自民党と維新の連立政権に向けた政策協議の概要:12項目の政策要求

自民党と維新の連立政権構築に向けた政策協議の概要
日本維新の会が提示した12項目の政策要求の詳細

自民党と維新の連立政権構築に向けた政策協議の概要

2025年10月16日、自民党と日本維新の会は、連立政権の構築を視野に入れた初の政策協議を国会内で開催しました。この協議は、自民党の高市早苗総裁が前日(15日)に維新の吉村洋文代表(大阪府知事)らと党首会談を行い、首相指名選挙での協力や連立政権樹立に向けた協議開始で合意したことを受け、実施されたものです。両党は、維新が掲げる12の政策項目を中心に議論を進めましたが、食料品の消費税率ゼロや企業・団体献金の廃止などで折り合いがつかず、合意に至りませんでした。協議は17日も継続される見通しで、臨時国会召集前日の20日までに連立の判断を下す方針です。

協議の背景と目的

自民党は、最近の衆院選で単独過半数を割り込んだ状況を踏まえ、政権基盤の強化を図るため、維新との連携を模索しています。一方、維新は自民との政策一致を条件に、首相指名選挙での高市総裁への投票や連立参加を検討。吉村代表は会談後、「政策協議を開始する土台はある」と述べ、副首都構想や社会保障改革の実現を重視する姿勢を示しました。この動きは、立憲民主党や国民民主党との野党連携を巡る綱引きを激化させており、政局の行方を左右する重要な一手となっています。

出席者と協議の概要

協議には、自民党側から高市早苗総裁と小林鷹之政調会長、維新側から藤田文武共同代表と斎藤アレックス政調会長が出席。午後3時頃に開始され、約2時間にわたり議論が行われました。自民党の小林政調会長は「共通の理解を得られることが多く、真摯に向き合う」とコメント。一方、維新の藤田共同代表は、党内の両院議員総会で執行部に最終判断を一任したことを説明し、慎重ながら前向きな議論を進めました。協議は非公開で行われましたが、事前の維新両院議員総会では、政治資金問題への妥協を避けるよう求める声が相次ぎました。

維新が提示した12の政策項目

維新側は、連立協力の条件として以下の12の政策項目を自民党に提示しました。これらは、維新の看板政策である行政改革や財政健全化を軸に据えたもので、自民党との一致点を探るための基盤となります。

  • 経済財政政策: ガソリン暫定税率の廃止、給与所得控除の見直し、所得税減税の推進。
  • 社会保障改革: 社会保険料の引き下げ、年金制度の見直し、高齢者医療費負担の見直し。
  • 政治改革: 企業・団体献金の廃止、国会議員定数削減、政治資金規正法の強化。
  • 地方分権・行政改革: 副首都構想の推進(首都機能の一部を大阪など地方に移転)、道州制の検討。
  • 税制改革: 食料品の消費税率を2年間ゼロにする、消費税の軽減税率拡大。
  • その他: 教育無償化の拡大、子育て支援の強化、災害対策の強化。

これらの項目のうち、特に副首都構想と社会保障改革は維新の「2本柱」と位置づけられており、高市総裁からも賛意が示された点が注目されます。

主な議論点と合意に至らなかった理由

協議の焦点となったのは、維新の要求する「食料品消費税ゼロ」と「企業・団体献金の廃止」です。維新側は即時実施を求めましたが、自民党は財政負担の懸念や党内調整の難しさを理由に慎重姿勢を示し、折り合いがつきませんでした。また、政治資金問題については、自民党の過去のスキャンダルを念頭に、維新議員から「引かないでほしい」との強い声が上がっていました。高市総裁は「基本政策はほぼ一致している」と楽観視する一方で、具体的な実現時期や方法については今後の詰めが必要とされました。維新の吉村代表は、連立参加のリスクとして「党消滅の可能性」を認めつつ、国家・国民のための政策実現を優先する考えを強調しています。

今後の見通しと影響

両党は17日に2回目の協議を予定し、20日までの合意を目指します。合意が得られれば、自民(196議席)と維新(35議席)の合計で衆院過半数(233議席)に迫る連立政権が成立し、高市総裁の首相就任が現実味を帯びます。一方、野党側では立憲民主党の野田佳彦代表が維新・国民民主との統一候補一本化を呼びかけていますが、維新の自民傾斜により難航が予想されます。この協議は、政局の安定だけでなく、市場にも影響を与えており、副首都構想関連銘柄の上昇が観測されています。日本共産党の田村智子委員長は「自民の政治を悪くするアクセルを踏む動き」と批判するなど、与野党の対立も深まっています。

この政策協議は、日本の政治地図を塗り替える可能性を秘めており、引き続き注目されます。

日本維新の会が提示した12項目の政策要求の詳細

2025年10月16日、自民党との連立政権構築に向けた政策協議で、日本維新の会は12の政策項目を詳細に提示しました。これらは、維新の看板政策である行政改革、地方分権、社会保障改革などを基盤とし、連立参加の条件として自民党との合意を目指すものです。協議では、多くの項目で両党の価値観の一致を確認しましたが、食料品の消費税ゼロや企業・団体献金の廃止などで折り合いがつかず、17日に継続協議となります。以下、各項目の詳細を解説します。

