JR東日本の地方路線赤字問題:2024年度の厳しい実態
2024年10月27日にJR東日本は2024年度の収支を公表しました。JR東日本が公表した地方路線の収支状況は、利用者の少ない36路線71区間すべてが赤字に陥り、総額約790億円の損失を計上しました。この数字は前年度比で33億円の悪化を示しており、地方交通の持続可能性に深刻な懸念を抱かせています。以下では、このニュースの背景、税金支援の是非、そしてその実現が難しい現状を詳しく解説します。
赤字の規模と対象路線の概要
JR東日本が開示した対象は、1キロメートル当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が2,000人未満の区間です。運輸収入はわずか約62億円に対し、運行費用は約853億円に上り、収支率の最低値は陸羽東線の鳴子温泉―最上間(0.4%)で、100円の収入を得るのに2万2,360円の費用がかかる計算となります。赤字額が最大の羽越線村上―鶴岡間は約55億円で、貨物輸送の影響で線路保守費が特に高額化しています。
これらの路線は、青森県の津軽線や宮城県の陸羽東線など、東北を中心に地方の過疎地を結ぶもので、地域住民の生活や観光に欠かせない存在です。しかし、コロナ禍後の需要回復(インバウンド増加など)が見込まれた24区間では改善した一方、47区間では悪化。JR東日本の担当者は「少子高齢化による長期的な利用者減少が避けられない」と指摘しています。
税金支援の意見:地域維持のための必要性
このニュースに対し、X(旧Twitter)や各種メディアでは「税金で支援すべき」という声が相次いでいます。例えば、あるユーザーは「地方創生を謳うなら、交付金をばらまくより赤字補填に税金を使うべき」と主張し、別の意見では「道路は税金で整備されているのに、鉄道だけ廃線は不公平」との指摘が見られます。これらの意見は、地方路線の社会的役割を強調するものです。
実際、JR東日本全体の収益は首都圏の好調で黒字を維持していますが、地方路線は「公共交通」として位置づけられ、廃線が地域の孤立を招く恐れがあります。過去の事例として、JR北海道の赤字路線では国や自治体の補助金が投入されており、税金支援が「地方の足」を守る一策として議論されています。
税金支援の実現が難しい現状:財政・構造的課題
一方で、税金支援の拡大は簡単ではありません。まず、JR東日本は民営化された企業であり、株主や収益性の高い路線からの利益で地方赤字をカバーする構造です。790億円の赤字を税金で全額補填すれば、国家予算の負担が増大し、他の社会保障やインフラ投資を圧迫する可能性があります。日本全体の財政赤字(2024年度で約30兆円規模)が深刻化する中、優先順位の議論が避けられません。
人口減少と維持費の高騰
根本的な課題は、少子高齢化による利用者減少です。対象路線の多くは過疎地を走り、1日平均乗客が数百人程度の区間も少なくありません。コロナ禍で先送りした線路修繕が2024年度に集中し、費用が33億円増加した点も痛手です。さらに、地震多発地帯である東北の路線では、災害復旧費が常態化しており、保守コストが全国平均を上回っています。これに対し、利用促進策(観光列車導入など)は短期効果に留まり、根本解決には至っていません。
代替案と今後の展望
税金支援の代替として、路線廃止やバス転換、第三セクター化が検討されますが、これらも地元住民の反対を招きやすいのが実情です。JR東日本はDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した地方活性化を進めていますが、効果は未知数。最終的に、国・自治体・JRの三者協議が鍵となり、持続可能なモデル構築が急務です。
この問題は、単なる企業収支ではなく、日本全体の地方衰退を象徴するものです。税金投入の是非を巡る議論は今後も続き、バランスの取れた解決策が求められます。
