健保組合47.9%が赤字、健康保険組合とは?国民健康保険との違い

健保組合47.9%が赤字
健康保険組合とは?国民健康保険との関係性
国保と健保の違い:負担先と制度の仕組み

健保組合47.9%が赤字 高齢者医療支援の負担増のニュース

2025年9月25日、健康保険組合連合会(健保連)が発表した最新のデータによると、大企業の社員らが加入する全国の健康保険組合の財政状況が厳しさを増しています。このニュースは、医療制度の持続可能性をめぐる課題を浮き彫りにするもので、現役世代の負担増大が懸念されています。以下で詳しく解説します。

発表の概要と赤字組合の割合

全国1378の健康保険組合のうち、2024年度の決算見込みで47.9%に相当する660組合が赤字となる見通しです。これは前年度の52.6%から約4.7ポイント改善した数字ですが、それでも半数近くの組合が赤字に陥る状況は深刻です。全体の収支は、賃上げによる保険料収入の増加により145億円の黒字を計上する見込みで、2年ぶりの黒字転換となりました。

赤字の主な要因:高齢者医療支援拠出金の増加

赤字の最大の要因は、高齢者の医療費を支援するための拠出金の増加です。少子高齢化の進行に伴い、75歳以上の後期高齢者の医療費が急増しており、現役世代の健康保険組合がこれを支える負担が重くなっています。健保連のデータでは、この拠出金が組合の義務的経費(給付費と拠出金)の大きな割合を占め、財政を圧迫しています。

例えば、2023年度の全国医療費は約48兆円に上り、前年度比2.9%増となりました。特に後期高齢者の医療費は全体の38.8%を占め、2010年度比で46.2%も増加しています。このような医療費の高騰が、健保組合の赤字を招く背景となっています。

保険料率の推移と今後の影響

平均保険料率は月収の9.31%となり、前年度から0.04ポイント上昇して過去最高を更新しました。保険料率が10%を超える組合も増えており、一部の組合では解散を検討する動きも見られます。解散した場合、主に中小企業向けの協会けんぽへの移行が選択肢となりますが、従業員の健康維持のための独自施策が難しくなる可能性があります。

この負担増は、現役世代の可処分所得を圧迫し、賃上げの効果を相殺する恐れがあります。将来的には、医療費抑制策や制度改革が急務となるでしょう。

背景:医療費増加の構造的要因

医療費増加の背景には、高齢化の加速と医療の高度化があります。団塊の世代が75歳以上となり、薬剤の高額化も進んでいます。国民1人あたりの負担額は2022年度で37万3700円と、10年前比で約6万6000円増加しており、このトレンドは今後も継続する見込みです。

健保連は、組合の財政改善に向けた健康増進施策の推進を呼びかけており、人間ドック補助や生活習慣病予防などの取り組みが重要視されています。

このニュースは、日本の公的医療制度の持続可能性を問うものであり、国民一人ひとりが健康管理に取り組むきっかけとなるでしょう。詳細は健保連の公式発表をご確認ください。

健康保険組合とは?国民健康保険との関係

健康保険組合(健保組合)や国民健康保険(国保)について、初めて耳にする方やその違いがよくわからない方のために、以下でわかりやすく解説します。また、健保組合と国民健康保険料の関係についても触れます。

健康保険組合とは

健康保険組合は、主に大企業や同業種の企業が従業員とその家族のために設立する健康保険の運営組織です。日本の公的医療保険制度の一翼を担い、加入者に医療費の補助や健康増進のためのサービスを提供します。以下のような特徴があります

  • 加入対象:主に大企業の正社員やその家族。企業や業界ごとに設立され、例えば「○○株式会社健康保険組合」や「○○業界健康保険組合」などがあります。
  • 運営:企業や従業員が支払う保険料で運営され、保険料率は組合ごとに異なります(平均で月収の約9.3%、2024年度時点)。
  • サービス:医療費の自己負担軽減(通常3割負担)だけでなく、健康診断の補助、フィットネス施設の割引、独自の給付金(出産手当金や傷病手当金など)を提供する組合も多いです。
  • 高齢者医療への拠出:健保組合は、75歳以上の後期高齢者医療制度を支えるための拠出金を負担しています。これが最近の赤字要因の一つです。

