韓国・海洋水産相が辞任表明、旧統一教会の「癒着」と影響力

韓国の海洋水産相、旧統一教会からの金品受領疑惑で辞意表明
韓国における旧統一教会の影響力

韓国の海洋水産相、旧統一教会からの金品受領疑惑で辞意表明

2025年12月11日、韓国の田載秀(チョン・ジェス)海洋水産部長官が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)から金品を受け取った疑惑をめぐり、辞意を表明しました。この問題は韓国政界における旧統一教会との関係が再び注目されるきっかけとなっています。

事件の概要

田載秀長官は同日、米国訪問を終えて仁川国際空港に到着後、記者団に対し「政府が動揺せず仕事に専念できるようにするため、私が海洋水産部長官の職を辞するのが穏当だと思う」と述べ、辞意を表明しました。疑惑そのものは全面的に否定した上で、政権への負担軽減を理由に挙げています。

疑惑の具体的内容

報道によると、旧統一教会の元幹部が「2018~2020年頃、田氏(当時国会議員)に高級ブランドの腕時計2個と数千万ウォン相当の現金を渡した」と供述したとされています。この時期、教団が推進する「日韓トンネル」関連事業への便宜を図る目的があったと指摘されており、警察当局が事実関係を捜査中です。

田載秀長官の対応

田長官は空港での取材に対し「そのような事実はない」「根拠のない話だ」と疑惑」と繰り返し否定。潔白を主張しつつも、「政権の業務に支障をきたしてはならない」との判断から、自ら職を退く決断をしたと説明しています。

大統領室の反応

李在明大統領室は同日、「大統領が田長官の辞意を受け入れることにした。辞表は所定の手続きを経て受理される予定」と発表しました。李大統領は前日にも「旧統一教会問題は与野党を問わず厳正に捜査すべき」との考え」を示しており、政権として迅速に対応する姿勢を見せています。

韓国政界全体への影響

旧統一教会をめぐる政治スキャンダルは尹錫悦前政権時代から続いており、現在も与党「共に民主党」の現職・元職議員や他閣僚に対する同様の疑惑が次々と浮上しています。警察は与野党を問わない捜査を進めているため、今後もさらなる辞任や起訴の可能性が指摘されています。

韓国における旧統一教会の影響力

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、韓国で1954年に設立されて以来、政治・社会に多大な影響を及ぼしてきました。この宗教団体は、韓国統一の推進や反共産主義活動を通じて政権との密接な関係を築き、近年では金品提供疑惑などのスキャンダルで政界を揺るがしています。以下では、歴史的背景から現在の状況まで、報道と公的記録に基づいた事実を概観します。

設立と初期の歴史

旧統一教会は、1954年に文鮮明氏によりソウルを本拠地として設立されました。当初は「世界基督教統一神霊協会」と呼ばれ、キリスト教の要素を基盤とした新宗教運動として位置づけられました。朝鮮戦争後の混乱期にあった韓国で、教会は急速に信者を拡大。韓国統一の理念を掲げ、文鮮明氏が自らをメシアと位置づける教義のもと、数万人規模の信者を獲得し、社会的基盤を固めました。

政治的つながりの形成

教会の政治的影響力は1960年代の朴正煕政権時代に顕著になりました。反共産主義を強く掲げる教会は朴政権のイデオロギーと一致し、政権の支援を受けながら活動を拡大。反北朝鮮キャンペーンや国際統一運動を展開し、保守派政治家とのネットワークを構築しました。1970年代以降も、教会は政界への資金提供やロビイングを通じて、与党議員との関係を維持し続けてきました。

最近のスキャンダルと政界への影響

2020年代に入り、旧統一教会の政治関与が再び大きな問題となっています。2025年現在、教会の元幹部が現職・元職議員に金品を渡したと供述した疑惑が相次ぎ、与党「共に民主党」の閣僚を含む複数名が捜査対象に。特に海洋水産部長官の辞任事件は、教会が「日韓トンネル」構想などの事業推進を目的に政治家へ働きかけていた疑いを浮き彫りにしました。教会総裁の韓鶴子氏も政治資金法違反で起訴され、公判が続いています。

現在の状況と政府の対応

李在明大統領は、教会の政治介入を「憲法違反の恐れがある」とし、解散命令の検討を指示。大統領室は政教分離原則の観点から、与野党を問わない厳正な捜査を表明しました。警察は特別捜査チームを設置し、教会の資金の流れや議員との関係を追及中です。一方、教会側は疑惑を全面否定し、信教の自由を主張しています。この問題は、韓国社会全体で宗教と政治の境界をめぐる議論を再燃させ、政界の透明性向上を求める世論を強めています。