ガソリン暫定税率とは
ガソリン暫定税率は、ガソリン税に上乗せされる追加の税金で、1974年のオイルショックを背景に一時的な増税措置として導入されました。この税率は、ガソリン1リットル当たり25.1円が上乗せされるもので、現在も日本のガソリン価格に影響を与えています。本来は暫定的な措置でしたが、道路整備や公共インフラの財源として定着し、国の財政において重要な役割を果たしています。しかし、この税率によりガソリン価格が上昇し、消費者や運送業界への負担が問題視されています。特に、ガソリン税に消費税がさらに課される「二重課税」の構造が、国民の負担を増やす要因として議論されています。
現在のガソリン暫定税率の状況
税率の詳細
現在のガソリン税は、基本税率(1リットル当たり28.7円)に暫定税率(1リットル当たり25.1円)を加えた53.8円が課されています。この税金は、ガソリン価格に直接反映され、消費者や物流業界に影響を与えています。たとえば、ガソリン価格が1リットル当たり170円の場合、約31%がガソリン税によるものです。この税収は、道路や橋、トンネルなどのインフラ整備や公共交通の維持に使われる一方、税収減による財政への影響が懸念されています。
廃止に向けた動き
ガソリン暫定税率の廃止については、2024年12月に自民党、公明党、国民民主党の3党が廃止方針で合意しましたが、具体的な時期は未定でした。2025年6月の通常国会では、立憲民主党や日本維新の会など野党7党が7月1日から暫定税率を廃止する法案を提出し、衆議院で可決されました。しかし、与党が多数を占める参議院では審議が進まず廃案となりました。直近では、自民党の森山裕幹事長が2025年度内(2026年3月まで)の廃止を検討し、2025年8月1日召集予定の臨時国会で関連法案の成立を目指す方針を示しています。これにより、廃止時期や代替財源の確保が焦点となっています。
廃止の影響と課題
暫定税率が廃止されれば、ガソリン1リットル当たり約25.1円の価格引き下げが期待され、家計や物流コストの軽減につながります。たとえば、年間のガソリン消費量が多い世帯では、約9,670円の負担減が見込まれます。しかし、税収減により道路整備などの財源が不足するリスクがあり、代替財源の確保が課題です。自民党内では、2026年4月からの廃止を提案する声や、廃止までの期間を補助金で対応する案も浮上しています。一方で、野党は即時廃止を主張し、与野党間の協議が続いています。
今後の展望
2025年8月の臨時国会では、参議院選挙の結果、与党が衆参両院で少数に転落したため、野党の要求を受け入れる形で法案成立の可能性が高まっています。ただし、廃止時期や具体的な制度設計を巡る与野党の協議がまとまらない場合、秋以降の臨時国会に議論が持ち越される可能性もあります。ガソリン価格の高騰が国民生活や産業に与える影響を軽減するため、暫定税率廃止の動向は引き続き注目されます。