・京都府警が長崎の18歳男を不正アクセスで逮捕
・京都府警がネット関連逮捕を多く行う理由:歴史と組織的強み
京都府警が長崎の18歳男を不正アクセスで逮捕
2025年10月28日、京都府警察の下京署は、長崎県佐世保市在住のパート従業員の男(18)を、電子計算機使用詐欺および不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕しました。この事件は、ネット上で頻発するサイバー犯罪の一例として注目を集めています。以下で事件の概要と背景を詳しく解説します。
事件の経緯と容疑内容
逮捕容疑によると、容疑者の男は2025年1月6日から9日にかけ、他人のクレジットカード情報を悪用して任天堂のオンラインストアからゲームソフト7本(総額約2万6千円分)を不正購入したとされています。また、6月26日には、秘匿性の高い通信アプリ「Telegram」を通じて入手した他人のログインIDとパスワードを使用して、動画配信サービス「U-NEXT」に不正アクセスした疑いが持たれています。
男は取り調べに対し、「当時は無職でお金がなかった。間違いありません」と容疑を認めています。このような行為は、不正アクセス禁止法第3条(不正アクセス行為の禁止)に抵触し、電子計算機使用詐欺罪としても立件可能です。被害者は主に個人ユーザーで、カード情報やIDの漏洩がTelegramなどのダークウェブ的なコミュニティで取引されるケースが背景にあります。
捜査のきっかけと京都府警の役割
この事件の捜査は、被害者からの相談やオンラインストア側の不審取引検知から始まりました。京都府警下京署は、サイバー犯罪の専門部署と連携して、IPアドレスの追跡や通信ログの解析を行い、容疑者の特定に至りました。下京署は京都市中心部を管轄し、IT企業や大学が集積するエリアであるため、こうしたデジタル犯罪の初動捜査に適した署として機能しています。
この逮捕は、単なる個別事件ではなく、京都府警が全国規模でサイバー犯罪に積極的に取り組む姿勢を象徴するものです。次章で、その理由を深掘りします。
京都府警がネット関連逮捕を多く行う理由:歴史と組織的強み
京都府警は、サイバー犯罪やネット関連の逮捕事例を全国的に多く報じられる警察組織として知られています。2025年現在も、相談件数が過去最多を更新する中、逮捕件数も増加傾向にあります。なぜ京都府警がこれほど「ネット犯罪の掃除屋」として目立つのか、その背景には歴史的な事件、組織強化、地理的要因が絡み合っています。以下で詳しく紹介します。
歴史的背景:Winny事件がもたらした転機
京都府警のサイバー犯罪対策の基盤は、2000年代初頭のファイル共有ソフト関連事件に遡ります。特に、2004年に京都府警がP2Pファイル共有ソフト「Winny」の作者である金子勇氏を著作権法違反で逮捕した事件(通称:Winny事件)は象徴的です。この事件では、約40人の捜査員のうち10人を専従チームとして投入し、技術解析を徹底。作者逮捕に至りました(なお、後に無罪判決が確定)。
この成功(または注目度の高さ)により、「P2Pファイル共有関連の犯罪なら京都府警」という全国的な信頼(あるいは先駆者意識)が定着。他の都道府県警から事件の相談や連携が増え、京都府警が全国的なサイバー捜査のハブとなりました。また、2001年の「WinMX」利用者逮捕も早期の取り組みとして評価され、サイバー犯罪対策課の前身部署が1999年に設置されたことが、早期強化の基盤となりました。
さらに、2004年の京都府警内部での捜査書類漏洩事件(巡査の私物PCからインターネット流出)が逆説的に対策を加速。こうした自らの失敗を教訓に、技術投資を増やしました。これにより、京都府警は全国のサイバー事件の「受け皿」として機能するようになりました。
組織的強化:サイバー対策本部の新設と人員増強
京都府警の強みは、専用の組織体制にあります。2024年春に新設された「サイバー対策本部」は、生活安全部と警備部のサイバー部門を統合し、総勢102人(従来比約40人増)の規模で運用。24時間体制の監視・捜査が可能で、被害防止のための啓発活動も強化されています。
統計的に見ても、サイバー犯罪相談件数は急増:2018-2020年は年間3千件台でしたが、2021年に5千件超、2022年は5,808件、2023年は5,533件と過去最多を更新。2025年も同様のペースで推移しており、逮捕件数も比例して増加しています。例えば、2025年10月16日には、生成AIを使ったディープフェイク画像公開の疑いで男2人を逮捕(わいせつ電磁的記録媒体陳列罪)。また、2025年1月には神奈川県の高校生をクレジットカード不正取得で逮捕するなど、全国跨ぎの摘発が目立ちます。
この本部は、大学の研究室やIT企業との産学連携を積極的に推進。フィッシング詐欺や不正アクセスの解析ツール開発、国際合同捜査(例:フィリピンやタイとの連携)も行い、技術力の高さが逮捕率を支えています。
地理的・社会的要因:京都市のIT環境と全国ハブ機能
京都市は、京都大学をはじめとする教育・研究機関が多く、IT企業やスタートアップが集積するエリアです。これにより、サイバー犯罪の被害相談が地元から多く寄せられ、下京署や南署のような署に「サイバー対策係」が設置されるなど、地域密着型の捜査網が構築されています。2025年3月の人事異動では、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)対策として、これらの署を強化。
また、サイバー犯罪の性質上、管轄を超えた全国・国際捜査が可能であるため、京都府警は「相談先の定番」となっています。府民アンケートでは、3割がサイバー被害経験ありと回答する中、府警のX(旧Twitter)アカウントを通じた情報発信も、相談・逮捕の連鎖を促進しています。
これらの要因が相まって、京都府警はネット関連逮捕の「顔」としてメディア露出が増え、結果として「よく見かける」存在となっています。ただし、これは成功の証でもあり、サイバー空間の安全を守る上で欠かせない役割です。
今後の展望と注意喚起
京都府警の取り組みは、AI生成コンテンツ(ディープフェイク)や暗号通貨詐欺などの新手口にも対応を広げています。利用者側も、パスワード管理や2要素認証の徹底が重要です。相談窓口は京都府警サイバー対策本部で、被害防止のための情報提供を積極的に活用しましょう。
