維新議員の「国保逃れ」疑惑とは?一般社団法人を利用したスキームの手口と問題点

日本維新の会所属議員の国民健康保険支払い逃れ疑惑の概要
一般社団法人を利用した「国保逃れ」の仕組みとカラクリ

日本維新の会所属議員の国民健康保険支払い逃れ疑惑の概要

日本維新の会所属の地方議員が、一般社団法人の理事に就任することで国民健康保険(国保)の高額な保険料支払いを回避し、社会保険に切り替えて最低水準の保険料のみを負担していた疑いが浮上しています。この手法は、議員報酬を維持しつつ保険料負担を軽減する脱法的なスキームと指摘されており、党内で調査が進められています。

疑惑の対象となった議員

主に兵庫県議会議員団に所属する赤石理生氏と長崎寛親氏が挙げられています。彼らは一般社団法人の理事に就任し、一定の報酬を得ながら国保の高額負担を避けていたとされています。

手法の詳細

議員は一般社団法人の理事として登録され、社会保険に加入することで国保の支払いを免れ、最低水準の社会保険料のみを払う形を取っていました。このスキームは、場合によっては80万円から100万円近い負担軽減につながるとの指摘がありますが、理事としての実態や業務の有無が不明瞭である点が問題視されています。

疑惑の発端と経緯

この疑惑は、2025年12月10日の大阪府議会本会議で自民党の占部走馬府議が追及したことがきっかけとなりました。占部氏は、維新の議員が関与する社団法人を利用した国保回避の手法を指摘し、代表理事が維新の衆院議員の元秘書である点も挙げました。これを受けて、日本維新の会の吉村洋文代表は党内調査を指示しました。

党の対応

日本維新の会は、指摘を受けた一部の地方議員に対する聞き取り調査を開始しました。党所属の兵庫県議らを対象に事実確認を進めていますが、現時点で詳細な調査結果は公表されていません。

関連する指摘と反応

この手法は、国民に高額な国保料を押しつけながら議員自身が負担を逃れる矛盾として批判されています。元大阪市長の橋下徹氏は、事実であれば「禁止ルールがなければ適法」という感覚が組織に浸透している可能性を指摘しました。また、社団法人の理事が660人に上るケースも報じられ、組織的な関与が疑われています。

背景と社会的影響

日本維新の会は、社会保険料の引き下げを政策に掲げており、自民党との連立合意にも現役世代の負担軽減が含まれます。しかし、この疑惑は党の主張と議員の行動の不整合を露呈する形となりました。国民健康保険制度は、フリーランスや自営業者を中心に負担が重く、維新の議員がこうした制度の抜け穴を利用していた可能性が、信頼性に影響を及ぼしています。


では、今回問題となっている「一般社団法人スキーム」とは、具体的にどのような仕組みなのか。なぜこれほど大幅な負担減が可能になるのか、その手口の概要を解説します。

一般社団法人を利用した「国保逃れ」の仕組みとカラクリ

一般社団法人を活用した保険料削減とは、主に個人事業主やフリーランス(今回のケースでは議員)が一般社団法人の理事や職員に就任することで、国民健康保険(国保)から社会保険(健康保険・厚生年金)に切り替え、保険料負担を劇的に減らす手法です。制度のグレーゾーンを突いた手法として、以前から問題視されていました。

対象となりやすい層

主に国保に加入する高所得の個人事業主や議員などが対象です。これらの人々は所得に応じた高額な国保料(年間最大100万円程度)を負担することが多く、社会保険への切り替えによる負担軽減を狙う動機が生じます。

基本的なカラクリ

一般社団法人の理事に就任し、法人から「役員報酬」を受け取る形を取ります。社会保険料は「報酬額」に基づいて決まるため、報酬を極端に低く設定(例:月額数千円〜1万円程度)することで、保険料を最低等級に抑え込みます。

実行されるステップ

この手法が実行される際の一般的な流れは以下の通りです。

  • ステップ1: 一般社団法人の用意
    既存の一般社団法人に理事として名前だけ貸すか、自ら法人を設立します。今回の疑惑では、多数の理事が登録された既存法人への加入が指摘されています。
  • ステップ2: 理事就任と低額報酬の設定
    形式上の理事に就任し、社会保険加入要件を満たすギリギリの役員報酬を受け取る契約を結びます。
  • ステップ3: 社会保険への切り替え
    これにより、高額な国保から脱退し、安価な社会保険へ移行します。実態としての勤務実態がほとんどないケースが多く、これが「偽装」とされる所以です。

なぜ行われるのか(動機とリスク)

この手法には明確な「金銭的動機」と「法的リスク」が存在します。

  • 金銭的メリット(動機)
    国保の年間上限額(約100万円)の支払いを回避し、年間数万円〜十数万円程度の負担で済むため、手元に残るお金が大幅に増えます。
  • 法的・倫理的リスク
    保険料削減のみを目的とした理事就任は、実態を伴わない場合、制度の趣旨に反する脱法的な行為とみなされます。今回のケースのように公になると社会的信用を失うほか、遡って保険料を徴収されるリスクがあります。