韓国の深刻化する人口減少の背景、釜山も「消滅の危機」?

韓国第2の都市・釜山が「消滅の危機」?深刻化する人口減少とその背景

韓国南東部に位置する釜山(プサン)は、韓国最大の港湾都市であり、ソウルに次ぐ第2の都市として知られています。美しいビーチ、国際市場、釜山タワーなど観光地としても人気のこの都市が、近年「消滅の危機」に瀕しているという衝撃的なニュースが報じられています。人口減少や高齢化、経済の停滞など、複数の要因が絡み合い、釜山の未来に暗い影を落としています。この記事では、釜山が直面する課題とその背景について詳しく解説します。

人口減少と高齢化の加速

釜山の人口は、1995年の約388万人から2020年には約339万人へと大幅に減少しました。過去30年間で50万人以上が減少し、特に若者の流出が顕著です。18~34歳の若年層人口は2015年の約74万人から2021年には約69万人にまで落ち込み、逆に65歳以上の高齢者人口は約22%と主要都市の中で最も高い割合を記録しています。韓国雇用情報院は、釜山市全体を「消滅危険地域」に分類し、広域市としては初の指定となりました。これは、20~39歳の女性人口を65歳以上の人口で割った「消滅危険指数」が0.49と、危険水準(0.5以下)に達したことを意味します。このままでは、30年後には釜山の人口が25%減少し、特に若年女性人口が半減するとの予測も出ています。

ソウルへの一極集中と経済の低迷

韓国の人口約5170万人の半分以上がソウルを中心とした首都圏に集中しており、釜山をはじめとする地方都市は深刻な衰退に直面しています。「インソウル(In Seoul)」という言葉が象徴するように、若者はより良い教育や就職機会を求めてソウルの名門大学や大企業を目指します。この一極集中は、釜山の地盤沈下を加速させています。かつて造船業や貿易で栄えた釜山ですが、近年は産業の低迷が顕著で、2020年の統計では労働者の平均賃金が主要8都市の中で最低水準に落ち込んでいます。さらに、韓国の上位100企業に釜山を拠点とする企業はなく、経済の首都圏集中が地方の衰退を助長しています。国際市場や西面などの繁華街でも空き店舗が増え、かつての活気は失われつつあります。

空室だらけの新築マンションとスラム化の進行

釜山の不動産市場も危機的状況です。市内北部に2024年7月に完成した新築マンションでは、住んでいるのはわずか2世帯という異常事態が報告されています。地方全体の新築マンションの入居率は約5割にとどまり、かつての中心地では窓が割れ、建物が崩れ落ちた廃墟のようなアパートも見られます。釜山駅近くのエリアでは、かつて造船業で栄えた地域が「人口の空洞化」によりスラム化が進んでいます。不動産仲介業者は「20年前は新婚夫婦が多かったが、今は2~3組しか来ない」と話し、若者の減少が市場の縮小を招いていると指摘しています。

若者の流出と学業ストレスの影響

若者の流出は、釜山の衰退の大きな要因です。ソウルの大学や企業を目指す若者が増える中、釜山の大学15校のうち14校が2023年の入試で定員割れを起こしました。さらに、深刻な学業ストレスも問題となっています。2025年6月には、釜山で高校2年生の女子生徒3人が学業や進路の負担を理由に集団で命を絶つ事件が発生し、地域社会に衝撃を与えました。遺書には「学業ストレスと進路の負担が大きかった」と記されており、若者の精神的な負担が社会問題として浮き彫りになっています。10代の自殺率は2011年の10万人あたり5.5人から2023年には7.9人に上昇し、若者のメンタルヘルス対策が急務となっています。

地方活性化への取り組みと課題

釜山の衰退に対抗するため、さまざまな取り組みが進められています。2019年には「釜山大改造ビジョン」が発表され、鉄道の地下化やスマートシティ化、空港アクセスの強化など、都市の競争力向上を目指す計画が進行中です。また、2030年万博の誘致を掲げ、観光や経済の活性化を図る動きもあります。しかし、これらの施策の効果は未知数で、特に若者の流出を止める抜本的な対策は不足しています。韓国政府は地方分権を強化し、政府機能の一部移転を検討していますが、ソウルの経済的・文化的優位性を覆すのは容易ではありません。

釜山の未来はどうなるのか

釜山が直面する「消滅の危機」は、韓国全体の少子高齢化と一極集中の問題を象徴しています。日本の地方都市にも通じる課題であり、人口流出や経済の停滞を防ぐための具体的な対策が求められます。釜山は美しい海と豊かな文化を持つ魅力的な都市ですが、その輝きを取り戻すには、若者を引きつける新たな産業や教育環境、そして地域全体の活性化が不可欠です。果たして釜山は「韓国第2の都市」の地位を守り、消滅の危機を乗り越えられるのか。その動向に注目が集まっています。