トランプ米大統領、高市早苗首相に台湾問題で中国刺激を控えるよう助言
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2025年11月26日、米トランプ大統領と日本の高市早苗首相との電話協議で、トランプ氏が高市首相に対し台湾問題をめぐり中国政府を刺激しないよう助言したと報じました。この報道は、日米同盟の枠組みの中で米中関係の緊張が高まるなか、大きな注目を集めています。
電話協議の背景とタイミング
この電話協議は、高市首相が11月初旬の国会で「中国による台湾への攻撃が発生した場合、日本が軍事対応を取る可能性がある」と示唆する発言をした数日後に行われました。この発言は中国側を強く刺激し、両国間の緊張を高めていました。WSJによると、協議はトランプ大統領が中国の習近平国家主席と約1時間の電話会談を行った直後に行われ、習氏との会談では台湾問題が議題の半分以上を占めたとされています。
トランプ大統領の具体的な助言内容
トランプ大統領は高市首相に対し、台湾問題に関する発言のトーンを抑えるよう提案しました。WSJはこれを「東京に対し台湾問題のボリュームを下げるよう伝えた」と表現しています。具体的には、北京を挑発しないよう助言し、台湾の主権問題で中国を刺激する行動を控えることを示唆したと報じられています。
高市首相発言の妥当性と外交的配慮の観点
台湾有事における日本の対応は、米国が参戦するという前提がなければ現実的には成立しづらく、また中国が台湾に侵攻するとしてもその理由・形態・タイミングは多岐にわたります。そのため、事前に「軍事対応する」と一義的に明言することは、外交的・戦略的な柔軟性を失わせるリスクがあります。国際情勢の専門家の間では、「その時の具体的な状況と国際法、日米安保条約の運用などを総合的に判断する」という留保付きの表現が、責任ある政府の標準的な回答と広く認識されています。
なお、トランプ大統領自身もこれまで台湾防衛への関与について「状況次第」と繰り返し、明確なコミットメントを避けてきました。世界最強の軍事力を有するアメリカの指導者でさえ明言を控えていることを考えれば、日本が単独で踏み込んだ発言を行うことの難しさとリスクが改めて浮き彫りになります。
日本側の反応と今後の影響
日本政府は現時点でこの報道に対する公式なコメントを控えています。WSJによれば、トランプ氏の助言は高市首相の発言を撤回させるような強い圧力ではなく、あくまで「刺激を避けるよう」という穏やかなものでした。高市首相は就任以来、中国に対して強硬な姿勢を鮮明にしていますが、今回の報道は日米同盟の微妙なバランスと、台湾問題をめぐる複雑な国際情勢を改めて示しています。今後、このような外交的なやり取りが東アジアの情勢にどのような影響を与えるのか、引き続き注目されます。
