バルミューダ、2025年純利益15億円赤字へ下方修正:株価は上場来高値の1割以下に

バルミューダの業績予想下方修正:2025年12月期、純利益15億円赤字へ転落

高級家電メーカーとして独自のデザインとテクノロジーで注目を集めてきたバルミューダ株式会社が、2025年11月7日に衝撃的な発表を行いました。同社は2025年12月期の連結業績予想を大幅に下方修正し、当初の黒字見通しから一転して15億円の純損失を計上する見込みとなりました。このニュースは、株価の急落を招き、市場に波紋を広げています。物価高騰や海外事業の停滞が主な要因として挙げられており、消費者の購買意欲低下が家電業界全体に及ぼす影響を象徴する出来事と言えるでしょう。

下方修正の詳細:売上高・利益の大幅減

バルミューダの発表によると、2025年12月期(1月1日~12月31日)の連結業績予想は以下の通り修正されました。当初の計画から売上高は約2割減、利益面では黒字から赤字への転落という厳しい内容です。

項目 当初予想 修正後予想 前年実績
売上高 125億円 98億円(前年比21.4%減) 124.7億円
営業利益 2,000万円(黒字) -9億3,000万円(赤字) 1,200万円(黒字)
純利益 1,000万円(黒字) -15億円(赤字) 6,700万円(黒字)

この修正により、純利益の赤字幅は前期末純資産の約34.5%に相当し、会社の財務基盤に深刻な打撃を与える可能性があります。また、全社的な事業効率改善を目的とした特別損失として5億6,000万円を計上する方針も併せて発表されており、構造改革の必要性を強調しています。

下方修正の主な要因:国内・海外の複合的な逆風と過去の事業失敗の影

バルミューダの業績悪化は、単なる一時的な要因ではなく、多面的な外部環境の変化が重なった結果です。まず、国内市場では物価上昇による消費者の購買意欲低下が顕著です。高価格帯の家電製品を主力とする同社にとって、インフレ圧力は直撃を免れず、流通在庫の増加を招きました。これに対応するため、9月以降、出荷を大幅に抑制したものの、売上減の影響を避けられませんでした。

海外事業面では、さらに厳しい状況が展開しています。韓国では一部製品の出荷時期が2026年にずれ込んだことが響き、米国市場では関税政策の不確実性により価格設定や販路戦略の構築が難航。グローバルな貿易摩擦が、輸出依存度の高い同社の足を引っ張っています。これらの要因が相まって、第3四半期累計(1~9月)の売上高は67億6,600万円(前年同期比22.3%減)、営業損失は8億4,200万円と、赤字幅の拡大を余儀なくされました。

加えて、過去の事業展開ミスが現在の財務体力を削いでいる側面も無視できません。特に、2021年11月に発売された「BALMUDA Phone」(バルミューダフォン)は、同社の野心的なスマホ市場参入作として注目を集めましたが、結果として大失敗に終わりました。この製品は、バルミューダらしいミニマルデザインと独自のUIを売りに、価格10万円超で投入されましたが、スペック面での競争力不足が露呈。Snapdragon 765Gチップを搭載しつつも、カメラ性能の低さ、バッテリー持ちの悪さ、置いた際の不安定さなどがユーザーから酷評され、販売台数は期待を大きく下回りました。発売直後からネガティブなレビューが相次ぎ、2023年5月にはスマホ事業からの完全撤退を発表、5億3,600万円の特別損失を計上する羽目に。創業者・寺尾玄社長は「自分の力不足だった」と振り返っています。この失敗は、開発投資の回収不能とブランドイメージの傷つきを招き、現在の業績悪化の遠因となっていると言えます。

株価の推移:上場来高値から9割超の暴落、投資家信頼の喪失

バルミューダの株価は、上場以来の栄光と苦難を象徴する推移を辿っています。2021年1月26日、上場直後の熱狂で上場来高値の10,610円を記録した同社の株価は、バルミューダフォンの失敗を皮切りに急落を開始。以降、業績低迷や市場環境の悪化が重なり、2025年11月11日現在、770円前後で推移しています。これは上場来高値比で約92.7%の下落率に及び、投資家からの信頼が大きく揺らいでいることを示しています。下方修正発表後、株価は敏感に反応しており、短期的な回復は難航が予想されます。このような株価の低迷は、財務再建のプレッシャーを増大させ、構造改革の成否を左右する要因となっています。

今後の展望と対策:収益構造改革の緊急性

この下方修正を受け、バルミューダは今後、生活家電カテゴリーの収益構造改革を加速させる方針を打ち出しています。具体策として、製品ラインナップの厳選、マーケティング投資の最適化、不採算事業の見直しを挙げ、2026年12月期の黒字転換を目指します。また、新カテゴリーの立ち上げを通じて、デザインとテクノロジーの強みを活かした成長ドライバーの創出に注力する姿勢を示しています。

かつて「BALMUDA The Toaster」などのヒット商品で急成長を遂げたバルミューダですが、コロナ禍後の消費トレンド変化や競争激化の中で、再びの飛躍が求められています。投資家や消費者からの信頼回復が急務であり、市場は同社の次の一手を注視しています。この危機をチャンスに変えることが、持続可能なブランド構築の鍵となるでしょう。