マイナ保険証に完全移行と資格確認書の話

マイナ保険証への完全移行とは
資格確認書の詳細

マイナ保険証への完全移行とは

2025年12月2日より、日本では従来の紙の健康保険証が完全に廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への移行が義務化されます。この移行は、医療制度のデジタル化を推進する厚生労働省の施策に基づくもので、医療機関での資格確認を効率化し、誤診や重複投薬を防ぐことを目的としています。移行により、患者の医療情報がオンラインで共有されやすくなり、利便性が向上しますが、準備不足による混乱を避けるための暫定措置も講じられています。

移行の背景とスケジュール

マイナ保険証の導入は、2021年頃から段階的に進められてきましたが、2024年12月2日からは新規の健康保険証発行が停止され、2025年12月2日を境に既存の保険証も使用不可となります。この日以降、医療機関の受付ではセルフ認証方式が標準化され、患者自身がカードリーダーでマイナンバーカードをかざすことで資格確認が行われます。厚生労働省の事務連絡(2024年11月12日付)により、移行期の混乱を防ぐための特例措置として、2026年3月31日まで従来の保険証や「資格情報のお知らせ」を提示すれば、通常の負担額で受診可能とされています。

必要な準備と手続き

マイナ保険証を利用するには、まずマイナンバーカードの取得と「保険証利用登録」が不可欠です。登録はマイナポータルサイト、セブン銀行ATM、またはコンビニのマルチコピー機で可能です。登録が完了すると、マイナンバーカードが健康保険証として機能します。利用率は2025年10月時点で約37%(オンライン資格確認利用件数に対する割合)と上昇傾向にありますが、未登録者のために健康保険組合から「資格確認書」が自動交付されます。この書類は、マイナ保険証の代替として医療機関で提示可能です。企業側では、入退社時の手続きに「資格確認書発行要否」の項目が追加されており、従業員への周知が推奨されています。

資格確認書の詳細

資格確認書は、マイナ保険証を保有していない方(マイナンバーカードの健康保険証利用登録をしていない方)すべてに、無償で申請を要さず交付される証明書です。この書類は、従来の健康保険証と同様に医療機関や薬局の窓口で提示することで、保険適用診療を受けられるように設計されています。内容としては、被保険者の氏名、生年月日、保険者名、被保険者番号、保険種類、負担割合などが記載されており、高額療養費制度の適用時にも使用可能です。ただし、マイナ保険証のようにオンラインでの自動資格確認は行われないため、医療機関によっては運転免許証やマイナンバー通知カードなどの本人確認書類の追加提示を求められる場合があります。

交付対象者は、2024年11月29日までに健康保険被保険者資格を取得し、2025年4月30日時点でマイナ保険証を利用していない方です。被扶養者分も被保険者宛に送付されますが、マイナ保険証利用者は発行されません。送付スケジュールは保険者により異なりますが、例えば協会けんぽの場合、2025年7月下旬から10月下旬にかけて被保険者の住所へ直接郵送されます。宛所不明などで不着となった場合は、事業所宛に再送付されます。後期高齢者医療制度の被保険者(75歳以上の方、または65歳以上75歳未満で一定の障害認定を受けた方)については、2026年7月末までの暫定措置として、マイナ保険証の保有状況にかかわらず無条件で交付されます。

一方、マイナンバーカードを保有していても受診が困難な配慮が必要な方(ご高齢者、障害をお持ちの方など)、またはカードの紛失・更新中の場合、加入する医療保険者に申請することで資格確認書を取得できます。申請は親族や介助者による代理申請も可能で、更新時は再申請が不要です。資格確認書は「資格情報のお知らせ」とは別の書類である点に注意してください。資格喪失時は同封の返信用封筒で返却を求められることがあります。詳細は加入保険者へお問い合わせください。

なお、マイナンバーカード自体の保有状況として、総務省の発表によると、2025年2月末時点での保有率は78%(約9,737万枚)となっており、まだマイナンバーカードを作成していない人の割合は約22%です。 これは、2025年1月末時点の保有率77.6%からも、着実な増加傾向を示しています。 マイナ保険証の完全移行に備え、未保有者は早急な申請を検討してください。

マイナ保険証のメリット

マイナ保険証の導入により、患者と医療機関双方に具体的な利点が生まれます。従来の保険証では手作業での入力が必要でしたが、マイナ保険証ではカードをかざすだけで氏名、生年月日、過去の受診歴が即座に確認可能となり、待ち時間を短縮します。また、電子お薬手帳との連携により、重複処方やアレルギー情報の共有が容易になり、安全性が高まります。高額療養費制度の自動適用も可能で、窓口負担の過剰支払いを防げます。利用者の声として、薬局では「患者の情報を漏れなくチェックできる」との評価が得られています。

医療現場での運用変化

2025年12月2日以降、医療機関の受付は「セルフ認証方式」へ移行します。患者はカードリーダーにマイナンバーカードを置き、顔認証や暗証番号で本人確認を行います。マイナ保険証未保有者や操作が困難な高齢者には、資格確認書やマイナポータルの資格情報画面が代替手段として認められます。国外転出者向けには、令和6年5月27日の法改正により「国外転出者向マイナンバーカード」の申請が可能となり、帰国時の受診に対応します。これにより、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速し、全体の効率化が図られます。

移行に伴う注意点と課題

完全移行の当日、マイナンバーカードセンターには申請者の列ができ、窓口が混雑する可能性があります。電子証明書の有効期限を確認し、失効前に更新を忘れずに行ってください。従来の保険証をお持ちの方は、2025年12月2日以降にハサミで切断して処分することを推奨します。また、マイナ保険証の利用が難しい場合、医療機関に事前相談を。移行率が半数以下にとどまる中、デジタルデバイド(情報格差)の懸念もありますが、資格確認書の交付により、誰もが保険診療を受けられる仕組みが整備されています。

今後の展望

この移行は、2025年12月2日を新たなスタートラインとし、データヘルス時代への第一歩です。利用率のさらなる向上とシステムの安定化が鍵となり、患者中心の医療環境が実現されるでしょう。ご自身の状況を確認し、早めの準備をおすすめします。