税金の安い海外移住先4カ国|人気の理由と税制リスクを解説

税金の安い海外の移住先

日本人が海外移住を検討する際、税負担の軽減を大きな理由の一つに挙げるケースが多く見られます。特に個人所得税率の低さや海外所得非課税の制度、相続税・贈与税の不存在などが魅力的な国として、マレーシア、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE・ドバイ)、香港が人気です。以下では、これらの国について税制の特徴、日本人に選ばれる理由、注意点を詳しく紹介します。ただし、税制は頻繁に改正されており、国際的な課税逃れ防止ルール(BEPSなど)の影響で条件が厳格化されています。また、日本側の国外転出時課税制度(出国税)やタックスヘイブン対策税制(CFC税制)の適用リスクも存在します。あくまで一般的な情報であり、個別の状況に応じた国際税務専門家への相談を強くおすすめします。

マレーシア

税制の主な特徴

マレーシアはテリトリアル税制を採用しており、海外で得た所得を国内に持ち込まなければ原則として非課税となります。個人所得税の税率は所得額に応じて0%から30%までで、日本の高所得者層(45%超)と比べて低めです。また、相続税や贈与税は存在せず、住民税に相当する税もありません。2025年現在、外国源泉所得については2036年まで免税が延長されていますが、2025年から個人の配当所得が年間10万リンギットを超える部分に2%の課税が導入されています。これらの特徴から、海外資産運用者やリタイア層に税負担の軽減効果が高いとされています。

日本人の移住人気の理由

マレーシアは日本人の長期滞在プログラム(MM2H)があり、家族帯同も可能です。生活費が日本より低く、多文化環境で日本食や日本語対応の施設が充実している点も魅力です。2025年現在も、物価の安さと温暖な気候からリタイアメント移住先として多くの日本人が選んでいます。

移住時の注意点

MM2Hは2021年以降条件が厳格化され、2024年に3〜4層制(Silver、Gold、Platinumなど)に改定されており、固定預金額や不動産購入要件が高く、以前に比べて取得ハードルが上がっています。また、外国源泉所得の免税は時限措置であり、将来的な変更リスクがあります。日本側の非居住者判定を満たすための滞在管理が必要です。

シンガポール

税制の主な特徴

シンガポールの個人所得税は累進課税で、最高税率は2025年時点で24%です。キャピタルゲイン税は非課税、相続税・贈与税はなく、住民税に相当する税もありません。海外所得については一定条件下で非課税扱いとなり、全体として日本より税負担が軽い構造です。

日本人の移住人気の理由

治安の良さ、インフラの整備、英語圏である点が挙げられ、日本企業進出も多いため現地就職やビジネスがしやすい環境です。日本人コミュニティやインターナショナルスクールが充実しており、家族移住にも適しています。税制優遇と生活の利便性が組み合わさり、高所得者層に支持されています。

移住時の注意点

生活コスト(特に住宅費)が日本より高く、ビザ取得の要件が厳しい場合があります。就労ビザや投資ビザを中心に検討する必要があります。

アラブ首長国連邦(UAE・ドバイ)

税制の主な特徴

UAEは個人所得税が0%で、相続税・贈与税・キャピタルゲイン税もありません。住民税に相当する税もなく、2023年以降導入された法人税(9%)は個人には適用されません。これにより、所得税ゼロの環境が実現し、タックスヘイブンとして知られています。

日本人の移住人気の理由

2025年現在、ゴールデンビザ(不動産投資や会社設立による長期滞在許可)が取得しやすく、日本人移住者が急増しています。近代的な都市環境、治安の良さ、多国籍コミュニティが魅力で、ビジネスチャンスも豊富です。日本からのフライトアクセスも良好です。

移住時の注意点

気候が高温多湿で、イスラム文化に基づく生活ルールがあります。日本非居住者となるためには、単に183日以上滞在するだけでなく、生活の本拠が日本に残っていないか(家族の所在、職業など)を総合的に判断されるため、リスクがあります。また、生活費は高めです。

香港

税制の主な特徴

香港は国内源泉所得のみを課税対象とするテリトリアル税制で、個人所得税(給与税)の最高税率は17%程度と低く、キャピタルゲイン税・相続税・贈与税はなく、住民税もありません。ただし、2023年以降導入されたFSIE制度により、多国籍企業(MNE)グループの構成員が受ける受動的所得(配当、利子、一定の処分益など)について、経済的実体要件を満たさない場合、海外所得であっても課税対象となるケースが増えています。日本より大幅に税負担が軽減されるケースは多いですが、無条件での非課税は限定的です。

日本人の移住人気の理由

日本から近く、文化的な親和性が高い一方で国際金融都市としての利便性があります。日本人学校やコミュニティが充実し、ビジネスや投資目的の移住に適しています。税制のシンプルさが富裕層に支持されています。

移住時の注意点

住宅費や物価が高く、政治情勢の影響を考慮する必要があります。FSIE制度により、ペーパーカンパニーや単なる個人投資家の場合、以前のように海外所得が無条件で非課税にならないリスクがあります。ビザは就労や投資ベースが主流で、取得難易度が高い場合があります。

最後に、移住時の日本側リスクとして、対象資産(有価証券など)1億円以上保有の場合、出国時に含み益に対し15.315%の課税(出国税)が発生します。また、海外法人を利用した節税の場合、タックスヘイブン対策税制(CFC税制)により、その法人の利益が日本で課税される可能性があります。これらの制度は富裕層の節税移住に大きな影響を与えるため、事前の専門家相談が不可欠です。