国民民主党のSNS戦略:「こくみんクラブ」ポイント制度はステマに該当するのか?

国民民主党のSNS戦略:こくみんクラブとは?

国民民主党は、2025年10月15日に「こくみんクラブ」のベータ版を公開しました。このプラットフォームは、党の支持者やファンが党の活動を応援するためのツールとして設計されており、SNSを活用したインタラクティブな支援活動を促進するものです。主な目的は、支持者の活動を「可視化」し、党と支持者の一体感を高めることにあります。特に、2025年7月の参院選でSNS戦術において参政党に後れを取った教訓から、SNS戦略の強化を図る「お株奪還」策として位置づけられています。

こくみんクラブの概要と仕組み

こくみんクラブは、党の公式サイト上で運営されるプラットフォームです。支持者の活動を「部活動」に例え、党所属議員の各分野(例: 政策提言、選挙活動など)を「部」として設定。ユーザーはこれらの活動に参加することでポイントを獲得できます。ポイントは将来的にアイテム(例: 限定グッズやイベント招待)との交換が可能になる予定です。

  • 主な機能:
    • ミッション(課題)システム: 党が提示する具体的なタスクをクリアするとポイントが付与されます。例: 党公式Xアカウントのフォロー、演説動画の切り抜き作成と投稿、ポスティング活動など。
    • タイムライン: ユーザーの応援活動がリアルタイムで表示され、他の支持者と共有可能。
    • ランキング: ポイント獲得数に基づく順位表。ゲーム感覚で競争心を刺激し、モチベーションを向上させる。

この仕組みにより、支持者は単なる「観客」ではなく、党の「選手」として積極的に参加。党側は支持者の自主的なSNS拡散を促進し、党のメッセージを自然に広められるよう設計されています。玉木雄一郎代表は、「リアルとネットの活動を両立させ、党と有権者の距離を抜本的に変えたい」とコメントしています。

SNS戦略としての位置づけ

国民民主党のSNS戦略は、従来のトップダウン型プロモーションから、ボトムアップ型の支持者参加型へシフトしています。参院選でのSNS後れを取り戻すため、こくみんクラブは党公式X(旧Twitter)やYouTubeとの連携を強化。支持者が作成した切り抜き動画を党公式チャンネルでリポストするなどのフィードバックループを構築し、拡散力を高めています。このアプローチは、若年層やネットユーザーへのアピールを狙ったもので、党の政策(例: 「手取りを増やす」)を草の根レベルで浸透させる効果が期待されます。ただし、過度なネット依存が党の伝統的な支持基盤(労働組合など)を疎外するリスクも指摘されています。

ステマ(ステルスマーケティング)とは?基本的な定義と規制

ステマとは、ステルスマーケティングの略で、広告や宣伝であることを消費者に隠して行うマーケティング手法を指します。2023年10月1日から、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の改正により、ステマは「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」として規制対象となりました。これにより、消費者庁はステマ行為に対し、措置命令(表示の差し止め、再発防止策の策定)や公表を課すことが可能になりました。

ステマの種類と違反事例

ステマは主に2つのタイプに分類されます。

タイプ 説明 具体例
なりすまし型 事業者が第三者(一般ユーザーなど)を装って宣伝する。 企業アカウントが偽の個人アカウントを作成し、商品を絶賛する投稿を行う。
利益提供秘匿型 インフルエンサーやユーザーに金銭・物品などの利益を提供し、広告であることを明示せずに投稿させる。 インフルエンサーに商品を無償提供し、「#PR」表記なしで好印象のレビューを投稿させる。

違反した場合の罰則は、措置命令が主ですが、悪質なケースでは業務停止命令や課徴金納付(最大3億円)が適用される可能性があります。過去の事例として、2012年の「食べログ」クチコミ操作事件や、ディズニー映画「アナと雪の女王2」のインフルエンサー投稿炎上が挙げられ、ブランドイメージの低下を招きました。消費者庁のガイドラインでは、SNS投稿時の「#広告」「#PR」表記を推奨し、関係性の明示を義務づけています。

こくみんクラブのポイント制度はステマに該当するのか?

こくみんクラブのポイント制度は、支持者のSNS活動(例: 動画投稿)を奨励し、ポイントを付与する仕組みです。一見、利益提供型ステマに似ていますが、ステマ該当性については以下の観点から判断されます。結論として、適切に運用されていればステマには該当しにくいものの、運用次第でリスクが生じます。

該当する可能性のある要素とリスク分析

  • 利益提供の性質: ポイントは「アイテム交換可能」とされ、金銭的価値(例: グッズの経済的価値)を持つため、景品表示法の「利益提供」に該当する可能性があります。支持者が党の投稿を「自主的な意見」として拡散する場合、第三者視点で広告と判別しにくいと問題視される恐れがあります。
  • 対象者の特性: ユーザーは「支持者・ファン」限定で、プラットフォーム登録時に党との関係が明示されるため、なりすまし型ステマには該当しません。ただし、SNS投稿が党外の一般ユーザーに見える場合、「党の指示による宣伝」と誤認されるリスクがあります。
  • 明示義務の有無: 投稿時に「こくみんクラブ参加」や「#国民民主党応援」などのハッシュタグを義務づけていれば、関係性が明確になりステマ回避可能です。

全体として、こくみんクラブは「政治活動の支援プラットフォーム」として位置づけられ、商業広告ではなく政治的表現の範疇です。景品表示法は主に事業者(企業)の商品・サービスを対象とするため、政治団体への適用はグレーゾーンですが、消費者庁のステマ規制は「消費者選択の歪み」を防ぐ観点から、党の政策宣伝も類似リスクを抱えます。将来的な交換アイテムの価値次第で規制強化の可能性があります。

ステマ該当を避けるための提言

国民民主党は、以下の対策でリスクを低減すべきです。

  1. 投稿ガイドラインの明確化: すべてのミッション投稿に「#こくみんクラブ」「#国民民主党支援」表記を必須とし、広告性・関係性を明示。
  2. 透明性の確保: プラットフォーム上でポイントの価値と交換ルールを公開。政治資金規正法との連動も考慮。
  3. 第三者監査: 消費者庁ガイドラインに基づき、定期的に運用をレビュー。支持者教育として、ステマ規制の周知を。

これにより、こくみんクラブは革新的なSNS戦略として機能しつつ、法令遵守を維持できます。党の成長戦略として注目される一方、倫理的・法的バランスが鍵となります。