1. 経済財政政策

国民の生活負担軽減と経済活性化を目的とした即時対応策を中心に据えています。ガソリン価格の高止まり是正や税制の見直しを通じて、可処分所得の増加を図ります。

  • ガソリン暫定税率の廃止:1974年導入の暫定税率(25.1円/リットル)を即時廃止し、物流・輸送コストの低減を目指す。
  • 給付付き税額控除の制度設計:低所得者層への税還付を強化し、所得格差是正と消費刺激を促進。詳細設計を早期に進める。
  • 食品消費税の2年間ゼロ(免税):食料品の消費税率を2年間免税とし、生活費負担を軽減。物価高騰対策として即時実施を要求。
  • 2万円の現金一律給付策は行わない:一律給付の財政負担を避け、給付付き税額控除などの効率的な支援にシフト。

2. 社会保障政策

現役世代の負担軽減と制度の持続可能性を重視。インフレ対応や既存合意の履行を基盤に、年金・医療の改革を推進します。

  • 2025年通常国会で締結した「三党合意」の確実な履行:自民・公明・維新の三党合意に基づく社会保障改革を着実に実行。
  • 保険財政健全化策推進(インフレ対応):医療・介護保険の財政を強化し、物価上昇に連動した保険料調整を実施。
  • 第3号被保険者制度の見直し:主婦・主夫の第3号被保険者制度を廃止・見直し、負担の公平化を図る。

3. 皇室・憲法改正・家族制度等

皇位継承の安定化と伝統の維持を目的とした憲法・家族関連の改正を提案。両党の共通認識を活かした協議を求めます。

  • 旧宮家の男系男子の養子縁組を実現する皇室典範の改正:皇室の男系継承を確保するため、旧宮家からの養子縁組を法制化。
  • 憲法9条改正に関する両党の協議体設置:自衛隊の明記などを含む9条改正に向け、両党協議体を早期設置。
  • 「同一戸籍・同一氏」の原則を維持した旧姓の通称使用の法制化:家族制度の伝統を守りつつ、選択的夫婦別姓の実質化を図る通称使用制度を導入。

4. 外交安全保障政策

急速な安全保障環境の変化に対応した戦略強化を要求。防衛力の向上と国際協力の深化を優先します。

  • 安全保障環境の変化に伴う戦略3文書改定の前倒し:国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の改定を前倒し実施。
  • 防衛装備移転三原則の運用指針5類型撤廃:装備移転の柔軟化を図り、国際的な防衛協力の拡大を促進。

5. インテリジェンス政策

国家安全保障の基盤強化のため、諜報活動の法整備を急ぎます。スパイ活動の防止と情報収集の効率化を重視。

  • インテリジェンス・スパイ防止関連法制の制定:スパイ防止法の制定とインテリジェンス機関の強化を推進。

6. エネルギー政策

エネルギー自給率の向上と脱炭素化を両立。安定供給の観点から、原発活用を積極的に位置づけます。

  • 原発再稼働の推進:安全基準を満たした原発の再稼働を加速し、エネルギー安定供給とCO2削減を実現。

7. 食料安保・国土政策

食料自給率の向上と国土強靭化を統合的に推進。気候変動や地政学リスクへの対応を強化します。

  • 食料安全保障の強化:国内生産基盤の整備と輸入依存低減のための政策パッケージ策定。
  • 国土強靭化:防災・インフラ投資の拡大と、災害耐性のある国土形成。

8. 経済安保政策

サプライチェーンの強靭化と技術主導の経済安全保障を推進。半導体・重要鉱物などの分野で自立を確保します。

  • 重要物資の国内調達促進:経済安全保障推進法の運用強化と、海外依存リスクの低減策。

9. 人口政策・外国人政策

少子化対策と移民政策のバランスを重視。人口減少社会への適応と社会統合を両立します。

  • 外国人比率上昇抑制及び外国人総量規制を含む人口戦略策定:外国人労働者の受け入れを管理しつつ、少子化対策を優先した人口戦略の策定。

10. 教育政策

教育機会の均等化と無償化拡大を推進。子育て支援の一環として、基礎教育の負担軽減を図ります。

  • 高校教育無償化本格実施:全国的な高校授業料無償化を本格化。
  • 小学校給食無償化:全国の小学校給食を無償提供し、子育て世帯の経済支援を強化。

11. 統治機構改革

中央集権の是正と地方活性化を目的とした大規模改革。維新の「2本柱」の一つである地方分権を象徴します。

  • いわゆる「副首都構想」:首都機能の一部を大阪など地方に移転し、東京一極集中を解消。災害リスク分散と地域経済活性化を目指す。

12. 政治改革

政治の透明性向上とコスト削減を徹底。「身を切る改革」の象徴として、献金規制と定数削減を強く要求します。

  • 企業団体献金の廃止:企業・団体からの政治献金を全面禁止し、政治資金の透明性を確保。
  • 議員定数削減:国会議員定数を1割目標に削減し、政治コストの低減と効率化を図る。

政策要求の意義と展望

これら12項目は、維新の「身を切る改革」や「地方主導」の理念を反映したもので、自民党との連立交渉の鍵となります。特に、副首都構想と社会保障改革は「2本柱」と位置づけられ、維新のアイデンティティを象徴。協議では、食料品の消費税ゼロや企業献金廃止で意見が対立していますが、両党は17日も議論を継続し、20日までの合意を目指します。維新の吉村洋文代表は「政策実現が最優先」と強調しており、連立参加の可否はこれらの項目の進捗に大きく左右されるでしょう。

藤田文武(日本維新の会 共同代表):X投稿

政策協議の要望メモ