全国に約1378の健保組合があり(2024年度時点)、約3000万人が加入しています。主に現役世代のサラリーマン世帯が対象で、保険料は労使折半(企業と従業員が半分ずつ負担)です。

国民健康保険とは

国民健康保険(国保)は、主に自営業者、フリーランス、農林水産業従事者、退職者など、健保組合や他の職域保険(公務員の共済保険など)に加入していない人を対象とした公的医療保険です。以下のような特徴があります

  • 加入対象:健保組合や他の保険に加入していない日本に住む全ての人(75歳未満)。市区町村が運営し、個人単位で加入します。
  • 保険料:世帯の所得や人数、住む地域によって異なり、保険料は全額自己負担(企業負担なし)。地域差が大きく、都市部では高額になる場合も。
  • サービス:医療費の自己負担軽減(通常3割負担)や高額療養費制度など、健保組合と同様の基本的な医療保障を提供。ただし、独自の健康増進サービスは限定的。

国保は「最後のセーフティネット」とも呼ばれ、誰でも加入できる点が特徴です。約3500万人が加入しています(2023年度時点)。

健保組合と国民健康保険料の関係

健保組合と国民健康保険料は直接的には関係ありませんが、以下のような間接的なつながりがあります

  1. 制度の分離:健保組合と国保は別々の保険制度で、保険料の計算や運営も独立しています。健保組合に加入している人は国保に加入する必要がなく、逆に国保加入者は健保組合の保険料を払いません。
  2. 高齢者医療への拠出:健保組合も国保も、75歳以上の後期高齢者医療制度を支えるための拠出金を負担しています。健保組合の拠出金負担が大きいため、財政難に陥る組合が増えています。この負担は間接的に国保の財政にも影響を与える可能性があります(国の補助金などで調整されるため)。
  3. 健保組合の解散時:健保組合が赤字で解散する場合、加入者は協会けんぽ(中小企業向けの健康保険)や国保に移行します。この場合、国保の加入者数や財政に影響が出ることがあります。

ただし、健保組合の保険料率(例:9.31%)と国保の保険料(地域や所得で異なる)は計算方法が異なるため、直接比較はできません。健保組合の赤字問題が国保の保険料を直接引き上げるわけではありませんが、医療費全体の増加は国保の保険料にも影響を与える可能性があります。

なぜ健保組合の赤字が問題になるのか

健保組合の47.9%が赤字(2024年度見込み)というニュースは、現役世代の保険料負担が増加する可能性を示しています。特に高齢者医療の拠出金が増える中、組合の財政難は保険料率の上昇や福利厚生の縮小につながる恐れがあります。一方、国保加入者はこの影響を直接受けませんが、医療費全体の高騰は国保の保険料にも波及する可能性があります。

結論として、健保組合と国保は別々の制度ですが、高齢化による医療費の増加という共通の課題を抱えており、両者の財政状況は日本の医療保障制度全体の持続可能性に関わっています。詳細な情報は、健康保険組合連合会(健保連)や厚生労働省の公式サイトで確認できます。

国保と健保の違い:負担先と制度の仕組み

日本の公的医療保険では、自営業者(国民健康保険:国保)でも会社員(健康保険組合:健保)でも、病院での医療費の自己負担が原則3割である点は同じです。しかし、「国保」と「健保」が別々の制度である理由や、なぜ「負担先が違う」と言えるのかがわかりにくいですよね。以下で、負担先の観点を中心に、わかりやすく解説します。

国保と健保の基本的な違い

国保と健保は、日本の公的医療保険制度の中で異なる役割を果たす、別々の「保険プール」です。それぞれの加入者や運営主体、保険料の支払い先(負担先)が異なります。ポイントを以下にまとめます

  • 国民健康保険(国保):自営業者、フリーランス、退職者、無職の人など、健保や他の職域保険に加入していない人が対象。市区町村が運営し、保険料は世帯単位で市区町村に支払います。
  • 健康保険組合(健保):主に大企業の会社員やその家族が加入。企業や業界ごとに設立された健康保険組合が運営し、保険料は企業と従業員が折半で組合に支払います。

どちらも「公的医療保険」なので、病院での自己負担は原則3割(70歳未満の場合)で統一されていますが、保険料の集め方や管理する組織が異なるため「別々の制度」とされています。

