NTTの次世代構想「IOWN」とは? 光技術で変わる通信・コンピューティングの未来

NTTの「IOWN」とは

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、NTTが推進する次世代の情報通信インフラの構想です。この構想は、光技術を基盤とし、超大容量、超低遅延、超低消費電力を実現することを目指しています。NTTグループは、ICTの持続可能性を確保し、一人ひとりが心豊かに暮らせるWell-beingな世界を構築するための基盤としてIOWNを位置づけています。

IOWNの背景

現代のICTは、データ量の爆発的な増加に伴い、電力消費の急増という課題を抱えています。IOWNはこの問題を解決するため、光(フォトニクス)ベースの技術をネットワークから端末まで導入し、電気中心の従来方式を刷新するものです。NTTは2019年にこの構想を発表し、以降、IntelやSonyなどの企業と協力してIOWN Global Forumを設立しています。

IOWNのビジョン

IOWNのビジョンは、持続可能な方法でWell-beingな世界を実現することです。環境問題と経済成長の両立を図り、グローバルな課題を解決するための情報通信プラットフォームを構築します。具体的には、大量のデータを効率的に処理し、未来予測や社会の調和を促進する基盤を提供します。

IOWNの構成要素

IOWNは、主に3つの主要な機能から構成されています。これらは、光技術の活用により、ネットワークとコンピューティングの革新を実現します。

APN(All-Photonics Network)

APNは、ネットワーク全体を光ベースで構築する技術です。端末からネットワークまでを光でつなぎ、従来の電気信号変換を排除することで、低消費電力、大容量、低遅延を達成します。NTTは、APNを活用したサービスをNTT東日本やNTT西日本で展開しており、2026年にも光電融合スイッチの市場投入を予定しています。

DTC(Digital Twin Computing)

DTCは、サイバー空間上でモノやヒトのデジタルツインを作成し、大規模シミュレーションを行う機能です。これにより、リアルタイムな未来予測が可能になり、物理現象だけでなく人間の思考や心理も考慮した高度なインタラクションを実現します。

CF(Cognitive Foundation®)

CFは、ICTリソースを全体最適化し、情報を柔軟に流通させる機能群です。場所やアプリケーションを意識せずに情報を扱えるようにし、持続可能なデータ観測と利用を確保します。

IOWNの技術的特徴

IOWNでは、ディスアグリゲーテッドコンピューティングによりサーバ部品を細分化・共用し、電力効率を向上させます。また、光電融合デバイスを活用し、電子回路を光導波路に置き換えることで消費電力を削減します。ロードマップとして、IOWN1.0でAPNサービス開始、IOWN2.0でコンピュータ領域への拡大、IOWN3.0で容量125倍、IOWN4.0で電力効率100倍を目指しています。

具体的には何が変わるか

IOWNの実現により、従来の電気信号中心のICTインフラから光中心へ移行することで、以下の劇的な変化が期待されます。これらはNTTの目標性能(伝送容量125倍、エンド・ツー・エンド遅延200分の1、電力効率100倍)に基づくものです。

通信速度・容量の劇的向上

従来の一般的な光回線(1Gbps程度)や5G(最大20Gbps程度)と比較して、IOWNでは1秒間に1,000Tbpsを超える超大容量伝送が可能になります。これにより、長編映画や大規模データのダウンロードが一瞬で完了し、超高精細映像のリアルタイム配信や大量IoTデータの同時処理が容易になります。データセンター間やユーザー拠点間でも、最大800Gbpsの帯域保証型通信が既に一部商用化されています。

遅延の大幅削減とリアルタイム性の実現

従来のネットワークでは発生する光-電気変換による遅延がほぼ排除され、エンド・ツー・エンド遅延が200分の1に短縮されます。これにより、ほとんどタイムラグのない遠隔操作が可能になり、遠隔手術、リアルタイム遠隔協奏、自動運転車の高度制御、クラウド上でのリアルタイム映像処理(例: 内視鏡診断)などが現実的になります。遅延揺らぎも極めて小さく、安定した超低遅延通信が提供されます。

消費電力の大幅削減と持続可能性の向上

電気信号処理に伴う電力ロスが減少し、将来的に電力効率が100倍向上します。生成AIやデータセンターの電力消費が急増する中、IOWNでは消費電力を1/100に抑える可能性があり、カーボンニュートラル社会の実現に大きく寄与します。データセンターの地方分散や再生可能エネルギーの有効活用も促進されます。

日常生活・産業への具体的な影響例

  • エンターテイメント:超低遅延で複数拠点からの高臨場感あるリモート観戦や協奏が可能に。
  • 医療:クラウド内視鏡による遠隔リアルタイム診断・治療。
  • モビリティ:自動運転や交通システムの高度化。
  • ビジネス:大規模AI処理の省電力化、分散コンピューティングによる効率向上。

IOWNの取り組みと最新進捗

NTTグループは、IOWNを活用したデータセンターの最適化やAI統合を進めています。2026年のMWC Barcelonaでは、6Gとの連携やAIビデオ解析のデモを予定。2025年には、光ファイバ容量10倍の新技術を発表し、NTT IOWN Technology Report 2025を公開しています。また、IOWN Global Forumを通じて国際的な標準化を推進中です。