錯する現代の消費者心理を反映しています。

プラスチック資源循環促進法とプラスチックストローへの回帰が難しい事情

プラスチック資源循環促進法(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)は、2022年4月1日に施行された法律で、プラスチック廃棄物の削減と資源循環の促進を目的としています。日本マクドナルドの紙ストロー廃止は、この法律の枠組みの中で進むものですが、なぜプラスチックストローへの単純な回帰が難しいのか、その事情を法の概要と併せて詳しく紹介します。

プラスチック資源循環促進法の概要

この法律は、海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化への対応として、2019年に策定された「プラスチック資源循環戦略」を具体化するものです。基本原則は「3R+Renewable」(Reduce: 発生抑制、Reuse: 再利用、Recycle: リサイクル、Renewable: 再生可能資源への代替)で、プラスチック製品のライフサイクル全体(設計・製造・提供・廃棄)を対象とします。

特に、使い捨てプラスチック製品(ワンウェイプラスチック)の規制が厳しく、ストロー、スプーン、フォーク、袋、容器などの12品目が指定されています。年間5トン以上のプラスチックを使用する事業者(マクドナルドのような大手チェーンを含む)に対しては、以下の義務が課せられます:

  • 有料化や再利用の推進
  • 使用量削減目標の設定と計画的な実行
  • 環境配慮設計(リサイクル素材の使用など)
  • 罰則規定(違反時は行政指導や罰金)

施行以来、レジ袋有料化の延長線上で、飲食業界全体のプラスチック削減が進んでいます。

プラスチックストローへの回帰が難しい事情

紙ストロー廃止後も、プラスチックストローへの完全回帰は法的に難しく、以下のような事情があります。

  1. 法規制の厳格さ: 法はワンウェイプラスチックの使用合理化を義務づけ、ストローなどの特定品目で削減目標達成が求められます。プラスチックストローに戻せば、年間使用量5トン超の事業者として削減計画の修正が必要で、行政からの指導リスクが高まります。マクドナルドの場合、2022年の切り替えで900トン以上の削減を達成しており、逆行は環境目標に反します。
  2. 素材の制約とサーキュラーエコノミー推進: 法はバージンプラスチック(新規石油由来)の使用を抑制し、リサイクルPETやバイオマスプラスチックを推奨。ストローレスリッドがリサイクルPET製であるのは、この原則に沿ったものです。一方、従来のプラスチックストローはリサイクルしにくく(形状が複雑で分別が難しい)、法の「再資源化」要件を満たしません。仮にバイオマスプラスチックストローに移行しても、コスト増と供給不安定さが課題です。
  3. 消費者・事業者間のバランス: 紙ストロー不満は使用感の問題ですが、法は「Reduce」(ストロー自体の廃止)を優先。ストロー提供を有料化したり、持参を奨励する方向へシフト可能ですが、回帰は「海洋プラスチック汚染防止」の国際公約(SDGs目標14)と矛盾します。また、海外チェーンとしてのマクドナルドは、グローバルなサステナビリティ基準を遵守する必要があり、国内法を超えた自主目標(2025年末までに全容器を再生素材化)があります。
  4. 経済的・運用的なハードル: プラスチックストロー回帰は短期的な顧客満足向上につながるものの、調達コストや廃棄処理費の増大を招きます。法施行後、事業者は報告義務を負い、違反でイメージダウンも。代わりにストローレスリッドのようなイノベーションが、削減目標をクリアしつつ利便性を高める解決策として選ばれています。

結果として、マクドナルドの選択は法の精神を体現したもので、プラスチック依存からの脱却を象徴します。将来的には、ストロー不要文化の定着が期待されますが、消費者教育の重要性も指摘されています。