・米コダック、事業停止の危機
・近年のコダック(KODK)株価の動向
米コダック、事業停止の危機
創業133年を誇る写真業界の巨人、イーストマン・コダックが、2025年8月11日の決算報告で重大な財務危機を公表しました。約5億ドル(約740億円)に上る債務の返済に必要な「確約された融資や利用可能な流動性」が不足していると発表し、企業としての継続能力に「重大な疑義」が生じていると述べています。このニュースは、写真フィルムやカメラで一時代を築いた同社の存続に暗い影を落としています。
財務危機の背景
コダックの広報担当者は8月12日、CNNに対し、期日前に融資の大部分を返済し、残りの債務や優先株債務を修正・延長、または借り換えできるとの見解を示しました。しかし、同日正午には株価が25%以上急落するなど、市場の反応は厳しいものでした。コダックは現在、退職年金制度への支払いを停止することで現金を確保しようとしていますが、これが長期的な解決策になるかどうかは不透明です。
コダックの栄光と衰退
コダックは1884年にジョージ・イーストマンによって設立され、写真フィルムの分野で圧倒的な地位を築きました。1970年代には米国でのフィルム販売の90%、カメラ販売の85%を占めるほどの成功を収めました。スローガン「あなたはシャッターを押すだけ、あとはわれわれにお任せください」は、写真を一般に普及させた象徴的な言葉です。しかし、1975年に世界初のデジタルカメラを開発した同社自身が、デジタル技術の台頭に対応できず、2012年に連邦破産法第11条の適用を申請。債権者数は10万人、負債総額は67億5000万ドルに達しました。
事業の多角化と新たな挑戦
2012年の破産後、コダックは事業の軸足を医薬品原料生産や先端素材、化学製品の製造に移し、2020年には株価が急上昇しました。また、映画業界向けのフィルム製造や消費者向け製品のブランドライセンス供与も継続しています。特に、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』など、ハリウッド映画でのフィルム需要が堅調で、2024年11月にはニューヨーク州ロチェスター工場のフィルム生産ラインを一時停止し、近代化を図る計画を発表。CEOのジム・コンティネンザ氏は、フィルム需要の増加に対応するため設備投資を続けると表明しています。
今後の展望と課題
コダックはフィルム生産の一時停止に際し、在庫を積み増すことで供給への影響を最小限に抑えるとしていますが、市場では一時的な品薄や価格変動が懸念されています。 また、2024年2月には約40億ドル(約6000億円)の年金投資運用チームを解散し、資産管理を外部に移管するなど、財務体質の改善に取り組んでいます。 しかし、現在の債務問題が解決しなければ、事業継続がさらに困難になる可能性があります。コダックの今後の動向は、写真業界だけでなく、製造業全体にとっても注目すべき課題です。
まとめ
イーストマン・コダックは、歴史的な成功を収めた企業でありながら、デジタル化の波に乗れず、さらには現在の財務危機に直面しています。フィルム事業の需要は依然として存在するものの、債務返済の不透明さが事業停止のリスクを高めています。設備の近代化や事業多角化による再起を模索するコダックが、この危機を乗り越えられるかどうかに注目が集まっています。
近年のコダック(KODK)株価の動向
イーストマン・コダック(NYSE: KODK)の株価は、近年の事業再編や市場環境の変化により変動が続いています。以下では、2024年から2025年8月までの株価の推移とその背景を、最新の金融データに基づいて解説します。
2024年の株価推移
2024年、KODKの株価は年初の約5.28ドルからスタートし、2月に52週高値の8.24ドルを記録しました。その後、市場の変動や業績懸念により、11月には4.26ドルの52週安値を付けました。年末にかけて株価は回復し、12月には6.57ドルで取引を終えました。この期間、映画業界向けフィルム需要の堅調さや年金資産の活用策が株価を一時的に押し上げましたが、デジタル印刷や化学事業の成長鈍化が懸念されました。
2025年の株価動向
2025年に入ると、KODKの株価は1月に7.39ドルまで上昇しましたが、2月以降は徐々に下落。8月13日時点で、最新の株価は5.675ドル(前日終値5.43ドル、1日高値5.685ドル、安値5.108ドル)となっています。特に、8月12日に発表された2025年第2四半期決算では、売上高が前年比1%減の2億6300万ドル、純損失を計上し、約5億ドルの債務返済に関する懸念が浮上。これが引き金となり、株価は同日中に25.66%下落し、一時5.04ドルまで急落しました。
事業停止の危機と株価への影響
2025年8月11日の決算報告で、コダックは「継続企業の前提(going concern)」に重大な疑義があると公表しました。約5億ドルの債務返済に必要な資金調達が不確実であることが主因で、市場はこれをネガティブに受け止め、株価は急落しました。しかし、広報担当者はCNNに対し、融資の返済や借り換えに自信を示しており、短期的な現金確保策として退職年金制度への支払い停止を決定。株価は8月13日時点でやや回復し、5.675ドルで取引されていますが、依然として不安定な状況です。
財務指標と市場評価
現在のKODKの時価総額は約5億4768万ドルで、株価収益率(P/E比率)はデータ不足により算出不能(最新データでは14.39〜14.82の範囲で推移)。配当利回りは提供されておらず、配当は実施されていません。ベータ値0.90は市場全体に対する変動性が比較的低いことを示しますが、短期売りの割合(12.93%)は投資家の慎重な姿勢を反映しています。2025年第1四半期の売上は2億4700万ドル(前年比-0.8%)、純損失700万ドルを記録し、収益性の課題が続いています。
まとめ
コダックの株価は2024年に一時的な上昇を見せたものの、2025年には財務危機の懸念から大きく下落。特に8月の決算発表後、事業停止リスクが表面化したことで市場の信頼が揺らぎました。フィルム事業や化学製品での需要は残るものの、債務問題の解決が株価回復の鍵となります。投資家は今後の資金調達や事業再編の進展を注視する必要があります。