エアコン2027年問題とは
エアコン2027年問題とは、経済産業省が定めるトップランナー制度に基づく省エネ基準の改正により、2027年度から家庭用エアコンのエネルギー効率基準が大幅に引き上げられることを指します。この改正により、現在の省エネ性能が低い「スタンダードエアコン」(省エネラベル表示のないモデル)が新基準を満たせなくなり、製造・販売ができなくなる事態が予想されます。この問題は、省エネルギー法に基づき、エアコンの通年エネルギー消費効率(APF値)を大幅に向上させることを目的としています。
トップランナー制度の概要
トップランナー制度は、省エネルギー法に基づく仕組みで、現在市場で最も省エネ性能が高い製品(トップランナー)を基準とし、数年後に全メーカーがその水準を達成することを義務づける制度です。家庭用エアコンについては、2022年5月に新たな省エネ基準が公布され、2027年度を最初の目標年度としています。この制度の目的は、製品のエネルギー効率を継続的に向上させ、日本全体のエネルギー消費を抑制することです。
2027年度の新基準の詳細
2027年度以降に適用される新基準では、壁掛け形の家庭用エアコン(直吹き型)について、冷房能力に応じたAPFの目標基準値が以下のように定められています。
- 区分Ⅰ:冷房能力2.8kW以下、寒冷地仕様以外 → 目標APF 6.6
- 区分Ⅱ:冷房能力2.8kW以下、寒冷地仕様 → 目標APF 6.2
- 区分Ⅲ:冷房能力2.8kW超~28.0kW以下、寒冷地仕様以外 → 目標APF 6.84 – 0.210 × (冷房能力kW – 2.8)(上限6.6、下限5.3)
- 区分Ⅳ:冷房能力2.8kW超~28.0kW以下、寒冷地仕様 → 目標APF 6.44 – 0.210 × (冷房能力kW – 2.8)(上限6.2、下限4.9)
これらの基準は、2016年度比で平均約13.7%の効率改善を求める内容となっており、特に一般的な6~10畳用(2.2~2.8kWクラス)ではAPF6.6以上が必須となります。
スタンダードエアコンへの影響
現在のスタンダードエアコン(いわゆる「安いエアコン」)は、6畳用でAPF約5.0~5.8、10畳用でAPF約4.9~5.4程度のモデルが主流です。これらは2027年の新基準であるAPF6.0~6.6を大幅に下回るため、2027年度以降は基準未達成となり、原則として製造・販売が禁止されます。そのため、2027年以降は市場に残る家庭用エアコンがすべて「省エネ基準達成モデル(★3つ以上)」となり、実売価格10万円以上の高効率モデルが標準となる見込みです。
基準遵守の仕組みと特例
基準の達成判定はメーカー単位の「出荷台数加重調和平均値」で行われ、一部の機種が未達成でも、全体の平均が目標値をクリアしていれば認められる仕組みです。ただし2027年度については壁掛け形のみが対象であり、床置き形や窓用エアコンなどは当面猶予されています。
制度の背景と今後の見通し
この基準強化は、政府のカーボンニュートラル目標および2030年度の温室効果ガス46%削減目標を達成するための重要な施策の一つです。エアコンは家庭の電力消費の約3割を占めるため、省エネ性能の底上げは電力需要の抑制とCO2削減に直結します。消費者にとっては初期費用が上昇する一方で、長期的な電気代削減効果が期待されており、政府も買い替え促進のための補助金制度を拡充する方針を示しています。
2026年中に在庫がなくなり次第、スタンダードモデルは市場から姿を消すことになります。安価なエアコンを希望する方は、2026年中の購入が最後のチャンスとなります。
