不正競争防止法違反で書類送検:工作機械メーカー元社員がロシア側に営業秘密を漏洩か?スパイ活動の疑い

不正競争防止法違反で書類送検
不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の詳細

不正競争防止法違反で書類送検

2026年1月20日、警視庁公安部は、精密機械製造会社(工作機械メーカー)の元社員と、在日ロシア通商代表部元職員を不正競争防止法違反(営業秘密開示)容疑で東京地検に書類送検しました。この事件は、同社の先進技術を狙ったスパイ活動とみられており、軍事転用可能な情報も含まれる可能性があります。

容疑者の詳細

書類送検されたのは、いずれも30代の男性2人です。1人は首都圏の工作機械メーカーの元社員で日本人、もう1人はロシア国籍の在日ロシア通商代表部元職員です。この元職員は、ロシア対外情報局(SVR)の科学技術情報を収集するグループ「ラインX」に所属していたとみられています。

容疑の内容

元社員の容疑は、2024年11月と2025年2月に、首都圏の飲食店で勤務先の新製品開発に関する営業秘密情報を元職員に口頭で伝えたというものです。この行為は不正な利益を得る目的で行われ、元職員と共謀したとされています。提供された情報には内部研修資料や製品マニュアルが含まれており、営業秘密に該当しない情報も入手されていました。

事件の経緯

元職員は2023年4月に来日した直後、街中で元社員に道を尋ねる形で接触しました。その後、「後日お礼がしたい」と食事に誘い、焼き肉店やファミリーレストランで計十数回にわたり会食を重ねました。元職員は自身の所属を隠し、「ウクライナ人」を名乗り、信頼関係を築きました。最初は公開可能な会社パンフレットを求め、次第に高度な機密文書を要求しました。元社員はこれに応じ、現金約70万円を受け取りました。

スパイ活動の特徴

この接触方法は、電話やメールを避け、直接会って現金と情報を交換する点がロシアのスパイ活動の典型的手法と一致します。日本では1991年以降、ロシアによる外交、防衛、科学分野のスパイ事件が11件記録されています。

当局の対応と現状

公安部は軍事転用可能な情報の流出を防ぐため、捜査員が元社員に接触しました。元職員は事件後に出国しており、2026年1月9日、外務省を通じて在日ロシア大使館に元職員の出頭を要請しましたが、応じていません。公安部はこれをスパイ事件として扱っています。

不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の詳細

今回の事件で書類送検された容疑は、不正競争防止法違反(営業秘密開示)です。この法律は、事業者の公正な競争を確保するため、営業秘密の不正な取得・使用・開示を禁止しています。特に営業秘密に関する侵害行為は、刑事罰の対象となる重大な違反類型として厳しく処罰されます。

営業秘密の定義と要件

不正競争防止法第2条第6項では、営業秘密を以下の3要件をすべて満たすものと定義しています。

  • 秘密管理性:秘密として管理されていること(パスワード制限、アクセス制限、文書管理など具体的な措置が取られていること)
  • 有用性:事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること
  • 非公知性:公然と知られていないこと

本事件では、会社の新製品開発に関する内部研修資料や製品マニュアルなどがこれに該当すると判断されています。

違反行為の内容(営業秘密侵害行為)

不正競争防止法第2条第1項第4号から第10号までに営業秘密侵害行為が規定されており、本件では主に以下の類型が該当します。

  • 営業秘密を不正の利益を得る目的で、または保有者に損害を加える目的で開示する行為
  • 在職中の従業員が秘密管理の任務に背いて営業秘密を開示する行為

元社員は勤務先の営業秘密を口頭でロシア側に伝達し、現金を受け取っていたため、不正の利益を得る目的での開示行為に該当します。

罰則

営業秘密侵害罪(不正競争防止法第21条)では、以下の法定刑が定められています。

  • 10年以下の拘禁刑若しくは2,000万円以下の罰金、またはこれを併科

特に海外への使用・提供を目的とした場合など、情状によりより重い処罰が適用される可能性があります。また、法人の場合も両罰規定により最大5億円以下の罰金が科されることがあります。

事件との関連

本件では、元社員が会社の営業秘密を不正に開示したとして書類送検されました。提供された情報が軍事転用可能な技術を含む可能性があるため、当局はスパイ活動としての側面も重視して捜査を進めています。ロシア側元職員は出国済みであり、外交ルートでの対応が継続されています。