防衛装備移転三原則の「5類型」とは? 具体例と見直し議論の現状

防衛装備移転三原則の概要

防衛装備移転三原則は、2014年に閣議決定された日本の武器輸出に関する基本方針です。この原則は、従来の武器輸出三原則を改め、厳格な条件の下で防衛装備品の海外移転を可能とするものです。三原則の内容は、(1) 海外移転が禁止される場合の明確化、(2) 海外移転が認められる場合の限定および厳格審査・透明性確保、(3) 紛争当事国への移転禁止です。これにより、平和貢献や国際協力、安全保障上の必要性に資する場合に限定して移転を許可しています。

運用指針と5類型の導入

防衛装備移転三原則の運用指針は、国家安全保障会議で決定され、2023年12月に改正されました。この改正では、国家安全保障戦略を踏まえ、防衛装備移転の意義を追加し、安全保障環境の認識を更新しました。また、国際共同開発・生産の円滑化や、ライセンス生産品の提供拡大、修理役務の対象拡大などが盛り込まれました。

5類型の内容

改正運用指針では、完成品の第三国移転を「5類型」に限定しています。これは、救難、輸送、警戒、監視、掃海の分野に係る協力です。これらの類型では、本来業務の実施や自己防護に必要な武器の搭載を可能とすることを明確化しています。具体例として、掃海艦の自走式機雷や処分用弾薬、輸送艦の20mm機関砲などが挙げられます。これにより、安全保障上の意義が高い移転を円滑に進めるための整理がなされました。

5類型の具体例(詳細)

5類型は、防衛装備移転三原則の運用指針において、完成品の移転が認められる非戦闘・非攻撃目的の分野として限定されており、主に以下の具体的な装備品や事例が該当します。

  • 救難:遭難者捜索・救助活動に用いる装備。例として、海上自衛隊の練習機TC-90(ターボチャージャー付き訓練機)のフィリピンへの移転が該当します。この機体は、南シナ海での監視・救難活動に活用され、5類型(救難・輸送・警戒・監視)の枠組みで移転が認められました。
  • 輸送:人員・物資の輸送任務に用いる装備。輸送艦や輸送機に搭載される機関砲や対ミサイル防御システム(自己防護用)が想定され、本来の輸送業務や自己防護に必要な武器の搭載が許可されます。
  • 警戒・監視:警戒管制レーダーや対空レーダーなどの監視・警戒装備。代表的な事例として、フィリピンへの固定式警戒管制レーダー(FPS-3MEベース)および移動式レーダー(JTPS-P14ベース)の移転が挙げられます。これらは南シナ海での監視能力強化を目的とし、5類型に基づく完成品移転の具体例です。
  • 掃海:機雷除去活動に用いる装備。掃海艦に搭載される自走式機雷処分具や関連弾薬が該当し、本来の掃海業務や自己防護に必要な機関砲などの搭載が明確化されています。

これらの例は、殺傷能力を有するものであっても、任務本来の遂行や自己防護に限定される場合に限り移転が認められる点が特徴です。実際の移転事例では、フィリピンへの警戒管制レーダーやTC-90が5類型を活用した代表例となっています。

5類型の背景

5類型の導入は、厳しく複雑な安全保障環境下で、国際共同開発・生産のパートナー国が完成品を第三国へ移転した場合の部品・技術の直接移転を可能とするなどの変更と連動しています。また、侵略を受けた国への非武器装備品移転を一般化する規定も追加されました。

5類型の見直し議論

2025年12月以降、政府・与党は防衛装備移転三原則の運用指針の見直しを進め、5類型の撤廃に向けた調整を行っています。これは、武器輸出を非戦闘目的に限定する制限を緩和し、同盟国・同志国との安全保障協力強化や国内防衛産業の振興を目指すものです。自民党安全保障調査会では、2026年2月19日に幹部会合で党提言の素案を了承し、武器輸出の拡大を検討しています。

見直しのポイント

見直しでは、5類型の撤廃により、殺傷能力のある武器の輸出が可能になる一方で、厳格な審査プロセスを維持する方向です。国家安全保障会議での審議を基本とし、初めての移転国や慎重な検討が必要な案件を対象とします。また、国際共同開発品の第三国移転も容認する調整が進んでいます。

議論の進捗

自民党の小野寺五典安全保障調査会長は、2026年2月19日の会合後、5類型撤廃後の運用について閣議決定を求めない方針を示しました。これにより、来春にも運用指針の緩和が実現する可能性があります。公明党や日本維新の会との協議も含め、平和国家の理念を再確認する議論が求められています。