斉藤慎二被告の初公判概要
2026年3月13日、東京地裁(伊藤ゆう子裁判長)で、お笑いグループ「ジャングルポケット」の元メンバーである斉藤慎二被告(43)の初公判が開かれました。斉藤被告は、2024年7月30日に東京都新宿区内のロケバス内で起きた事件に関し、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪で起訴されています。公判では、斉藤被告が黒のスーツに紺のネクタイ姿で出廷し、職業を「芸人です」と述べた上で、起訴内容を否認しました。
公判の様子と傍聴状況
初公判は約1時間にわたり、冒頭陳述と証人尋問が行われました。斉藤被告は終始姿勢を崩さず、発言者に視線を向け続けました。傍聴席は20席に対し、289人の希望者が集まり、倍率は14.5倍となりました。この高い注目度は、事件の社会的関心を示しています。
事件の詳細
起訴状によると、斉藤被告はロケバス内で初対面の20代女性に対し、性的暴行を加えたとされています。具体的な行為には、キス、胸を触る、口腔性交が含まれます。事件発生時はテレビ番組の撮影合間で、車内は密室状態でした。
検察側の主張
検察側は、斉藤被告が女性に「本当かわいいね」「肌きれいだね」「彼氏いるの?」などと声をかけ、近づいたと指摘しています。女性は「やめてください」と拒否し、両手で押すなどの抵抗を示したにもかかわらず、行為が継続されたと主張しています。女性は事件直後にLINEで母や知人に相談し、心療内科を受診した後、5日後に警察に被害を申告しました。これらの記録を証拠として、不同意の状況を立証する方針です。また、斉藤被告の芸能人としての影響力が、女性の立場を不利にした点も強調されています。
弁護側の主張
弁護側は、行為自体を認めた上で、口腔性交時に女性の頭を押さえつけるなどの強制はなかったと反論しています。会話の流れで親しい雰囲気になり、女性から「うれしいです」など好意的な言葉があったため、同意があると認識したと説明しています。犯罪の故意はなく、無罪を主張しています。被害者への謝罪申し入れと示談交渉を行っていることも明らかにしました。
罪状認否の詳細
裁判長から起訴内容の理解を問われた斉藤被告は「はい」と答え、罪状認否では「私の行為に同意してくれていると思っていました」と述べ、無罪を主張しました。この主張は、同意の認識をめぐる最大の争点となっています。
今後の裁判スケジュール
次回公判は2026年3月17日を予定しており、被害者証言や被告人質問が進められる見込みです。双方の主張が対立する中、証拠の検証が焦点となります。
類似の不同意性交等罪の判例
不同意性交等罪は2023年7月施行の改正刑法により導入されたため、判例はまだ蓄積途上ですが、立場利用や密室状況、同意誤認が争点となった類似事例が報告されています。
2026年1月、茨城県古河市の自称自営業の男(39)が、自身が代表を務めていた芸能事務所に所属していた30代元タレント女性に対し、集合住宅などで不同意性交等を行った疑いで逮捕されました。男は「事実はあるが無理やりではない」と容疑を否認しています。女性は事件後警察に相談し、立場を利用した行為とされました。
また、未成年者に対する不同意性交等では、長崎地裁令和6年5月22日判決で、5歳以上年長者による不同意性交等罪が適用され、懲役3年執行猶予5年の判決が出た事例があります。被告の立場や年齢差が考慮されました。
京都地裁令和7年4月15日判決では、20歳被告人がSNSで知り合った13歳被害者と性交した事案で、不同意性交等罪が成立し、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)となりました。改正後初の執行猶予付き判決として注目され、被害者を性的対象として扱った点が認定されました。
東京高裁令和6年10月15日判決では、13歳被害者との不同意性交等で一審懲役4年実刑を維持しました。被告側は合意主張や量刑不当を訴えましたが退けられています。
これらの事例では、立場・関係性の利用、年齢差、密室・初対面状況、被害者の即時相談記録などが不同意の認定に重視されており、単なる「同意誤認」の主張だけでは覆りにくい傾向が見られます。旧法時代の芸能人関連事例(例: 新井浩文被告の強制性交罪実刑判決)も参考にされつつ、改正法下では「同意しない意思を形成・表明・全うしにくい状態」が鍵となっています。
争点
この裁判の最大の争点は、改正不同意性交等罪の適用における「同意の有無」ではなく、「被害者が同意しない意思を形成・表明・全うしにくい状況だったかどうか」です。簡単に言うと、被害女性が「いやです」と明確に拒否できない状況に追い込まれていたかが鍵となります。
検察側は、斉藤被告の芸能人としての影響力や立場を利用し、女性が「逆らえばSNS発信などに不利益が生じるかもしれない」と憂慮した結果、抵抗できなかったと主張しています。また、密室のロケバス内という環境、女性の明確な拒否(「やめてください」との言葉や両手で押す抵抗)にもかかわらず行為が継続された点を強調し、不同意の状況を立証する方針です。
一方、弁護側は行為自体を一部認めつつ、会話の流れで親しい雰囲気になり、女性から「うれしいです」など好意的な言葉があったため、「同意があると認識した」と説明しています。犯罪の故意はなく、無罪を主張しています。改正法下では「同意があったか」ではなく「同意しないと言えない状況だったか」が重視されるため、被告の「同意誤認」が合理的だったかが厳しく検証される見込みです。
今後の公判では、ドライブレコーダー映像、LINE相談記録、心療内科受診記録、証人尋問などが重要な証拠となり、被害者と被告の言い分の信頼性および周辺証拠の補強が焦点となります。