「負担先が違う」の意味

「負担先」とは、保険料を支払う先や、医療費の残り7割を誰がカバーするのかという点で考えるとわかりやすいです。以下で詳しく説明します

  1. 保険料の支払い先
    • 国保:保険料は市区町村に支払います。保険料は所得や世帯人数、地域によって異なり、全額自己負担(企業負担なし)。例えば、フリーランスの人が渋谷区に住んでいる場合、渋谷区役所に国保の保険料を納めます。
    • 健保:保険料は健康保険組合に支払います。企業と従業員が半分ずつ負担し、給料から天引きされることが一般的です。例えば、トヨタ自動車の社員なら「トヨタ自動車健康保険組合」に保険料を納めます。
  2. 医療費の7割の負担先

    病院でかかった医療費の3割を自分で払い、残り7割は保険制度がカバーしますが、この7割を誰が支払うのかも異なります。

    • 国保:市区町村が運営する国保の財源(加入者の保険料+国や自治体の補助金)から、病院やクリニックに7割が支払われます。
    • 健保:健康保険組合の財源(企業と従業員の保険料)から7割が支払われます。組合によっては、独自の健康増進プログラムや追加給付(例えば、医療費の還付や出産手当金)を提供する場合もあります。

つまり、国保は市区町村、健保は健康保険組合が、それぞれ保険料を集め、医療費の7割を病院に支払う役割を果たします。この「負担先」の違いが、2つの制度が別々に存在する理由です。

なぜ別々の制度なのか?

国保と健保が別れているのは、歴史的・社会的な背景があります

  • 加入者の違い:会社員は安定した収入があり、企業が保険料を半分負担できるため、健保組合が効率的に運営できます。一方、自営業者やフリーランスは収入が不安定な場合が多く、企業負担がないため、国保は市区町村が運営し、国や自治体の補助金で支えています。
  • 財政の独立性:健保組合は、企業ごとの加入者の健康状態や給与水準に応じて保険料を設定し、独自のサービス(健康診断補助など)を提供できます。国保は、地域全体でリスクを分散し、誰でも加入できる「セーフティネット」としての役割を果たします。
  • 高齢者医療への拠出:どちらも75歳以上の後期高齢者医療制度を支える拠出金を負担しますが、健保組合の方が現役世代の加入者が多いため、拠出金の負担が重く、最近の赤字問題の原因となっています。国保も拠出金を負担しますが、国の補助金で一部カバーされています。

病院での3割負担が同じ理由

国保も健保も、日本の「国民皆保険制度」の一部であり、国民が等しく医療を受けられるよう、自己負担率(3割など)は法律で統一されています。これは、どの保険に加入していても、病院での治療の公平性を保つためです。ただし、保険料の額や支払い先、追加サービスの有無は異なります。

具体例で考える

例えば、Aさん(自営業、国保加入)とBさん(会社員、健保加入)が同じ病院で1万円の治療を受けた場合:

  • Aさん:3,000円を病院で払い、残り7,000円は国保(市区町村)が病院に支払う。Aさんの保険料は市区町村に納めている。
  • Bさん:3,000円を病院で払い、残り7,000円は健保組合が病院に支払う。Bさんの保険料は給料から天引きされ、企業と折半で健保組合に納めている。

病院での支払いは同じですが、裏側の「7割を誰がどうやって払うか」と「保険料をどこに納めるか」が異なります。

国保と健保のつながり

直接的には別々の制度ですが、以下のような間接的な関係があります:

  • 高齢者医療の負担:両者とも後期高齢者医療制度の拠出金を負担するため、医療費の高騰はどちらにも影響します。健保組合の赤字問題は、拠出金の重さが原因ですが、国保も同様の圧力を感じる可能性があります。
  • 健保解散時の影響:健保組合が赤字で解散すると、加入者は国保や協会けんぽに移行する場合があり、国保の加入者数や財政に影響が出ることもあります。

まとめ

国保と健保は、保険料を支払う先(負担先)と運営主体が異なり、加入者の職業やライフスタイルに応じて設計された別々の制度です。病院での3割負担は同じでも、保険料の計算方法や支払い先、提供されるサービスが異なります。健保は企業と従業員が支える「会社員向け」の保険、国保は市区町村が運営する「それ以外の人のための」保険と考えればわかりやすいでしょう。どちらも高齢化による医療費増加の影響を受けますが、直接的に保険料が連動するわけではありません。