冷凍ホタテ、中国輸出が2年3カ月ぶりに再開:中国の日本産水産物輸入規制について

北海道産冷凍ホタテ、中国輸出が2年3カ月ぶりに再開
中国の日本産水産物輸入規制

北海道産冷凍ホタテ、中国輸出が2年3カ月ぶりに再開

2025年11月5日、北海道産の冷凍ホタテ6トンが中国向けに日本を出発しました。中国が2023年8月に東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を理由に日本産水産物の輸入を全面停止して以来、初めての出荷です。

禁輸の経緯:2023年8月から全面停止

  • 中国は処理水を「核汚染水」と呼び、即時輸入停止を発表
  • 2022年の日本産ホタテ輸出額は約694億円、そのうち中国向けが約8割を占めていた
  • 北海道漁業者は在庫山積み、価格3割下落、経営危機に直面
  • 政府は緊急支援として買い取り・冷凍保管、米国・欧州・東南アジアへの販路開拓を推進

再開までの道のり:2025年6月以降の動き

  • 2025年6月、中国が日本産水産物の輸入再開方針を発表
  • 中国税関が449種類の日本産水産物を輸入許可リストに登録(マグロ・ホタテ・サバなど)
  • 輸出には中国側が指定する放射性物質(トリチウム等)の厳格検査が必須
  • 10月末の日中首脳会談で高市早苗首相が習近平国家主席に円滑化を直接要請

初回出荷の詳細:わずか3事業者のみ

  • 出荷量:6トン(北海道産冷凍ホタテ)
  • 出発日:2025年11月5日
  • 輸出可能事業者:2025年11月6日時点で3社のみ
  • 対象外:福島など10都県産水産物は引き続き除外

今後の見通し:登録事業者拡大で輸出量増加へ

中国側は追加登録を随時受け付けており、今後数週間で数十社規模に拡大する見込みです。禁輸前の輸出量(年間約5万トン)には及ばないものの、北海道漁業者の在庫圧縮と価格安定に寄与すると期待されています。

再開がもたらす影響

漁業者にとっての朗報

  • 2年以上の在庫を抱えていた加工業者がようやく売却可能に
  • 国内卸売価格の回復が見込まれ、2026年漁期の資金繰りが改善

国内消費者への影響

  • 輸出再開で国内供給量が一時減少する可能性
  • ただし政府は国内消費促進キャンペーンを継続し、価格高騰を抑制

残る課題:中国依存リスクの軽減

禁輸措置は政治的要因によるもので、再発リスクはゼロではありません。政府・業界は

  • 米国向け玉冷(むき身)輸出のさらなる拡大
  • ベトナム・タイでの再加工ルートの確立
  • EU・インドなど新興市場への販路多角化

を加速させ、中国依存を2022年水準の8割から5割以下に下げる目標を掲げています。

喜びと警戒が交錯する第一歩

冷凍ホタテの中国輸出再開は、北海道漁業にとって待望の光明です。一方で「また禁輸されたら?」という不安は消えず、輸出先の多角化が急務であることを改めて浮き彫りにしました。2025年11月7日現在、登録申請が相次いでおり、年末商戦に向けた本格的な出荷が始まろうとしています。

中国の日本産水産物輸入規制

中国は2023年8月24日、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水海洋放出開始を受け、日本産水産物(食用水生動物を含む)の輸入を全面停止しました。2年3カ月後の2025年11月5日、北海道産冷凍ホタテ6トンが中国向けに日本を出発し、禁輸後初の出荷が実現しています。

規制開始の背景:処理水放出への即時反応

  • 2023年8月24日、中国税関総署が「日本産水産物の輸入を全面的に停止」と公告
  • 理由:処理水を「核汚染水」と位置づけ、国民の健康保護を名目
  • 対象:日本原産の全水産物(生鮮・冷凍・干物・加工品すべて)
  • 香港・マカオも追随し、10都県産水産物を追加禁止

規制の二重構造:10都県禁輸は2011年から継続

  • 福島県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、長野県、新潟県(精米除く)の10都県産食品は、2011年の原発事故以降輸入停止中
  • 2025年11月7日現在も撤廃されておらず、水産物を含む全品目が対象
  • 10都県以外で採捕・水揚げ・加工された水産物のみが再開対象

再開までの公式タイムライン

  • 2025年6月29日:中国税関総署公告2025年第140号で「10都県を除く日本産水産物の条件付き輸入再開」を公示
  • 6月30日:日中両政府が技術的要件(施設登録+放射性物質検査)で合意
  • 11月5日:初回出荷(北海道産冷凍ホタテ6トン)
  • 11月6日時点:輸出許可事業者はわずか3社のみ

輸出に必要な厳格な手続き(中国側要件)

  • 日本側企業は中国税関の「輸入食品海外製造企業登録システム」に申請・登録
  • 登録後、中国税関が公開リストに掲載(随時更新)
  • 出荷ごとに放射性物質検査証明書が必要:
    • セシウム134/137
    • ストロンチウム90
    • トリチウム(新設)
  • 検査は第三者機関または日本政府機関が実施

現在の規制状況:部分再開+10都県完全禁輸

再開済み品目(10都県以外)

  • 冷凍ホタテ(北海道産)
  • 冷凍マグロ
  • 養殖ブリ・サーモン
  • サバ・イワシなど449品目が登録リストに掲載済み

依然として輸入不可

  • 10都県産の全水産物
  • 未登録施設の水産物
  • 検査証明書未添付のロット

登録企業数の推移(公式発表ベース)

  • 2025年11月6日:3社
  • 11月7日10時現在:申請急増中、税関が追加審査を実施
  • 農林水産省発表:「数週間で数十社規模に拡大の見込み」

日本政府の対応実績

緊急支援(2023~2024年)

  • 禁輸直後:在庫ホタテ30億円分を政府が買い取り冷凍保管
  • 国内消費キャンペーン:「ホタテ月1粒」呼びかけ
  • 販路多角化支援:
    • 米国向け直接輸出(2024年は前年比2倍)
    • ベトナム・タイで殻むき加工ルート確立

外交努力

  • 2025年10月末日中首脳会談:高市首相が習近平主席に円滑化を直接要請
  • IAEA枠組みで中国専門家が処理水サンプリングに参加

まとめ:規制は「部分解除」止まり

2025年11月7日現在、中国の日本産水産物輸入規制は以下の3段階です。

  1. 10都県産:2011年から完全禁輸(撤廃のめどなし)
  2. 10都県以外・未登録:輸入不可
  3. 10都県以外・登録済み:検査証明書付きで輸入可

初回ホタテ6トンの出荷は「再開の第一歩」ですが、禁輸前の年間5万トンには遠く及びません。中国税関の登録リスト確認と最新証明書が輸出の必須条件です。