育児休業給付とは
育児休業給付は、雇用保険の被保険者が子を養育するための休業を取得した場合に、一定の要件を満たすことで支給される給付金です。この制度は、育児休業中の経済的な負担を軽減し、仕事と子育ての両立を支援することを目的としています。主に育児休業給付金、出生時育児休業給付金に加え、2025年4月から新設された出生後休業支援給付金や育児時短就業給付金が含まれます。
制度の概要
育児休業給付は、子の出生から一定期間内の休業に対して支給され、原則として1歳未満の子を対象とした育児休業給付金が中心です。2025年4月からは出生後休業支援給付金が新設され、夫婦で一定期間以上の育児休業を取得した場合に上乗せ支給が可能になり、給付率が最大80%(社会保険料免除等を考慮し手取り相当で10割近く)となります。また、育児時短就業給付金も導入され、短時間勤務時の支援が強化されています。
対象者
対象者は、雇用保険の被保険者で、子を養育するための休業を取得する男女問わずの労働者です。対象となる子には実子や養子が含まれ、特別養子縁組の監護期間中の子も該当します。有期雇用契約の労働者も、一定の要件を満たせば受給可能です。
主な対象条件
休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就業時間が80時間以上)の月が12ヶ月以上あることが必要です。また、休業終了後に退職が予定されている場合、一部の給付が対象外となることがあります。
支給条件
給付を受けるためには、特定の休業期間と就業制限を満たす必要があります。育児休業は分割取得が可能で、産後休業期間は対象外です。
育児休業給付金の条件
1歳未満の子を養育するための休業を取得し、各支給単位期間(1ヶ月ごと)の就業日数が10日(または80時間)以下であることが求められます。支給対象期間は子が1歳になる前日までですが、保育所利用不可などの事由で1歳6ヶ月または2歳まで延長可能です(2025年4月以降、延長手続きが厳格化されています)。
出生時育児休業給付金の条件
子の出生日から8週間以内に最大28日(4週間)の産後パパ育休を取得する場合に適用され、就業日数は最大10日(80時間)以下です。
出生後休業支援給付金の条件
2025年4月新設の給付で、対象期間内に本人と配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合(または配偶者の状況により要件が緩和される場合)に支給されます。最大28日分の上乗せ給付です。
育児時短就業給付金の条件
2歳未満の子を養育するための短時間勤務で、一定の被保険者期間を満たす場合に適用されます。
支給額と計算方法
支給額は休業開始時賃金日額を基に算出され、非課税です。賃金支払いがある場合、一定額以上で減額または不支給となります。休業開始時賃金日額の上限は、令和7年8月以降16,110円程度(毎年8月改定)です。
育児休業給付金の計算
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(181日目以降は50%)。支給日数は原則30日です。
出生後休業支援給付金の計算
休業開始時賃金日額 × 対象日数(最大28日) × 13%。これにより、育児休業給付金と合わせて80%の給付率となります(社会保険料免除等で手取り相当10割近く)。
賃金支払い時の調整
休業中の賃金が一定割合を超えると減額または不支給となります。
申請手続き
申請は事業主経由でハローワークに行い、電子申請も可能です。初回申請期限は休業開始日から一定期間内です。
必要書類
休業開始時賃金月額証明書、支給申請書、賃金台帳、出勤簿、母子健康手帳、住民票など。出生後休業支援給付金の場合、配偶者の状況確認書類が必要です。
支給方法
支給決定後、指定口座に振り込まれます。
最近の変更点
2025年4月から、出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金が新設され、夫婦での育休取得促進と短時間勤務の支援が強化されています。また、育児休業の延長手続きが厳格化されました。
育児休業給付の財源と国庫負担の概要
育児休業給付の制度は、主に雇用保険料と国庫負担によって支えられています。この制度の財政運営は、令和7年度(2025年度)から子ども・子育て支援特別会計に統合され、育児休業等給付勘定として管理されています。令和7年度の同勘定の歳出総額は1兆687億円で、そのうち育児休業給付金が8,857億円を占めています。
主な財源の構成
財源の主な内訳は、雇用保険料収入(労働者と事業主の負担)と国庫負担金です。令和7年度の見込みでは、保険料収入が0.84兆円、国庫負担金が0.11兆円となっています。また、新設された出生後休業支援給付金(792億円)や育児時短就業給付金の財源の一部は、子ども・子育て支援勘定からの繰入金(令和7年度で0.1兆円)で賄われています。令和8年度以降は、子ども・子育て支援金(医療保険者からの徴収)がこれらの新給付の財源として活用されます。
国庫負担の詳細
国庫負担は、育児休業給付の財政基盤を強化するための重要な要素です。令和6年度(2024年度)から暫定措置が廃止され、本則の負担割合に引き上げられています。
国庫負担の割合
国庫負担の割合は、給付額の1/8(12.5%)です。これは令和6年度から適用されており、令和7年度も継続されます。以前の令和2年度から令和5年度までは暫定措置として1/80(1.25%)に引き下げられていましたが、財政の安定化を図るために本則に戻されました。
国庫負担金の金額推移
国庫負担金の金額は年度ごとに変動します。主な推移は以下の通りです:
- 令和2年度:81億円
- 令和3年度:79億円
- 令和4年度:88億円
- 令和5年度:93億円
- 令和6年度:0.11兆円(見込み)
- 令和7年度:0.11兆円(見込み)
これらの金額は、給付総額に対する本則割合に基づいて算出されています。令和7年度の見込みでは、育児休業給付の支給総額が0.90兆円程度と推計される中で、国庫負担が0.11兆円を占めています。
雇用保険料の役割
雇用保険料は、育児休業給付の主な財源です。育児休業給付に充てられる料率は本則で0.5%(労使折半)ですが、財政状況に応じて弾力条項により0.4%に調整可能です。令和7年度は0.4%が適用される見込みで、収入額は0.83兆円から0.84兆円程度です。
保険料率の推移と調整
保険料率は令和2年度から令和6年度まで0.4%で据え置かれ、令和7年度から本則0.5%となりますが、弾力倍率(令和7年度見込み1.51)が1.2を超える場合、0.4%に調整されます。将来的には令和12年度に0.5%適用が見込まれています。
財政の全体像と課題
令和7年度の育児休業等給付勘定の収入総額は1.06兆円、支出総額は1.01兆円で、差引剰余は0.05兆円の見込みです。資金残高は令和7年度末で0.47兆円程度と推計されます。この制度の維持には、男性育休取得率の向上(令和7年度目標50%)や適用拡大(令和10年10月施行予定)を前提とした収支試算が基盤となっています。
