・味の素の冷凍宅食サービスがステマ疑い
・ステルスマーケティング（ステマ）の概要と問題点
味の素の冷凍宅食サービス「あえて、」におけるステマ疑いのニュース概要
2025年9月19日、消費者庁は大手食品メーカー味の素（東京都中央区）とイングリウッド（東京都渋谷区）に対し、冷凍宅配食品サービス「あえて、」を巡るステルスマーケティング（ステマ）の疑いについて、両社が提出した改善計画を認定しました。このニュースは、景品表示法違反の可能性が指摘されたもので、SNS投稿を無償提供の条件に依頼し、それを自社サイトに「PR」明記なしで転載した行為が問題視されています。
事件の背景と詳細
味の素とイングリウッドは共同で、冷凍宅配弁当「あえて、」を提供するサービスを展開しています。このサービスでは、2023年5月から8月頃にかけて、第三者に対して商品を無償提供する代わりにInstagramなどのSNSで宣伝投稿を依頼していました。これらの投稿内容を、自社販売サイトや関連ページに「個人の感想」として転載したところ、広告であることを明示していなかったため、ステマの疑いが浮上しました。
消費者庁の調査によると、転載期間は2023年10月から2024年8月までで、景品表示法で禁止される不当表示に該当する可能性がありました。ステマは、2023年10月から景品表示法の「不当表示」に追加された規制項目であり、これに抵触する疑いが指摘された形です。
消費者庁の対応と改善計画の内容
消費者庁は、両社に対し行政処分の「確約手続き」を適用。違反行為を正式に認定せず、自主的な是正を促す形で改善計画を認定しました。味の素の計画では、違反疑いの行為を消費者に周知徹底し、再発防止策を講じる内容が盛り込まれています。一方、イングリウッドは表示管理体制の構築、従業員教育の強化に加え、商品購入者に対する金額一部返金も含めた計画を提出しました。
この手続きにより、両社は措置命令などの厳しい処分を免れましたが、消費者庁は今後もステマ監視を強化する方針を示しています。
味の素とイングリウッドの反応
味の素は取材に対し、「適切な情報を提供できておらず、お客様へ心よりおわび申し上げます。真摯に受け止め、再発防止策の徹底に努めてまいります」とコメント。イングリウッドも「表示管理体制の構築と従業員の教育に努める」と述べ、両社とも問題を重く受け止めています。
この事件は、ステマ規制強化後の事例として注目されており、企業側の広告手法の見直しを促すものとなりました。
ステマ規制の文脈と今後の影響
ステマは、消費者が公平な口コミと誤認する可能性があるため、2023年10月の法改正で景品表示法違反に位置づけられました。これまでに消費者庁が認定した行政処分は5件、確約手続きは1件と相次いでおり、味の素のケースは企業コンプライアンスの重要性を再認識させるものとなっています。
今後、SNSマーケティングの透明性向上が業界全体の課題となり、消費者保護の観点からさらなる監視が予想されます。
ステルスマーケティング（ステマ）とは？その概要と問題点
ステルスマーケティング（以下、ステマ）は、広告や宣伝であることを消費者に明示せず、あたかも中立的な意見や一般消費者の感想であるかのように装って商品やサービスを宣伝する手法です。SNSやブログ、口コミサイトなどを通じて行われることが多く、消費者の購買行動に影響を与える一方で、透明性不足による誤認を招くため、近年規制の対象となっています。特に日本では、2023年10月から景品表示法の「不当表示」にステマが明確に含まれるようになり、違反行為への監視が強化されています。
ステマの定義と具体例
ステマは、企業や事業者が第三者（インフルエンサー、ブロガー、一般消費者など）に報酬や商品の無償提供を行い、宣伝投稿を依頼する一方で、その投稿が広告であることを隠す行為を指します。例えば、以下のようなケースがステマに該当します。
- 企業がインフルエンサーに商品を無料提供し、SNSで「個人的な感想」として好意的な投稿を依頼するが、広告であることを明示しない。
- 企業が自社サイトや広告に、報酬を支払った第三者の口コミを「一般消費者の声」として転載する。
- 従業員や関係者が匿名で自社商品を称賛するレビューを投稿し、消費者に中立的な意見と誤認させる。
これらの行為は、消費者が広告と認識せず、信頼性の高い情報だと誤解するリスクがあるため、問題視されています。
日本におけるステマの法規制
日本では、ステマが消費者の公正な判断を妨げるとして、2023年10月1日から景品表示法（不当景品類及び不当表示防止法）に基づく規制対象となりました。具体的には、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」として、ステマが不当表示に分類されています。この改正により、広告であることを明示しない宣伝行為は違法となり、企業には明確な「PR」「広告」表記が求められます。
消費者庁は、違反が確認された場合、措置命令や行政指導を行うほか、軽微なケースでは「確約手続き」を適用し、企業の自主的な改善を促す方針を取っています。2023年以降、ステマに関する行政処分は5件、確約手続きは1件（2025年9月時点）報告されており、監視体制の強化が顕著です。
ステマが問題となる理由
ステマが問題視される主な理由は以下の通りです。
- 消費者への誤認：広告であることを隠すことで、消費者が中立的な意見と誤解し、誤った購買判断を下す可能性がある。
- 市場の公平性阻害：透明性の低い宣伝は、誠実な競争を損ない、他の事業者に不利益をもたらす。
- 信頼性の低下：ステマが発覚すると、企業やインフルエンサーの信頼が失われ、ブランドイメージが損なわれる。
特にSNSの普及により、インフルエンサーや一般消費者の投稿が購買に大きな影響を与える現代では、ステマの影響力が問題となっています。
企業と消費者の対応策
企業側の対策：企業はステマを防ぐため、以下の取り組みが求められます。
- 広告であることを明確に表示（「PR」「広告」「提供」などの明示）。
- インフルエンサーや協力者との契約で、広告表記のルールを徹底。
- 社内教育やコンプライアンス体制の強化。
消費者側の対策：消費者もステマを見抜くリテラシーが必要です。以下の点に注意することで、ステマに惑わされにくい判断が可能です。
- 投稿に「PR」や「広告」の表記があるか確認する。
- 過剰に好意的な口コミや、複数の投稿が類似している場合、広告の可能性を疑う。
- 信頼できる情報源や公式サイトで商品情報を確認する。
ステマ規制の今後の展望
ステマ規制は、SNSマーケティングが主流となる中、消費者保護と企業の透明性確保のためにますます重要になっています。消費者庁は今後、AIやデータ分析を活用した監視強化を計画しており、違反事例の公表を通じて企業への抑止力を高める方針です。一方で、企業側もガイドラインの遵守や社内体制の整備を進め、消費者との信頼関係を維持することが求められます。ステマ問題は、デジタル時代における広告倫理の新たな課題として、今後も注目されるでしょう。
